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道楽草  作者: 十三岡繁
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解像度

 テレビや液晶画面には解像度という物が存在する。特定の色を持つ光源で画像を表示するので、それは有限の数値を持つ。しかし実際の万物にはそんなものは存在しない。いや、実際には細分化して行けば分子や原子という所にいきつくので、そこを解像度という事もできるかもしれない。しかしそれは我々には感知できるレベルではないので、はっきり言って現実の生活にはなんら影響を及ぼさない。


 というか人間が視認できる解像度にも限界がある。最近流行りの4Kという奴は、理屈では従来のハイビジョンと、画面に近づかない限りは見分けがつかないという人もいる。実際に見た人は違うという人も多くて不思議な話ではある。その話はひとまず置いておいて、やはり人間の視神経もセンサーが感知したものを電気信号に変換しているので、限界の解像度というものは存在する。


 そこでひとつ疑問なのは、夢の解像度だ。明晰夢と呼ばれるような、自分でそれが夢だと意識している場合を除き、夢の中では自分は現実世界の中にいると錯覚している。その時に見えているものの解像度というのは、現実世界で体験しているそれと同等なのだろうか? 夢の中で見る風景は、起きている時に実体験したものの記憶を元に構成されているとすれば、その解像度も記憶に依存するのだろうか?


 現実に見えているものを、情報化する解像度には限度があると書いたが、まずは近づいて更に細かいところまで観察したり、光学的に拡大したり、更には電子顕微鏡などで見れば、情報としてインプットできる解像度はどんどん上がって行く。しかしその実体験が伴ってなければ、夢の中でそれと同じ事をしても、ディティールは決して見えてこないだろう。


 なぜそんな事を考えるかと言えば、シミュレーション仮説という物のせいだ。もしこの世界がバーチャルだとすると、一体どのレベルまで細かい部分がシミュレーションなんだろうか? 電子顕微鏡で見るくらいのレベルまでを事細かに計算していたら、物凄い計算リソースが必要になる。いくら科学が進んだとしてもそんな事は不可能にすら感じられる。しかし人間が五感から受け取れるレベルの解像度であれば、実写と見分けがつかない最近のAI生成動画を見ていると、案外実現は近いのかもしれないなとも感じる。


 人間は宇宙の一部なのかもしれないが、その全体を感じ取れるかというとなかなか難しそうだ。物凄い高名な宗教家であれば、その境地に達する人がいるかもしれないが、少なくとも自分には無理そうだ。だから世界を知って繋がる事は自分の五感を通してしかできない。そうしてそこには解像度がある。情報は有限なのだ。世界はもしかしたら無限に近いのかもしれないが、自分が関われる部分は極めて有限なのだ。それは自分にとっての世界が有限だという事に等しい。


 創作という物はおもしろい。無かったところに存在を与えるのだ。絵空事とも言われるが、絵空事は脳内で描かれた時にそれが情報として存在を得てしまう。有限であるはずの世界の情報に、人間の意思で付け加える事が出来るのだ。これは言い換えれば世界を作って行くという行為にも等しい。そうしてそその情報は他者に伝える事ができれば、記録として残す事もできる。


 何かここに世界の秘密が隠されている様な予感がしてならない。しかし多分自分が死という物を迎える前にその秘密を知る事は無いだろう。ただ一瞬だけ死の瞬間に少しだけ見えるような気もしていて、そこは結構楽しみだったりする。


※でも自殺は駄目ですよ。どうせいつかは死ぬのだから、そこまではこの世界の仕組みの中で考えて行きましょう。

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