親愛なるユリウスへ
飾り気のない便箋に、綺麗に揃った文字が並んでいる。
お元気ですか、から始まって、最近の気になった出来事やら、新しい機械のアイディアやらが書き連ねてある。
そして最後には必ず、いたわりの言葉。
見慣れた筆跡に、昔から変わらない優しい手紙。
ロミオは、ユリウスから届いた手紙を引き出しにしまう。
すでに引き出しには溢れそうなくらいの手紙が入っている。差出人のところにジュリエットと書かれた沢山の手紙。その上に、届いたばかりのユリウスからの手紙を重ねる。
「手紙をとっているのが自分だけだと思うなよ」
ロミオはここにはいない差出人に向けて言った。
城の中に居場所がなく、他の兄弟たちからも距離を置かれている孤独な自分の、大切な話し相手。
弱音を綴ったこともあった。辛さを打ち明けたことも。何もかも投げ出したくなったこともあったけれど、手紙の相手はそれを許さなかった。
『最後まで私は貴方の味方』
その言葉は自分を救った。
そして、それならば自分も、最後まで手紙の主の味方でいなければならないだろう。
「しかしまさか、男だとは」
ロミオは一人笑った。
芯の強い女性なのだろうと思っていたけれど、実際は芯が強いどころじゃなくて、とんでもなく頑固で折れなくて人の話を聞かない。
正体が分かってしまえば、そんな男相手に一生懸命慣れない文章で愛の言葉を綴っていた過去の自分が可笑しくてたまらない。
ロミオは新しい便箋を取り出した。
「何を書こうかな」
伝えたいことは色々ある。
青藍公国と緋の国の交流は順調で、最近では緋の国の機械をこちらの国でも使っているとか。
ロミオとユリウス、二人の愛の物語の好評に応えて、次回作制作中だとか。
映画の効果もあってか、ユリウス様を愛する会への入会希望が増え、さらに会員数が膨れ上がっていて、もはや自分も新参とは呼ばれなくなったとか。
便箋は何枚あっても足りなそうだ。
「まあ、とりあえず書き始めようか」
ロミオはペンを手にとり、便箋に滑らせる。
『親愛なるユリウスへ』




