番外 リク視点
「キョウちゃぁぁあん! 帰ってきてくれたんだね!」
家に帰って来ると、思い焦がれたキョウちゃんの姿。一週間ぶりだ。
俺は一目散にキョウちゃんへと走り寄る。
お昼の少し前に「今日帰る。充電減るからやたらとラ○ンすんな」と、素っ気なく迷惑そうな文面で連絡が来た。何とも彼女らしい書きぶりにニヤニヤと頬が緩んだところを同僚に見られて、「うわ顔ヤベェ」とヒソヒソされたけど知るか。
とにかく帰って来てくれたのがめちゃくちゃ嬉しい。
ルームシェア始めてからキョウちゃんがいるのが当たり前になってたから、この一週間誰もいない家に帰って来るの結構堪えた。
ちょっとやりすぎたかなぁって反省したよ。
後悔はしてないけど。
「キョウちゃんごめんね? でも、『杏里くん』最高でしたっっ!!」
衝動を抑えられず、ソファでワインを飲んでくつろいでいるキョウちゃんに背後から飛びついた。
首筋から彼女の良い匂いがして、どさくさに紛れて軽く舐める。美味しい。
「そりゃドーモ」
あれ? 今のスルー? 俺、舐めたよ??
続きオーケーってこと? 据膳食わぬはってことだね??
俺はキョウちゃんを逃がさないように回す腕に力を込めた。
彼女が拒否しないのをいいことに、これ幸いと再び首筋に顔を寄せる。
匂いを堪能しながら、白い項にちゅ、ちゅっ、とキスを落としていく。
ちらりと目線をやった先に形の良い耳があったので、当然舐める。
輪郭をなぞるように、丁寧に丁寧に舐め上げる。
「ッ、おい。もういい加減にしろ」
もしかして、耳弱いのかな?
鳥肌を立てたり、嫌悪感に満ちた声を出されたりすることはあったけど、声が震えたのは初めてだ。
ちょこちょこ身体は触ってるけど、そういや耳は触ったことなかったや。良い発見だなぁ。
「ん~? ちゅ、んちゅ、やぁだ」
キョウちゃんから制止の声がかかったけど、ソッコー止めるほど聞き分けが良くない俺は、舌を少しすぼめて彼女の耳の穴にぐちゅりと捩じ込んだ。
ゴッッ!!
「あぎっ!」
キョウちゃんからの強烈な頭突きを食らい、痛みにのたうち回る。
ったぁぁ。油断したぁ。
いつもの蹴りは位置的に無理だと思ったけどこう来たか~~~!
「やり過ぎなんだよ! どこまで進む気だったてめぇ!?」
キョウちゃんが除菌シート使って耳を拭いてる。そんなに強く擦ったら赤くなっちゃうよ? あ、でもそしたらまた俺が舐めて治してあげるけど。
「……あっ、はっ……ぐ、んん、とねぇ」
思ったよりもダメージがあって、返事が途切れ途切れになって遅くなる。
「できれば全身、舐め回そうと思ってたぁ」
素直に白状すると、キョウちゃんはスッと表情を無くして絶対零度の冷たい声を出した。
「おまえ、もう一回頭突きされたいか?」
あはは。相当怒ってるねこれ。俺を見る目がゴミ虫を見る目なんだけど。
キョウちゃんにこういう目されるとゾクゾクしちゃう。あァ、勃ちそう。
「キョウちゃんのなら喜んで」
彼女は表情を変えずに沈黙する。
「…………止めとく」
あらら、止めちゃうの? ざーんねん。
別に俺は痛いのが好きなマゾってわけじゃない。むしろ他の誰かにやられたら徹底的にやり返す。
キョウちゃんだけが例外で、彼女からの痛みなら甘んじて受け入れたいと思ってる。自分の好きなものには何されても良いっていう境地かな。
おーっと、俺の息子が元気になっちゃったぁ。
ねぇキョウちゃん。コレ見えてるでしょ? 無視はいけないよ~。