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道楽草  作者: 十三岡繁
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行く末

 人口の少ない地方で、すれ違う車もまばらな高速道路…登り二車線で下り二車線、立派なものである。ここは一年で一番混む年末年始やお盆の時期ですら、渋滞しているのを見たことが無い。身内の葬儀出席の為、その高速道路を走っていると右手に大きな工事現場が見えた。のどかな田園風景の中に現れたその大規模な現場は、まるで宇宙船を作っている工場のように巨大だった。ドーム状の屋根が作られていたがまるでSFだ。


 後に聞いた話では、今度ここで国民スポーツ大会…昔で言う所の国体が開かれるらしい。多分大きな補助金が落ちてきたのだろう。この大規模工事で人口の少なそうなこの地域は一時的には潤うだろう。しかしその施設を大会の後うまく管理運営して行けるのだろうか?


 建物というものは建てたらそれで終わりではない。維持管理をしていかなければならない。どう考えても町の規模に見合ったものには見えない。一体この国はいつまでこの社会構造を続けるつもりなのだろうか?


 異次元のなにがしという言葉をどこかで聞いた気もするが、出生数の減少は歯止めがかからない。2023年の出生数は72万6千人という予測数値が出ている。2022年に80万人割れが騒がれたが、それはもう昔の話になってしまった。しかしこのかなり衝撃的な事態はマスコミを始め今の所あまり話題になっていない。


 人口が増える事は経済活動的には有利だというのは常識だ。ただ経済至上主義というのも今時はやらないので、人口が減少すること自体はそんなに悪い事だとは思っていない。しかしそれは社会が柔軟に対応して変化していける場合に限る。人口が増えて行く局面と同じような土建国家を続けていたら最後どうなるのかは見えている。


 そんな事は経済界のお偉方も政治家の面々も、有識者やマスコミにしても誰もが分かっているだろう。いや、まっとうな社会人なら誰もが分かっている事だ。しかし変わらないし変えられない。改善して行けるシステムが存在していないし、誰も作ろうとしない。道楽者な自分でさえもできる限り働きかけて来たつもりであるが、今の所どうにも響かない。


 きっと行きつくところまで行かないとダメなのだろう。幸か不幸か最も悲惨であろうその破綻点に立ち会うには年齢的には無理そうだが、後の世代には本当に申し訳ないと思っている。行きついたその先でまた復活できればいいのだが、それもまた見届けることはできない。

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