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道楽草  作者: 十三岡繁
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アクセラレーション

 人間は自分の持つ能力を、補ったり補強する機械を作り出してきた。例えば移動する能力を強化するために馬車から始まって自転車を作り、自動車を作り、果ては飛行機を作り出した。聞いたり話したりというコミニュケーションの補強に、電話を作り通信機を作り、今はスマホになっている。更に補助するものとして人工衛星までを打ちあげて、南海の孤島と北極海を航行する船の上でテレビ電話でコミニュケーションをとったりもできる。


 今一番の流行りは脳機能の補強だろう。コンピューター技術と言ってもいい。これがなかなかに汎用性が高かったと思う。AI等は思考の話であるが、他にも脳が受け持っていた体の制御能力をトレースする事で、ロボット技術は飛躍的に発達した。人体の延長ではないがドローンの制御なども同様である。


 能力を補強するのだから、そこから生まれるものはクオリティが高かったり、量が多くなったり速度が上がったり、従来の物よりも上の物になっていく。それはクリエイティブの現場にも広がっていると感じる。


 コンピューターは、ゼロから何かを生み出すのは苦手という印象だが、現在も人間を補助する能力としては驚異的なレベルに達している。例えば絵を描こうと思って従来の手書きで書くのと比べると、コンピューターを補助的に使う事でクオリティと描画速度が驚異的に向上する。描画速度が上がれば作品数も増やすことができる。作品数が増えれば、より作者の理想とする作品に近づくチャンスも増える。


 移動や力仕事等の物理的な能力ではなく、行為と呼ぶべきものも機械…この場合はコンピューターによって加速していると感じるのである。それは絵に留まらず、音楽や小説…元来人間が得意で機械は苦手と思われた分野に、人間とタッグを組むことで大きな変革をもたらしていると思う。


 今や音楽でもアニメでも、コンピューターの力を借りて個人が制作して世に発表する事が出来る。作品数は日に日に膨大なものになるし、そのクオリティもかなりハイレベルになっていると思う。もともとそれを造り出そうという人間のリビドーが無ければ、生まれてこないだろうというのはそうだと思うが、そう言う素養が簡単に表に出てきて形にしていけるというのは、何か素晴らしい事になっていく予感しかしない。


 文化がアクセラレーション(加速)している。

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