表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/54

6 ゲームの中の人々




「あ・・・」


 自室へ戻る途中で、ふと、唐突にわたくしは先程抱いた違和感の正体に気付いた。


 あ~、アレ、「ハナヒカ」のヒロインだ~。

 あ、だから見覚え有る気がしたり出自に引っ掛かり覚えたりしたんだ~。


 アレと言うのはアイラ様の事だ。


 芋ずる式に思い出す聞き齧り&うろ覚えのゲーム設定。

 うぅわ!お母様悪役令嬢!!


 まさか、ヒロインを見てゲームを思い出すとは・・・

 ゲームとは、前世でいう乙女ゲームのことである。


 前世。

 そう、わたくしには前世の記憶が有る。

 ラノベでお馴染みの転生者である。

 ですが、転生というものは特に特別な事とは思っていません。

 仏教的な概念も頭の片隅に有るとは思いますが、普通に創造神というものがどのようなシステムを基に世界を構築されたのかという観点で注意深く身の周りを観察してみれば、私見ではありますが、食物連鎖の構図や、世代を受け継ぎ連綿と続く生と死の営み、蒸発して空に上がり雨と成って地に降り地に滲み湧き水と成り川と成り海へと辿り着き、やがて蒸発して空に上がる水の循環の構図のように、一見美しい円環を形作るようでいて実は幾重にも重なる螺旋状の循環がそれであると気付くと思うのです。


 循環。


 ですから、魂も循環するのでしょう。


 それが、わたくしたちが転生と認識するものだと思うのです。


 記憶がある事も、実際に有る事です。


 そういう事に少し関心がありましたので、実例の真面目な文献も目にした事がありました。

 多くは、物心つく頃から記憶を明かし始めることから、生まれる前から記憶を持っていたとされ、成長と共に記憶が薄れていくようでした。無論事故や何かを切っ掛けとして思い出すケースもあったと記憶します。


 稀であるとすれば、その前世の記憶が異世界である事と、人格が融合したかのようにずっと記憶が残る事でしょうか。でも特別というより特殊なケースというだけのような気もしますので、使命感も持ちませんし、必要以上に身構える事もしようと思いません。


 話を乙女ゲームへ戻すと、実はこれ、前世のオタ友のアキちゃんがドはまりしていたスマホアプリのゲームで、攻略画面?やらスチルやら二次創作の原稿やらを見せられていただけなので、断片的な上に正しい知識かどうかもわからないのです。


 当時のわたくしはといえば、やんちゃな男の子系(所謂少年漫画系)のBがLする方面に傾倒しておりましたので、キラキラ薄っペラペラホスト系イケメン(偏見!)量産の乙女ゲームには全く興味が無かったのです。


 でもゲームの舞台は親世代で既に終了しておりますので、ゲーム知識が無くても無問題。


 背景や裏設定を知っているだけお徳でしょうか?

 その知識がアキちゃんの妄想二次創作設定とかだったら危険ですが(笑)。

 真贋の判別がつかないところが怖いです。

 うん、忘れよう。たまに気が付いたらニヤニヤしよう。それだけにしよう。そうしよう。


 というわけで、前世の知識と言うより現実の過去のスキャンダルから紐解くとこんな感じでしょうか。



 義母であるアイラ様は乙女ゲーム『花と光の君へ』のヒロインだが、卒業パーティーで見事な畜〇腹で側近候補達の子を宿していることがバレ、逆ざまあをくらう。


 が、青春の過ち的配慮と温情で当事者達は緩い裁きを受けた。


 攻略対象は確か、王太子殿下、宰相子息、騎士団長子息、魔法師団長子息、あと宗教系の誰かと隣国の王子。

 隣国の王子は攻略から漏れたのか、逆ハーメンバーには入ってなかった。もしかしたらその辺大人の事情的配慮の介入があったのかも知れないが、少なくともスキャンダルには含まれていない。

 もしや二週目以降の隠しキャラか?


 ともあれ彼等には再教育やら奉仕活動やらが課され、継嗣の座は失っても、この時点での平民落ちは無かった。


 中にはそのまま継続した婚約も有ったが、多くは令嬢側からの婚約破棄の憂き目にあったようだ。


 アイラ様は強制的に堕胎させられた。


 四つ子だった。


 父親も四人である。(!!)


