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新年から変態がやらかしててすみません。
今年もよろしくお願いします!
あー美味い。まさか家でこれを飲めるとは。
自分じゃ高くて手ぇ出せないからな~。
私は店長からもらった白ワインを飲みながら、のんびりと映画を観ていた。
常備してあるカマンベールチーズも一緒につまむ。
起き抜けにワインなんて健康にめちゃくちゃ悪そうだけど、飲みたくて仕方がなくて飲んでしまった。勿体ぶるといつまでも飲まない気もしたし。
「……っと、あれ? やべ。これで最後?」
結構なハイペースで飲んでしまったらしく、映画の中盤だというのにもらった三本全てのボトルが空いている。
そういやちょっと顔も熱いか?
酒にはかなり強い方だけど、さすがに飛ばしすぎたかな。
ソファにだらりと預けていた身を起こし、グラスをテーブルに置いて水を取りに行こうとした瞬間、背後から喜色に溢れた声が聞こえた。
「キョウちゃぁぁあん! 帰ってきてくれたんだね!」
リクは鞄を放り投げて、真っ直ぐに私のところへ駆け寄ってきた。まるで久しく会っていなかった飼い主との再会を喜ぶ犬みたいに、奴の全身から嬉しいという感情が伝わって来る。良くも悪くも、コイツは表現がストレートだ。
本人には絶ッ対ぇ言わないけど、こういうとこ可愛いんだよな……
「キョウちゃんごめんね? でも、『杏里くん』最高でしたっっ!!」
リクが私に抱きつきながら謝ってきたけど、ほんとに悪いと思ってんのか?
何か首筋に生温かいもんを感じたんだが。舐めやがったぞコイツ。
「そりゃドーモ」
ほろ酔いになっていた私は、何だか蹴り飛ばす気が起きなくて、そのまま流すことにした。それより水飲みてぇ。
キッチンに行くために私がリクを退かそうとすると、抱きつくリクの腕の力が強まった。
かと思うと、ちゅ、ちゅっ、というリップ音。
コイツ……!
やっぱりさっきいつもみたいに蹴り飛ばしておけば良かった!
がっちりと抱きつかれていて思うように動けずにいると、奴は首筋から耳へと舌を移動させ、執拗に舐め始めた。
「ッ、おい。もういい加減にしろ」
耳は弱いんだよクソがっ……
妙な声を出さないように歯を食いしばり、低い声でリクを制止する。
弱点である耳を舐められたせいで力が上手く入ってくれず、回されている腕を掴むくらいしかできない。
「ん~? ちゅ、んちゅ、やぁだ」
私の力が抜けていることが分かったのか、一向に止める気配が無い。
それどころか、奴はぐちゅりと水音を響かせて、耳の穴に舌を捩じ込んできた。
~~~~~ッ!?
ゴッッ!!
「あぎっ!」
私は変態野郎に頭突きを食らわすことに成功した。
相当効いたらしく、痛みでバタついている。当然の報いだ。
「やり過ぎなんだよ! どこまで進む気だったてめぇ!?」
ちょうどテーブルの上に置いていた除菌シートを使って、ヒリヒリするまで耳を拭く。
「……あっ、はっ……ぐ、んん、とねぇ」
痛みのせいか奴の言葉は途切れがちだが、悪いとは全く思わない。
「できれば全身、舐め回そうと思ってたぁ」
リクは寝転がったまま赤い舌をちろりと出し、ねっとりとした口調で答えた。
これ本気で言ってやがるな。長くはない付き合いでもそのくらいは分かる。
こんっの野郎。そもそも店で私にちょっかいかけ過ぎたことを謝ってたんじゃなかったか? マジで反省する気ねぇな。
「おまえ、もう一回頭突きされたいか?」
ふつふつと沸き上がる怒り。しかし頭は一周回って冷静になっていて、ひたすらに冷たく、軽蔑の極みみたいな声が自分から出てきた。
「キョウちゃんのなら喜んで」
…………
「…………止めとく」
半ば予想していた回答だけに、更なる怒りは沸かなかった。諦めに近い。諦めたらそこで試合終了という名言は今はお呼びでない。これ以上コイツとやり取りするくらいなら負けた方がマシだ。まともにやり合っちゃいけないんだ。
あと、一瞬視界に入ったコイツの下半身は無視。
無視ったら無視。
リク視点も投稿予定です。