7 十一歳になりました
クソ父が愛人家族を引き連れてクローンサイト侯爵家王都本邸に乗り込んで来て早三年。
お陰様であちらのご家族との没交渉は順調に進んでいるように見えました。
クソ父は相変わらず侯爵家の仕事に関心を示しませんが、最初の頃、夜会には自慢げにアイラ様を伴って何度か顔を出したようです。
そこで今更、本当に今更ですが、アイラ様の過去のスキャンダルの存在と、未だ根深い影響の一端を目の当たりにしたらしく、また公式行事にすら顔を出さない引きこもりに逆戻り。
日がな一日淫行に耽っているご様子。
そうそう、乗り込んでいらした時にアイラ様のお腹の中に居た子供達も無事誕生したようです。
達。
そう、達ですわ。
男の子三人、女の子二人の、何と五つ子だそうです。
遠い目にも成るというものです。
フィッツを通してお祝いはお贈りしましたが、お会いしてはおりません。
ちなみにお祝い返しも頂いてませんわね。
パーティーを開くなら、三歳のお披露目会には出席することになりますし、五歳の魔力判定でも顔を合わせる機会が有るかも知れませんが、どちらにしても積極的にかかわりを持つ気はありません。
五つ子の内訳は。
六男のイクカ。
七男のクルカ。
四女のノルカ。
五女のソルカ。
八男のヤルカ。
だから!ネーミング!!
こちらにいらして半年程で誕生しました。
容姿はホラー並みに全員クリソツで、高シンクロ率。同時に動き同時に喋る。怖い。と使用人達が慄いているのが漏れ聞こえます。
ピンクのクリクリ巻き巻き毛、水色の瞳とのことです。
え~、すくすく育っているようですわ。
計、十三人ですわね。
ちなみにアイラ様は現在妊娠中。
・・・・・・・・・・・・。
言葉も有りませんわ。怖っ。
そんな、時折あちらのご家族の喧騒も遠く耳に届く日々を過ごすうちに、昨年十歳の誕生日を迎えたわたくしは、魔法学園に首席で入学し、今年二年生と成りました。
魔法学園は、貴族平民問わず一定以上の魔力を持つ十歳以上の子供であれば就学を義務付けられている学園です。
高い魔力は使い方を間違えれば大変に危険な力ですので、教育が必要となるのは自明の理ですわね。
基本的には高位貴族であるほど魔力は高いと言われていますが、毎年平民達が少なくない人数入学するのは、毎年とは言わないまでも、没落する貴族家や、追放、除籍となる個人、家を継げない貴族家三男以降、貴賤婚による駆け落ち、誘拐事件の被害者。諸々市井に貴族の血が紛れている事は少なくないという裏事情があるからなのです。あと、先祖返りとかで血は薄れても高い魔力持ちが現れたりの事例も有りますわね。
という訳で、十歳から十五歳までの五年間をかけ、魔法学園で教養や知識を深め、能力に応じた実践指導を受けることが出来るのです。
一応、学園では学習の妨げに成らないようにとの配慮から身分に囚われ過ぎないようにとの方針だが、ここは基本的に厳しい身分社会の国である。建前と現実はきちんと弁えなければならないのです。
当然無礼講という意味ではないので、普通に身分への配慮は必要となるのは常識ですわ。
が、不文律を解さないやらかしの事例は、毎年それなりに発生するようですの。
誰がどの爵位の家か知識の乏しい下位クラスの新入生には、毎年最初の授業で「とにかく全ての人に礼儀正しく敬語使っとけ~!!」という声がけがあるとかないとか。
それ故、無用な混乱を避ける意味でも学園のクラス編成は、先ず上位貴族と下位貴族+平民との二つに厳然と分けられ、学舎も分けられており、それぞれに成績に応じ、優秀者のみ、そこそこ優秀、それ以外の三段階で構成される。
名称についてはS、A、Bまでが王族、公爵、侯爵、伯爵までの上位貴族クラス。
C、D、Eが子爵、男爵、騎士爵の下位貴族平民のクラスである。
わたくしは当然Sクラスですが、同学年となる三つ子の内、令嬢である二人は上位貴族クラスではあっても同じクラスではありませんので、学園でも今のところ特に接触も無く平和に過ごしておりますわ。
令息である残り一名は、予想通りと申しましょうか、何と申しましょうか、飛び級をして上の学年に居りますのよ?
他人事(一応異母弟ではありますが)ながら、地頭がよろしかったようで幸いでした。
頑張りましたのね。
ちなみに、目論見通り三つ子と勘違いされている方が多いようですわ。
まぁ、普通に接点が無ければそうなりますわよね。
問題がある訳ではありませんもの。
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