 ちなみに王太子殿下はこの中に含まれない。


 正妃にと望みながら、側近候補達に出し抜かれ、ただ一人清らかな関係であった王太子殿下は、さぞかし大恥をかかされた事だろう。


 まぁ、どこまで清らかな関係であったかは疑わしいものですが。

 王家の婚姻は花嫁が乙女である事が必須。

 でも逆を言えば、下世話な話、処女膜さえ無事ならどこまで何をしたってわからない。何しろ周囲の彼女との関係がアレですからねぇ・・・。


 何でも妊娠初期の胎児の纏う魔力はほぼ父親のそれと同じで、魔力視や魔力感知で明確に誰の子供かわかるのだとか。母親の魔力に関しては何しろ本人の胎内の事なので、父親の魔力だけが殊更に際立つようだ。

 その後妊娠五ヶ月を迎えた辺りから胎児本人の魔力へと変化してゆくのだとか。生命の神秘!!


 当然のことながらアイラ様の子爵家は王家はもとより側近候補達の家にも睨まれ、程なく没落。平民に。複数の男達の子を同時に身籠ったアイラ様を、身籠らせた男達の誰も娶りはしなかった。


 クズ父セドリックはその側近候補の一人の従兄弟で年も五つ上だったことから学園では関りは無かったが、従兄弟を通じて知り合い、ゲーム攻略と並行して交流を深める。

 ちなみに、セドリックは攻略対象でも隠しキャラでもなんでもなく、完全にアイラ様のつまみ食いである。


 断罪には無関係なセドリックは、ほとぼりが冷めるのを待って漁夫の利を得た形のようだ。


 ちなみに、わたくしのお母様であるキャスリーンは何とその断罪の当事者の一人で、メインの悪役令嬢その人。


 パーティーの最中、公衆の面前での王太子の宣言により、有責は王太子側と成るも婚約破棄は覆らず、また呆れ返ったお母様側も復縁を望まずフリーに。

 とはいえ結果的に傷物扱い。


 クソ父とアイラ様の愛人関係を知らぬままキャスリーンの父オパール侯爵は幼馴染の事業での失敗で困窮を知り、資金援助と引き換えにキャスリーンをクローンサイト侯爵家へ嫁がせた。


 斯くして、どういう運命の悪戯か、悪役令嬢とヒロインは再び随分と質を落としたヒーローを間に対立する構図が出来上がった。


 が、クソ父の愛を望んだ訳ではないお母様は事態を放置。


 婚姻を結び正妻に納まった時点である意味一つの決着で、お母様に軍配が。

 愛人の立場であれ、男と家庭を得たという意味ではアイラ様に軍配が上がったが、ゲームの失敗で懲りたアイラ様はお母様とかかわる事を恐れたので、お互いが無関心を貫いた。


 ちなみに、クソ父は、あれ程の大事件であったにもかかわらず、お母様とアイラ様の関係には気付いていない。


 それだけ当時からアイラ様しか見ていなかったともいえる。


 何かにのめり込んでる訳でも無く世情に関心のない単なる社会不適合者である。


 単純に見れば、学園でのスキャンダルにおいて後からお母様の幼少期からの婚約者との間に割り込んだアイラ様であったが、婚姻においてはアイラ様とクソ父との間に、今度はお母様が割り込む形となった。


 傍目には奇しくもお母様が復讐を果たしたような構図ではあるが、惜しむらくもその何れにもお母様の恋情も意志すらも介在しなかった。


 実情は愛人にべったりで正妻であるお母様を蔑ろにし続けたクソ父。


 クローンサイト侯爵家によってオパール侯爵家は厚意を踏み躙られ、後ろ足で砂を掛け、コケにされた形である。


 オパール侯爵家の現当主であるシスコン拗らせ叔父様は、大変お怒りです。


 嫌な家庭事情。





お読み頂きありがとうございます。

感想とか評価とか頂けますと幸いです。

次回もお立ち寄り頂けますと嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