序章
冷ややかな風が頬を刺すように撫でていく。
時折滴る水滴も氷のように冷たい。
どこまで続くか分からない洞窟をつたいながら、当てのない道を進んで行く。
突き刺すような寒さは感じるのに、地面を踏みしめている感覚はない。
そう。これは夢だ。
「ああ...まただわ...」
もう何度繰り返し見たか分からない夢を見ながら翡翠は呟いた。
この夢には必ず決まった結末がある。
進んでいた洞窟が二手に別れ、踏み出した先には闇が広がっているのだ。
二つの道のどちらを選んでも結果は同じ。
果てしなく広がる闇へ落ちていく感覚は、何度経験しても慣れることはない。
自分の全てを奪われるような、絶望的なあの瞬間は。
闇へと誘われ、絶望したその時に、私は決まって目を覚ますのだ。
しかし。
「・・・え。」
落ちない。落ちていく感覚がない。
いつもならここで泣きながら目を覚ますはずなのに。
「もう・・・大丈夫だ。」
優しい暖かい風と共に声が聞こえた。
この声は。
この手は。
『・・・おとこの人・・・?』
見上げると闇の中に明るく優しい手が。
私の手を握っている。
暗くて顔は見えないけれど。
でも。
『とても優しい手だわ・・・』
何故か安心する。
誰の手かも分からないのに。
『大丈夫。きっと・・・・・・から・・・』
柔らかく暖かな風と共に消えゆくような
優しい声を聞きながら目を覚ました翡翠はいつもとは違う朝をむかえたのだった。
はじめての投稿です。
すごく緊張しています。
盲目の巫女である主人公です。
何年も前からあたためてきたキーワードを使って、
頑張って書いていこうと思います。
何か間違っている所などございましたらご指摘をお願いいたします。