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道楽草  作者: 十三岡繁
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猿山

 市の動物園が無料開放されていたので、久々に行ってみました。子供の頃は、それほど動物園というものに興味はなかったんですが、今行くと本当に面白いです。いろいいろな知識や経験を、蓄積してきたうえで見るから面白いんでしょうね。世界の気候や地理、環境的な背景と進化の関係なんかもかなり妄想できます。虎やライオンも大きい猫だと考えられますし、進化した恐竜は空を飛べるようになったのに、あえてその能力は封印して海を泳ぐという選択をしたペンギンは、それが成功してかなりの地域にその分布を広げています。


 そんな中でも、特に今回色々と考えさせれらたのは猿山です。大体これはどこの動物園にもあると思うんですが、社会生活を見せる動物というのは、昆虫なら蟻とか蜂もいますし、哺乳類ならイルカなんかもそうですが、地上生活で動物園で見られるのは、猿だけなんじゃないでしょうか? 多くの頭数の猿がヒエラルキーを形成して、小さな社会を形成して生活しています。体が大きくて強そうなのが1匹目立っていましたが、あれがきっとボス猿なんでしょう。なんでも自分の思い通りで、この世の春なんでしょうね。しかし中には毛が抜けて、何だったら怪我をして血が出ているようなオスらしき個体もいました。きっと子猿を除いて、ヒエラルキーの最下層にいるのでしょう。仲のいい友達もいる感じではありません。


 これが山の中であれば、死を覚悟したうえで群れから逃亡するという選択肢も取れるでしょう。しかしそこは猿山です。逃げ出すことはできません。そうして多分猿には自死を選ぶという知恵も無いと思います。いつか死ぬその時まで、地獄で生き続けなければなりません。


 自分がもしその立場になったらと想像すると、ぞっとしてしまいました。檻に囲まれていても、単独で飼育されている動物はまだましです。いいえ、猿はなまじ知能が高いだけに、それがまた苦痛を増幅させているのかなと感じます。


 しかしそれは人間社会の縮図のようにも見えます。人間であっても死を覚悟すれば、森の中に潜んで生きる事は可能かもしれませんが、そんな選択をする人はいないでしょう。この閉塞感に包まれた社会という枠の中で、ヒエラルキーの最下層まで落ちたとしても、死ぬまで生きなければなりません。但し人間には、逃げられなくなったときは自死を選ぶという知恵と力は備わっています。


 私は自殺肯定論者ではありませんが、確かに人間であるがゆえに神から与えられた最終手段として、自殺は存在しているのかもしれいないなと猿山を見て思いました。

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