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全力で相手してやると意気込んだ私を感じ取ったのか、リクは調子に乗っていつも以上にベタベタしてきた。
段々と“お客様”の範囲を超える際どい感じになってきて、どうやって軌道修正するか思案し始めたとき、タイミング良く終了時間になった。
私の友達(?)だからって店長が直々に声を掛けに来てくれて、ああ心配させちゃったんだなと申し訳なさでいっぱいになる。
店長にはリクと同居していることとセクハラ野郎だってことを話してあるから。
家では適当にあしらえるけど、店では“客”の縛りがあるのを懸念してくれたんだろう。
ともかくリクを蹴り飛ばさずに済んで助かった。
店の皆に迷惑かけちゃうのはまずいからな。
リクが上機嫌で帰って行った後、やっと家に帰れる……と息を吐いたのも束の間、いやアイツも同じ家だわとドッと疲労が押し寄せた。
今すぐ寝落ちしそうなほど疲れているのに、帰る気がまるっと消え失せる。
アイツ興奮してるだろうから、絶対誰か連れ込んでるよなぁ。
毎回毎回、家に連れ込むのはルール違反だっつってんのにあの野郎ちっとも聞きゃしねぇ。
百歩譲って事前に私に言えって言ってんのに忘れるからね。わざとかもしれないけど。
前にリクの相手と鉢合わせしたとき、そいつが私を浮気相手と勘違いしてものすごい修羅場に発展した。
あんな貞操観念の緩そうな頭して、リクは相手を結構慎重に選んでる奴なんだけど、珍しく失敗したらしい。
さすがのリクもあのときは平謝りしてきたけど、もう二度とごめんだ。
思い出したら頭痛がしてきた。よし。家に帰るのは止めだ。決定。
それに、奇跡的に誰も連れ込んでなくても今日は帰るの止めた方が良い気がする。
だって最近、私の貞操本格的に危うくない?
アイツ、私が女だって忘れてると思うんだけど。
ん? だとすると私が脱げば自然と萎えるのか? むしろそうすりゃいいのか?
……駄目だ。頭回ってない。
ビジネスホテルにでも泊まろうかと考えていると、店長が泊まりに来ていいと言うので、ありがたくその申し出を受けることにした。