ジンガイさま
訳のわからない文章になっています。気持ち悪くなったら直ぐにプラウザバックして下さい。
文章の訂正を具体的にして教えて頂ける貴重な方の意見をお待ちしております。
ただし、主人公やサブ主人公の性別や名前が出ていないのはわざとです。そのため、その二つについては訂正するつもりはありません。ご了承ください。
「君はジンガイさまがわかるかい?」
真っ暗な場所で、人影が自分の方を見て尋ねてきた。尋ねられて、突然覚醒した感覚が自分の中でした。
状況がわからずに左右を見るとトンネルの中に人が行き来しているのわかるだけで、行き交う人たちの表情を確認出来るほどの明るさはどこにも無かった。
(いつの間に、ここはどこなんだろう)
「ねえ」
立ち止まることができずに、人の波に流されるように歩いている。突然の状況に頭がついていけずに、声が聞こえる方を見た。目を凝らしてみたが、光がないせいでといつもつけている筈のメガネがないせいで声をかけた人物の顔がボヤッとしか見えない。
「何?」
声をかけてきた人がニヤッと笑った気配がした。他の人たちの気配が無なのに、そこだけが歪んだような気がしたのだ。心が怯むのがわかったが、不気味な存在を見つづけると顔を背けられた。
「ジンガイさまってわかるかい?」
背けられた顔の方向に視線を向かわせると、ずっと先に光が漏れているのが見えた。
向かっている方向も光の方向だった。
どこに向かっているのか分からなかったが、周りの人も隣の不気味な人物も同じ方に向かって歩いている。
「知らない」
そっか〜っと小さくつぶやく声がきこると、しばらく静かに暗闇を歩いた。
周りに人がいるからなのか、恐怖はあまり感じずに足を進められる。黙ったまま前を向いていた隣人が、また顔をこちらに向けた気配がした。
「まず字はね、似てるの似と人で似外さま。似外さまは双子以上で生まれる人間なんだけど」
足元に光が差してきた。入り口の周りがレンガでで来ていることが分かった。周りの人たちの顔が彫りが深く、黒髪や赤毛、金髪の背の高い人たちだ。周りの姿を理解した瞬間に周囲の声が聞こえたが、さまざまな言語が混じり合って何を喋っているのか分からなかった。
隣にいた人物が前に出てきたが、逆行のせいか顔がわからない。
「実際に見た方が早いよね。ほら、これが似外さまと言われる像だよ」
立ち止まって手を差し伸ばされた先を見ると、巨大な像があった。目をしかめると、横向きに寝そべった女性だとわかるが、それが何?という感想しか持たなかった。しかし、周囲の人々も立ち止まっては女の像をみんな見て価値のある銅像のように見入っている。
「像をよく見て。この似外さまの像は三つ子なんだけど‥。そういえば、これが君には必要だったね」
そう言って渡されたのは、いつも使っている眼鏡だった。
場所もわからない、見知らぬ人間が差し出したものに背筋が凍った。
(どうして、お前が持ってるんだよ)
震える手でメガネを奪い取り、手に馴染んだ黒縁のフレームを指でなぞった。左側にある小さい傷をたしかめる。
(傷がある)
「ねえ、そんなことより早く見てくれない」
目の前で怒気を発している人物の顔が見たくなくて、メガネをかけたくない。と同時に、これ以上の怒りを買いたくない。そのため、下を向いてメガネをかけた。メガネをかけてすぐに目をつぶる。息を深く吸って、吐きながら先ほど見た女の像の方を向いて目を開けた。
目の前にあったのは、女の裸体の像だった。肘をついて横向きで寝そべているが、女の胸の辺りと腰のところには顔の崩れた赤ん坊がいた。
「‥え」
2人の赤ん坊は、確かに目や口などのパーツがあったが溶けたように崩れているのが遠くでも判った。腰にいる子は頭の部分が凹んでいる。逆に女の顔立ちははっきりしていて、軽く波打った長い髪がみずみずしい肢体をおおっている。
女の口元はわずかに微笑みながら、視線は胸元の赤ん坊に注がれている。
(これが、ジンガイさま?)
