オノマトペ
自動車産業と言えば現代日本の基幹産業である。どうしてそれが世界を席巻する事が出来たのか? 自動車という製品には数多くの部品が必要で、それを作るには様々な技術が洗練されて高度に発達している必要がある。その集大成として自動車が完成している。つまり基本的な技術の集積があってこそなのだ。
現在漫画という文化も日本のものが世界を席巻していると思う。そこには一体どういった要因があるのか? 今までも書いてきたのは日本人の変態性だが、もっと分かり易い所ではオノマトペがあると思う。オノマトペとは擬音の事である。状態や様子を言葉で表す……簡単そうな話だが世界中でこれだけオノマトペに長けた言葉は日本語以外にないだろう。一説には日本語には動詞の種類が少ないので、それを補完するために副詞的に発達してきたとも言われている。
例えば痛いという言葉を装飾するのに、キリキリ痛いとかシクシク痛むとかそんな事を言ったりするが、これは他の国の言語にはとても訳しにくいと思う。お腹がパンパンというのも、『食べ過ぎて胃が限界近くまで膨らんで腹の皮が張っている』なら訳せると思うが、それがパンパンの一言だけで表現されてしまう。
そうしてこの表現方法は漫画表現ととても相性がいい。アメコミなどで悪者をヒーローが殴る時に『POW!』とか『BANG!』とか書かれているかもしれないが、字面的どうだろう? 何かこう痛みというか実感みたいなものが伝わっては来ない様な気がする。同じオトマトぺとは言っても、音をアルファベット文字に直しただけという感じがする。キリキリ腹が痛い時に、腹でキリキリと音がしているわけではない。しかし漫画の中で登場人物が腹をおさえて、『キリキリ』というオトマトぺが表記されていれば、なるほどこのキャラは腹がキリキリと痛んでいるのだなと、何かこう同調出来てしまう。日本人の恐ろしいのはこの共感力だという人もいるが、江戸時代でもその人口の85%が農民だったという筋金入りの農耕民族なので、村社会で長い時間をかけて熟成させてきた感覚なのだろう。
とにかくそれらバックボーンがあっての漫画文化なのではないかと思う。だからいい悪いは別にしていくら真似しようとも、多分日本以外の国は追いつけないような気がするのだ。




