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道楽草  作者: 十三岡繁
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やめどき

 何事も興味をもって始める事は比較的容易だ。しかし深く入り込んでしまうと今度はやめ時というものが難しい。趣味などでただただ好きだとかであれば、できなくなるまで続ければいい。しかし仕事となるとそうもいかない。


 長く続けていくうちにプロフェッショナルとしての、意地や誇りが生じてしまう。自分自身で納得できるパフォーマンスが維持できなくなった時、人は引退を考えるだろう。しかしそれができている今日と比較して、ほんの少しだけ加齢などによって翌日にパフォーマンスが低下したとして、その差はあまりにも小さすぎる。しかしそれが何年も続けば蓄積された差は相当なものになって行く。いつかはやめるときが来るとは分かっていても、それは明日ではないといつも思ってしまう。しかしそれがずっと続いてしまうのだ。誰かが引導を渡してくれるのであればあきらめもつくが、自分でその時を決める立場の場合は本当に難しい判断だと思う。


 名前を言わずとも誰もが知っているあのアスリートには脱帽の想いである。自分が考えるベストのパフォーマンスができない事は、自分が一番よく分かっていると思う。それでも自分の立ち位置を自覚したうえで現役を続けている。少しでも体力を維持しようとして実行している努力は相当な物だろう。しかし見ていて痛々しいとも正直思ってしまう。


 芸能の世界を見ても難しいなと思う。若い頃にデビューしたグループなどで、人数が多いところはメンバーを変えながら存続したりしているが、数人のグループでメンバーの交代がどうにも難しそうな人たちもいる。十代でデビューして、二十代もまぁ何とかやっていくとして、人気が落ちれば解散という流れもあるが、それなりに人気を保ち続けてしまった場合、三十代となりやがては四十代となって行く。需要がそれなりにあれば、まわりからやめてくれという声も無いだろう。しかし徐々に人気が下がって、本当に最後かすっかすっになってからやめるのでは悲しすぎる。やめ時が本当に難しいと思う。


 自分の仕事は建築設計であるが、技術者であるとともに職人だと思っている。加齢とともに経験は蓄積されていく一方で、パフォーマンスが落ちていると感じる部分も多々出て来た。やめどきは本当に難しい。

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