39 オパール家
オパール家の歴史は実は建国より古い。
この国の子供達が繰り返し読み聞かせられる建国物語に曰く。
『竜であったドラグ―ルが最初に興味を持ったのは、東の大森林の奥に密かに隠されたた古の神秘の森、神聖なるその地を守る神秘の一族の一人の若者であった。
人の身でありながら、人ならざる不思議の気配を持つ、キラキラとした宝石のような若き守り人。
名を、ジェイムといった。』
何と言うか、今思うとこの方、あからさまにオパール家の祖先の方っぽいですわね。
キラキラとした宝石のような若き守り人?
そうですか。という感じです。
ジェイムの一族は古の建国物語の言う『神秘の森』を『隠しの森』と呼び、彼らの祖となる古の妖精の眠る神聖な墓標として、彼等一族に受け継がれた能力である結界により守り続けているらしい。
らしいと言うのは、建国以来、その一族の存在を確認出来た者が存在しないと言われているからですわ。
神聖な墓という事は、初代王となられるドラグ―ル様がその地を訪れた時には、古の妖精は既にこの世に、か、その地にはいらっしゃらなかったという事。
まさに古ですわね。
『ドラグ―ルはジェイムとかかわる事で人に興味を覚え、一族を離れるという彼と共に旅に出る。
旅の途中、後に建国の英傑と呼ばれる仲間達と出会い、魔族に蹂躙され疲弊していたこの地に至る。』
ちなみに、ジェイムは族長の息子ではあったのだが、上に継嗣である兄が居た。ジェイムが一族を離れる決意をしたのは、家督争いを避ける為だったと言われている。
普通であれば何の問題も無く慣例通り嫡男である兄が家督を継ぐところであったが、時期も悪かった。
族長である父親はまだ若く壮健であり、代替わりを急ぐ必要が無かった。
数年前に成人したジェイムの兄は少しづつ父の仕事を学び始めたところであったが、生来不器用な性格な上に頑固なところがあり、些細な事ではあるが一族の末端とトラブルを抱えていた。
そんな折、元々人格、能力、カリスマ性に優れていたジェイムが竜と親交を結んだ事で、俄かに一族の中に次代の族長にジェイムを望む声が上がり始めたのだ。
親交を結んだと言ってもテイムした訳ではないので、竜を意のままに操れる訳ではないのに、他種族の誇りを軽視し、思い違いをする者というものはどこにでも居るのである。
仮に、そう出来たとしても、隠しの森の守り人である一族に必要な力ではない。
不要な大きな力を得れば、人は道を誤りかねない。
況して、そうした人の欲得に塗れた争いに誇り高い竜を巻き込む訳にも行かない。
それ故、ジェイムは一族から離れる道を選んだ。
『人々に乞われ、ドラグ―ルはこの地を魔族から取り戻し、魔族達を遠い北の大陸へと押し遣った。
人々は感謝し、ドラグ―ルの偉業を讃えた。
再び魔族が戻って来ることを恐れる人々はドラグ―ルの力を欲し、王へと望んだ。
斯くして、ドラグ―ルはこの地にシュトレーン王国を建国。
初代の王として君臨する。』
旅に出る際、面白半分に適当な土地で建国して王になる事をジェイムに進めたのはドラグ―ルの方であったが、皮肉にも、ドラグ―ルの方が新しい王国の王と成ったのである。
元々そのような野心を持たないジェイムは笑ってその背を押したという。
まぁ、粗筋だけ聞くには、どこかで聞いたような、割とありふれた建国神話ではある。
『初代王ドラグ―ルが娶った花嫁は、ジェイムの双子の妹である宝石姫である。
誉れ高き高名な賢妃で、人の世に疎いドラグ―ルをよく導き、王国の礎を築いたと言われる。』
何だかここで突然出て来た感のあるジェイムの双子の妹である宝石姫ですが、隠しの森で既に面識はあり、何と魔族掃討戦の前から行動を共にしていたのだとか。勇ましく戦う女性。憧れます。
ドラグ―ルド王は、彼女に大変熱烈な求愛を行ったとか。
ロマンスですわね。
ただ、そう考えるとオパール家の血筋って凄くないですか?
古の妖精の血を引くということは、ずっと遡った祖先の誰かが古の妖精に見初められて、しかも結ばれたということでしょ?その子孫が、今度は竜に見初められて結ばれる。
何でしょう?人外の、しかも高位の存在に見初められやすい血筋なのでしょうか?
と言っても、二例だけですが。たかが二例。されど二例。わかっているだけで二例。
あ。
何か怖くなって参りましたわ。
数ある(?)傍系の中にも人外に見初められて結ばれているケースがあったらどうしよう。
『人と交わる事で次第にその子孫たちに受け継がれる竜の血は薄れて行ったが、脈々と直系にその血は受け継がれ、数代置きに先祖返りと呼ばれる強大な竜の力を宿す者が現れ、そうした者達の多くは宝石姫、あるいは妖精姫と呼ばれる令嬢を娶ることで優れた統治力を発揮する名君と成り、数百年の安寧を王国に齎す。
この事により、宝石姫(妖精姫)は竜鎮めの姫とも呼ばれている。』
竜鎮めの姫。
って言うか、宝石姫も妖精姫もあからさまにオパール家の令嬢の異名ですわよね。
実はオパール家は基本男系の一族で、令嬢が生まれにくい血筋なのですって。
なのに王家に先祖返りが出現する時には大抵令嬢が存在し、竜の血の濃い王、或いは王子は必ずと言ってよいほどオパール家の令嬢を正妃に迎え、名君として後世に名を遺す。
そんな事から一部では、宝石姫は、『竜起こしの姫』『竜使いの姫』とも噂されるとか。
・・・・・・。
これって、先祖返りが先かオパール家の姫が原因かと言う、一種の命題かしら?
実はオパールの姫との愛が先祖返りを起こさせるとか?
ある意味、一種の初代王の呪いかしら?
確かに、王家の先祖返りとオパールの姫との婚姻には偶然で片付けるには密接な関係が・・・。
いやいやいや。
でも。
もし、仮に、そうなのだとしたら、お母様とのご縁を自ら溝に捨てたアルバート元王子殿下(現ダート辺境伯)は、みすみす先祖返りのチャンスを棒に振った事に。あらまあ。
まぁ仮定の話ですし、そうと決まった事ではありませんし、ホントにホントにチラッと思っただけの冗談ですが。
え?わたくし?
まぁ!わたくし直系ではございませんし、今はオパール姓を名乗らせて貰っているだけで、厳密には他家のお話ですわ。関係ございません。関係ございませんのよ?
変な勘繰りは御免被りたいですわ。
妙な策謀とか、巻き込まれませんように。祈!
お読みいただきありがとうございました。
次の話がなるべく早く投稿できるよう頑張ります!




