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僕を愛していないってこと……?

「どうしてこうなるのかな」

 ユリウスは頭を抱える。

 いや、困っている場合じゃない。この場を治めなくては。

 足の痛みを根性で我慢し、ユリウスは立ち上がった。

「ジュリエット様、下がっていてください。危険です」

「もういい、僕が何とかする。君こそ下がっていろ。この場にいる全員にとって危険すぎる」

 こうなったらあれを出すしかない。

 ユリウスはウエディングドレスの裾を豪快にたくし上げる。

「うわわ。ロ、ジュリエット様! あ、足が丸見えに……」

 ロミオが顔を真っ赤にして慌てているが、それに構ってはいられない。

 ドレスの下に隠していたレッグホルスターから電子銃を取り出す。

 近づいてきていた獣に向けて銃を撃つ。連続して三発。すべて命中した——と、思ったが、一頭がふらふらと立ち上がり、吠えた。どうやら、かすっただけで致命傷にはならなかったらしい。

 すべて頭を撃ち抜いたつもりだったし、普段なら絶対に外すことはない。

「ああもう。邪魔なんだよ、これ」

 ユリウスはやたらとふわつくウェディングドレスの袖を引きちぎった。ユリウスのしなやかに鍛えられた腕が顕になる。

 邪魔な袖がなくなって、これで本領発揮できる。

 ユリウスは一頭、また一頭と獣を撃ち抜いていく。しかし、

「さすがにエネルギー切れか」

 十頭ほどを倒したところで、電子銃の威力が弱まってきた。充填用の予備エネルギーまではさすがに持ってきていない。

 自分の結婚式で電子銃をぶっ放すことになるとは、いくら何でも予想していなかった。

 とはいえ、獣はかなり減ってきている。ほとんど倒せたと思ってよさそうだ。

 それでも混乱が収まらないどころか悪化してきているのは、今や大半が両家の争いのせいだった。獣を倒しきったとしても、ここにいる人間たちの争いは止まらないだろう。

 どうしたらいいか。少し考えて、ユリウスの結論が出る。

「とにかく、さっさと結婚してしまおう」

 当初の目的さえ果たせればいい。

 呪いがとけて両国の人間の目が覚めれば、争いもおさまるだろう。

「ロミオ、こっちに来て」

 茫然と立ち尽くしているロミオの手をひっぱり、水盆まで引きずっていく。

 水盆は傷一つついておらず、中の水もしっかりと満たされている。

 ユリウスは水の中に手を突っ込んだ。どんなものかと思っていたが触った感じは何の変哲もないただの水だ。色も変わらない。

「ここに手を入れてくれ」

 ロミオに指示を出す。しかし、彼は躊躇しているようで、手を出さない。

「いや、しかし…」

「手が腐ったりはしないよ。安全だ。ほら。時間がない、早く!」

 ユリウスはロミオの手を掴み、無理やり水の中に入れた。

 水が少しだけ熱くなる。水面が不自然な揺れをみせる。虹色に変わる瞬間を見逃すまいと、ユリウスはじっと水面を見つめた。

 しかし、それだけだった。

「変わらないな」

 一度水から手を出して、もう一度入れてみる。だが、結果は変わらない。

「ニノ神父、誓いの水が反応しない。この水、古くなってるんじゃないか?」

「こら、水のせいにするな!」

 ちょっぴり頭の焦げたニノ神父が、地団駄をふむ。

「誓いの水は古くなったり、性質が変わったりするようなものではない。何度も言っておるだろう。愛し合う二人でなければ意味がないと!」

「それはさっき聞いたよ。僕がききたいのは、どうして水の色が変わらないのかってこと」

「だから、愛し合ってないからに決まってるじゃろ!」

「え?」

 どう言うこと?

「そんなはずないよ」

 いや、そんな。まさかね。

 ないない。それはない。ユリウスは手を左右にふる。

 二人の愛を確かめるため、ユリウスはロミオの手を両手で強く握り締めた。

「わ、ちょ、ちょっと」

 突然手を握られたロミオが慌てているが構うものか。

 十秒程、全力で手を握る。

 ユリウスはロミオから手を離し、自分の両手を見る。左手の薬指にも、右手の薬指にも指輪はない。それどころかどの指にも何もない。

「ロミオ、君、まさか」

 ユリウスは大袈裟にショックを受ける。

「僕を愛していないってこと……?」


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