14 やっぱりスクーター!!
叔父様・・・
当初こんなに出る予定では・・・
朝一で届けてくださいましたわ!!水陸両用エアスクーター(仮)!!
木製ですが、凄く素敵に仕上げて頂けましたの。想像以上ですわ!!
座面の下の収納上部なんて、美しい透かし彫りが!!
座席の後ろは荷台に成っていますが、一応跨る形で人も座れる仕様です。
桐のようなとても軽い木材を使用していて、何処を見ても角の無い艶々ツルツルピカピカの仕上がりで子供のわたくしの手でも軽々扱えます。ホントにびっくりするほど軽いです!!
ハンドルの中央部分は少し広めの操作盤兼計器盤と成っていて、速度計、高度計、各種魔石残量計、作動・停止ボタン、高度操作レバー、結界オン・オフボタン、認識阻害オン・オフボタン、浮き下駄設置・収納ボタン、マップ。アクセルとブレーキはハンドルに。マップはほぼカーナビですわ。うふふ。
認識阻害は今のところステルス一択ですわね。
後方下部に大きめのローターが推進力を、底面前後二か所のローターが浮力を担い、物理エネルギーを組み込む事で、風魔法や浮遊魔法を使い続けるより省魔力と成る事を目指してみましたの。
あとは座席下の収納部分に空間魔法と結界魔法の重ね付けで付与するだけですわ。
「何をしているの?」
朝っぱらから玄関前で「軽い!!」「凄い!!」「素敵!!」「美しい!!」「機能美!!」などときゃあきゃあ騒いでいたら、叔父様に見つかってしまいましたわ。
「え・・・っ、と、あの、こ、これは・・・」
あまりの自分のはしたない騒ぎっぷりに、今更ながら恥ずかしさが込み上げて、ついしどろもどろになってしまいます。
しかもわたくしの前には、叔父様から見れば見慣れぬ珍妙な物体。
ヲワタ・・・。
「領内を隅々まで見て回る為に、わたくしなりの足を用意してみましたの」
「ほぅ・・・?」
っう。
値踏みするような叔父様の視線。
き、緊張しますわ。わたくし、まんま悪戯がバレた子供状態です。
「あの、叔父様。もしよろしかったら一緒に試乗されまs・・・」
「そう?嬉しいなぁ」
社交辞令
社交辞令気味のお誘いに、凄い食い気味に乗って来られましたわ。曇り空も吹き飛びそうな、凄い満面の笑顔です。
「ぁ、はい・・・」
男の方って、乗り物お好きですものね。
もう一台注文して贈呈するべきかしら?
取り敢えず試乗です。
座面の構造上と、設計者と言うか何というか、諸々一番これに詳しいわたくしが、前の座席と言うか操縦席に、叔父様には申し訳ないですが、荷台の方に跨って頂き、念の為わたくしの体に両手を回して掴まって頂くかたちに。あれ、何かこの体妙に勢恥ずかしいですわね。
あ!!殆ど膝抱っこの体勢ですわ!!
