陥没事故
埼玉の道路で大規模な陥没事故が発生した。地面に突如として開いた大穴に驚いた人も多いと思う。かくいう私も驚いた。原因は地中の下水道管が劣化して、地下の土砂を流してしまったからだと見られている。
下水道管に使われている鉄筋コンクリート製のヒューム管の寿命は、一般的には50年と言われている。ヒューム管というのは聞き慣れない言葉かもしれないが、なじみ深いところで言えば、ドラえもんでのび太たちが遊ぶ空き地に置いてあった土管だ。あれは実は鉄筋コンクリート製だ。鉄筋コンクリートの問題点については以前から書いてきたところだが、ここでも全く同じ問題が起きている。
コンクリートは圧縮する方の力に強い。逆に鉄筋は引き延ばす方の力に強い。そこでこの二種類の材料の組み合わせは構造的にものすごく強くなる。そうして更にコンクリートと鉄は熱膨張率がほぼ同じなので、鉄筋コンクリートは奇跡の組み合わせと言われている。コンクリートは最初の頃はアルカリ性で、これが鉄筋が錆びるのを防いでくれる。しかし残念ながらそのアルカリ性は時間と共に中性化してしまう。すると水分が入り込んだ場合鉄筋は錆びて膨張し、コンクリートを破壊してしまうのだ。だから鉄筋コンクリートの構造物は耐用年数を考えて使用するべきなのだ。
地中に埋設された下水道管の寿命はもちろん心配なのだが、都市部の高速道路や鉄道の高架など、街を歩けばこれらはどう更新するつもりなのだろうかと、心配になる構造物を散見する。そうして最近のタワマンブームだ。技術が向上して最近はタワマンも完全に鉄筋コンクリートだけで作れる様になったし、多くはそのように作られている。流石に寿命が50年とは言わないが、1000年もつという事も無いだろう。では100年ぐらいなら大丈夫なんだろうか? もちろん定期的に建て替えていけばいいとは思うが、果たしてそんな事が可能だろうか? 昔ながらの10階ちょっとのマンションでも、建て替えとなると住民間の思惑が違ってなかなかに揉める。平均300戸以上であるタワマンの建て替えなんて、本当にできるのだろうか? 将来少子化で空き家だらけになったタワマンは、建て替えどころか解体もままならないような気がする。
以前書いた140字小説を転載しておく。
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百年前は木造の古くなった空家が問題になった。今はコンクリート造の高層マンションで同じ問題が起きている。
高齢化と少子化、それに伴う人口減で、今は一戸も住んでいない高層マンションが大量に放置されている。解体できずに毎日何本かが倒れていく。政府は下敷きになった死者数を毎日発表している。
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