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道楽草  作者: 十三岡繁
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神代文字

 現在主流とされる学説においては、大陸から文字が伝来するまでは日本には文字が存在していなかったという事になっている。ただ同時に日本において縄文時代には、全国を網羅する流通網や、かなり高度な社会システムや文化が存在していたことが分かってきている。


 それなりに複雑な社会を維持するにあたって、全く文字が存在しなかったという事があり得るのだろうか? 江戸時代の頃から、大陸から文字が入ってくる前に神代文字と呼ばれるものがあったという説を唱える人はいたようだが、現在のところそれは正史としては否定されている。


 石器時代から始まって、土器も色々と遺跡から発掘されてきた。もし神代文字なるものが存在するならば、どこからか何らかの形で出土されてもいいような気がする。しかし今のところそれらしいものは出てきていない。但し気が付いていないという可能性はあると思う。個人的には縄文時代の土器の縄模様はかなり怪しいと思う。過去に同じことを考えて調べた人もいたようだが、どうも今のところ体系化するには至っていないようだ。


 何か大きなものを見落としているような気がしてならない。現代社会に生きている我々とすれば、文字といもうのは紙に書く記号のようなものを想像してしまうが、例えば栗の形をした塊を三つ作れば。それは三個の栗という情報を持つことになる。それは文字の役割と全く同じなのではないのだろうか? 


 埴輪はかなり後の時代の物だが、土偶は違う。文字に変わるものがあったならそこにも痕跡が残されているような気もするが、今でも例えば何かしらの彫刻を作って文章を刻むなんて事はしないように思う。世界の古代文明では石や粘土に刻まれた文字が出てきているが、それを作るのはかなり面倒くさいように思う。単に今まで残って来れたのがそういったもので、他にも何か現代で言う所の紙に代わる素材があったのではないだろうか?


 真っ先に思いつくのが動物の皮だ。実際に中世のヨーロッパには羊皮紙というものもあった。先史時代にそこまで上等な加工がされたとは想像しにくいが、皮をなめす為の石器は見つかっているので、そこに何かしらの文字なり記号なりを記したのではないだろうか?


 何を使って書くのか? 鋭利な石などで傷をつけてもすぐに消えてしまうだろう。ありそうなのは炭あたりかなと思う。あとはタトゥーはあったようなので、何かしらの鉱物を使って、付けた傷に刷り込んだかもしれない。どの道皮ベースでは保存は長くはできそうにない。 


 皮を加工するための道具である石や焼きを入れた土器は残っても、皮が数千年の時間を超えて残る事はないだろう。であればそれを知ることはできない。あったかどうかも分からない。なぜそんな事を妄想するかと言えば、石器時代や縄文時代の人々が何を思って生きていたのかを知りたいからだ。


 文字は確かにタイムマシンだなと思う。


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