内心羞恥で「ギャーッ!!」と成りながらも、、結界発動ボタンを押すと、車体(?)が軽く浮上し、結界が発動致します。
実は結界発動ボタンは、全体の作動ボタンも兼ねており、作動ボタンがオンに成っていない状態で押すと、同時に作動状態になる仕組みなのです。
結界を張らないままでもエアスクーターは操作出来ますが、結界を張るという事はエアスクーターで移動するということなので。そういう簡略化を取り入れてあるのです。説明下手ですみません。
エアスクーターを包む結界は視界の妨げに成らないよう、認識阻害効果を付与している際でも内側からは透明に見える仕様なのですが、使用者に全く見えないのも問題なので、一応結界作動範囲に沿って座面の少し上の高さに一センチ程の細さの虹色の光のリングが表れるようにしています。結界範囲が分からないのも危ないですものね。
高度操作レバーで更に少し高度を上げ・・・
「発進します」と言えば、耳元で小さく叔父様が「うん」と仰る。ひゃ~っ、何か擽ったいです。
「これは・・・、凄いね」
音も無く滑らかに滑り出したエアスクーターに叔父様が感嘆の声を上げる。
「振動も騒音も無く、スピードは、どれくらい出るの?」
「まだまだ出ますよ」
今、既に時速40キロ、早馬くらいの速度だろうか?比較がよくわからない。
周囲の景色がぐんぐんと後ろに流れて行く。
「これがスピードメーターですわ」
わたくしは、操作盤兼計器盤の速度計を指し示す。
体格差があるので、わたくしの後ろからでも叔父様には余裕で見える筈だ。
速度計には、レッドゾーンやイエローゾーンの表示もある。
「なるほど・・・」
叔父様は速度計の針の示す位置が未だ半ばにも満たない事に感心されているようだけれど。
「レッドゾーンやイエローゾーンまでスピードを出してしまうと、操縦者の動体視力や反射神経が問われるように成るのですわ」
「それでもそこまでスピードが出せるようにしているのは、緊急時の為?」
「それもありますが、基本、出せるスピードには制限など有りませんの。結界に守られていますから、空気摩擦で発火して燃え尽きる心配もありませんし」
「・・・恐ろしい事を言うね」
「ふふ。何も無い上空を走らせる時、一番怖いのは自分が出しているスピードが分からない事なのですわ。空にも生き物が居りますし、結界があるとは言え、衝突すれば弾き飛ばされる事もあるでしょうし。その時スピードが出ていれば出ている程相対的に衝撃力が強く成りますし、被害も大きくなりますわ。隕石なみの威力で地上に激突したくはありませんでしょ?その為のスピード表示なのですわ。ちなみに、レッドゾーンに到達しましたら警告音が鳴る仕組みですの」
恐ろしいと口にする叔父様に、更に恐ろしい話を続ける。
これは、知っていなければいけない恐ろしさだ。
脅かそうとして言っている訳ではない。
叔父様も理解してくれるだろう。
でも。
「叔父様?恐ろしいものを恐ろしいと、きちんとその仕組みまで理解して、対策しておりますの。危ないからと、取り上げないでくださいませね」
「本当に、君には参るなぁ・・・」
わたくしのおねだりに苦笑する叔父様。
海岸線を走らせて丁度半島の先端まで来たので、一旦着地する。
「叔父様も操縦してみます?」
「えぇ~?あんな怖い話の後でぇ?」
操縦交替を持ち掛けてみると、おどけて見せるけど、叔父様、わくわくが隠しきれておりませんわよ?
「いいの?」
「えぇ」
ちょっと遠慮がちな叔父様に、ふふふと笑みが漏れてしまう。
「叔父様、ちなみにコレ、空も海の中もOKですのよ?それでこのボタンで浮き下駄が作動して、海面に着水出来ますの」
「へぇ~、それは凄いね!」
色々機能を教えて差し上げたら、もう思い切り少年の笑顔になってしまわれましたわ。
それからわたくしが横座りで後ろに乗せて頂く形で叔父様に操縦して頂こうかと思いましたら、叔父様ったら後部座席(荷台ですが)からでも余裕でハンドル操作が出来ると仰って、そのまま二人で地上に、上空に、海中に、海上にと楽しく領内観光を満喫したのでした。
思ったより沢山見つかった沈没船を眺めながら、ふと、トレジャーハンターの話になった。
沈んでいる船の年代は色々で、そこには歴史的価値の有る物も眠っているかも知れないというのは、海洋ロマンの一つである。
決して盗掘的な話ではない。
外国船の積み荷であれば、外交カードの一助と成る道も有るかも知れないし。
急ぎはしないので、余裕のある時に少しづつ積み荷を回収して調査して、博物館でも作ろうかという話にも成った。その時は二人で盛り上がったが、この世界で、果たして需要があるのだろうか?
何事もパイオニア有ってこそ変化が起こるとすれば、世界の為に必要なリスクだろうか。手段と見識を持つ富める者がやらねば、誰もやれないことではある。
それから、叔父様には海中遊覧コースのアドバイスも頂いてしまいましたわ。
結局エアスクーターは叔父様の分を追加で注文。
え?お買い上げですか?
びっくりするような枚数の白金貨の入った巾着と頭ナデナデを頂戴してしまいましたわ。
はふぅ。満足ですわ。
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