「ふんっ。まあ、彼女は美しさだけで選ばれただけのハリボテだけどね。似外さまの特徴は捉えているよ」
嘲るような冷たい声で紡がれた言葉に思わず、周囲を見渡した。
ジンガイさまを見ている人々は日本語が分からないのか、熱心にジンガイさまだけを見てこちらには気にした様子はなかった。ホッと息を吐き、目に居る人物を見た。
(平凡だ)
身長は自分と変わらないくらいで、黒髪に黒目の何の特徴もない人間だった。太ってもないし痩せてもいない。
口を歪ませてこちらを見ながら言葉を続けてきた。
「似外さまは、本人以外の兄弟は奇形で生まれるんだ。
そして、本人にはコントロールできない力を持っている。その力故に、周囲から畏敬の念で崇められるか、追放される存在だよ」
この女はその美貌でジンガイさまを騙っただけの存在だと言い捨てた。
一体自分は何を言われているのか、どうしてこの像をみせられて説明されているのか分からないのに、微笑んでいる女性を見ていると懐かしい感覚があった。反対に腹の底にドロドロとした不快感を目の前の人物に抱いてしまう。
後ろに後ずさって、目の前の人物から距離を取った。
「だけど、現にこうやってみんなに崇められているのにはその力があったからじゃないのか?」
「君はまたそう言うんだね。
彼女を庇って、誰にも愛されなくても、人のことばっかり気にしてさ」
眉を寄せて、こちらを睨みつけられた。でも、なぜか先程のように恐怖は感じなくて申し訳なさを感じた。
目の前の存在がひと回り小さくなったように感じて体が重くなって動けない。
「また、いなくなるの?」
目の前に一歩ずつ近づいてくるのに、足が動かない。
顔を逸らすが、冷たい手が両頬を包んで前を向かされた。黒い瞳が真っ直ぐに目をのぞいてくる。
何かを喋る気力も湧かなかない。
「ほんと、醜いね。似外さま」
そうか、自分は醜いのか‥。
そうだな、醜いな自分は‥。
醜いから、逃げたんだ。
愛されたいと思って、愛されないと分かって、それでも人を愛したくて。
君からも逃げ出したんだ。
「逃げてもいいよ」
目の前にいるのは誰なのか知っている。
(ジンガイは奇形の兄弟と一緒に誕生する。だけど、ジンガイさまの力を持っているのは人間の形を持っている者だけではダメだ。奇形の兄弟と一緒にいることで力が溢れるんだ)
人に似ているが、人以外のものという、似外さま。
人に嫌われ、嘲笑され、追放されても、人に縋り付く自分に片割れは絶望したんだろうな。
「また、見つけ出すよ」
「片割れよ。醜い自分を見つけてどうするんだ」
口を大きく歪めて、片割れは手を離して距離を取った。
「さあね。その時考えるよ」
周囲に霧が立ち込め、周囲が見えなくなっていった。ああ、朝が来たんだと直感した。
「じゃあ、またね」
声だけが耳元をかすめていった。
目を開けると薄いカーテンから淡い光がもれていた。いつも通り頭側にあった携帯を手で探し当てて、ボタンを押して液晶の画面に目をしぼませた。
「あ〜。まだ5時か。もう一回寝よ」
1月で寒さが厳しいから変な夢を見たんだろう。何となく【ジンガイ】という言葉が残っている。
鼻は詰まっているし、寒いからと布団に潜らせた電気毛布は左側の方に行ってて寒いし。
もう少しだけ眠って、今日も1日がんばろう。
自分が生きるために働いて、ささやかな幸せを感じる日々を送るんだ。
今は、暖を取るために電気毛布を引き寄せて二度寝を楽しむために、ぎゅっと目をつぶった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
もし、現実にジンガイさまの情報があったら感想で教えて頂けるとありがたいです。
よろしくお願いします。