11 オパール侯爵領セントール
ブクマ&評価ありがとうございます!!
皆様ごきげんよう。
セフィリア・オパールでございますわ。
今、美しい珊瑚礁の入江を一望できる丘の上に来ておりますの。
別名家出娘ですわ。
えっ!?これ家出になりますの!?
予めきちんと然るべき手続きをしてクローンサイト家から籍を抜け。
籍を抜いた後、後見ともなるお母様の歳の離れた弟君であるオパール家当主ダニエル様にもきちんと報告という名のご挨拶にも参りましたし。
ただ、わたくしを養女に迎える気満々で待ち構えていらした叔父様のお申し出をお断り致しましたら号泣されてましたのですが・・・
以前より何度もお断り致し居りますのに。
その度に嫌だ嫌だと頑是ない幼子のように泣かれるのですわ。もう、お可愛らしいったら!ホントに困った方でいらっしゃいますの。
叔父様は極度のシスコンで、わたくしのお母様が大好きでいらしたのですわ。
その忘れ形見であるわたくしを、それはそれは可愛がってくださるのですけれど、家族の中の異物に成るのは嫌なのですわ。
生さぬ仲であるかぎり、どうしてもお互いに気を遣い合いますでしょ?
今迄一人っ子然として自由に生きて来たわたくしには、窮屈に思えてしまうのです。
貴族であることに未練は有りませんし、お金も十分にクローンサイト家から毟り取りましたから持っております。
オパール姓を名乗ることを許してくださっている事だけで十分ですわ。
それに、万一『ハナヒカ』の続編のようなものが存在して我が身に降りかかる事があるとすれば、貴族である事から逃げ出しておいた方が安全です。
悪役令嬢の娘は悪役という役どころが順当でしょうし、ヒロインより身分の低い悪役令嬢なんて聞いた事ございませんでしょう?
もう平民の時点で令嬢ではございませんし。
自意識過剰、考え過ぎかとも思いますが、ダンドール前公爵の一件で、少し、不安になってしまったのですわ。
下手に貴族で居続けるより平民の方が安心安全!
ちなみに、輿入れの際のお母様の持参金の一部だった小さな領地はお母様が亡くなられた時にわたくしが相続しておりましたの。
これもクローンサイト家から毟り取った資産の一つですわ。
ただ、身分を失った小娘に過ぎないわたくしが所有者では何かと危険が伴いますので、一旦オパール侯爵家へ返還し、クローンサイト侯爵家の資産からハッキリと切り離しましたの。血の繋がりを頼りに娘のものは俺の物とか、クズが勘違いしても困りますでしょ?
その上で、成人までは領主館でお世話になる事を条件に、領地を自由にしていいというお許しを頂き、領政アドバイザーなる役職を頂きました。
責任の無い代官みたいなものですかしらね?
先程領主館にご挨拶にも上がりました。
正式な代官のレリック・ア―カンソル様。
ダークブラウンの髪にアメジストの瞳の瘦身長躯の柔和な物腰の小父様ですわ。
生前のお母様と何度か一緒に来ておりますので初対面ではありません。「ご主人様をお迎えする事が出来まして・・・」って感激に声を詰まらせながら涙まで溢されましたが、えっ!?違いますよ!?わたくし領主として来たのではありませんのよ!?単なる無責任なアドバイザーもどきの平民ですのよ!?オパール家関連の殿方涙脆過ぎませんか!?
ともあれ表向きはオパール侯爵領ですので、領地から上がる税収は、オパール侯爵家を通じて国へ納めることとなるのですわ。問題解決!
この国の成人は十五歳です。
魔法学園の卒業を以って一斉に成人と認められるのですわ。
学園は飛び級制度が導入されておりますけれど、その制度によって年齢に満たずに卒業を迎えられる方も、稀ではありますが、おられます。ですが、そういう方達も、同様に卒業を以って成人とされるのですわ。
同時に社交デビューと成りますが、そういう方は、優秀と持て囃される一方で、陰ではやはり若年であることで、どうしても意地の悪い貴族達に侮られがちです。
利と成るか不利益となるか、判断の分かれるところですわね。
わたくしもそこそこ優秀な頭をしておりますので飛び級は可能ですが、わたくしの場合早く成人したところで婚姻と言う名の厄介払いをされる時期が早まるだけですので、家への未練も婚約者への不満も無くても業腹です。クズがほくそ笑みますもの!!
令嬢の場合はそういった理由で、優秀でも飛び級制度の利用を検討されない方が多いのですわ。
成人したら、好きな所に自分の家を建てていいというお許しも頂きました。けれど、今からでも気に入った場所が有ったら自由に家を建てて準備していてもいいそうです。叔父様、ゆるゆるですわ。
そうです。これは家出ではなく、独立なのですわ。
一つ問題があるとすれば、わたくしがまだ未成年の子供でしかないという事。成人していれば何も問題無かったのですが・・・
でもそれも叔父様という後見人が居りますので問題ありませんわ。
そんな訳で遠回しにわたくしのものと成りましたこの領地。
オパール侯爵領セントール地方と申しますの。
あまり標高は高くはないのですが、小さな山々に陸地から切り離されたような、小さな半島を抱えた海と山に囲まれ、ささやかな平野にも恵まれた美しい土地です。
緩くカーブを描く半島の内側は珊瑚礁の入江とが、そして半島の外側は深い海。海岸線はとても入り組んだ絶景の宝庫です。
半島の先端にはお洒落な灯台。
整備すれば、大きな船も停泊できる港に成りそうですわね。
これは、観光地化が楽しそうです。
立地としては、王都から馬で一日、馬車で三日程。
遠くはないけど、近いとも言えない微妙な距離。
いえ、十分王都から観光客を呼び込める立地ですわ。頑張れわたくし!
先ずは領地を隈なく見て回り、この先の領地経営を考ましょう。全てはそれからですわ。
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