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リヤン 〜魂の絆~  作者: ゆめ猫
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第46話 死

評価、ブックマーク本当にありがとうございます。とても励みになり嬉しかったです<(_ _)>

 諸外国と精力的に話し合いを行い、同盟国を増やしていった。和平条約を提案し皆喜んで賛同してくれた。これでこの世界は平和を保つ事が出来る。

 血を受け継ぎ魔法を使える者達、憧れを持ち夢を追う者達の傭兵志願は極端に減った。

新たに生まれたのは教育の場だった。王室では家庭教師がいるが、普通の国民には学べる場所が無かった。

 リリアと相談し国都に教師養成学校を作った。そしていづれは各街や村に学校を建て、皆が学べる環境を整える。

 同盟国とは貿易システムをも作った。1番の人気はコーヒー豆だった。アンジュ国の産物は猪肉となり、傭兵達がそれを集め収益をあげた。

 変わりゆくアンジュ国を見てとても嬉しかった。もう悲惨な光景を目にする事も無い。ここに来るまでに払った犠牲は大きかった。それが悲しい。

 何よりも心から信頼し合い深い深い絆で結ばれた豪を失ってしまった事が悔しい。この国の今を知ったなら喜んでくれるだろうか。一貫して変わらない豪の思いは達成出来たのだろうか。

 毎日のようにリリアと今後の国づくりについて話し合う。それを彼女はとても楽しく感じているようだった。そこに愛夢が分からないながら話に入って来る。それが可笑しくて可愛くて笑い声が増えた。

 この結婚に関してはいつも正しかったのだろうかと、考えていた。リリアは幸せになれたかも知れない。だが、ほのはどうだ。自分と共に生きなくても相手が幸せならいいと言った。俺なら側で幸せな光景を見るなんて耐えられなかった。

 時々愛についても考える。ほのが好きだ。だが、愛しているかと聞かれると分からない。実際愛が何かも分からないのだから。リリアは好きだ。愛してはいないかも知れない。全ては愛夢の誕生により、これで良かったんだと思う他はない。そうこれで良かったんだ。


「健公、珍しくお呼びですかな」


「ハレルヤ、勇者として最後の質問をしたい」


「ほぉ、まだ私目に質問などございましたか」


「この勇者システムを作ったのは誰なんだ?」


「もちろん、前国王様でございます」


「何の為に?」


「国を守る事、国王様を守る為でございます」


「召喚は誰が出来るんだ?」


「それは私でございます」


「どんな基準で選ぶんだ?」


「その時々で変わりますな……」


「じゃ、俺は?」


「健公は正義感が強く困った人をほっておけない方、でしたかな……」


「それが俺なのか……」


「そうなりました。実際その通りのお方でしたな。成功したと言えましょう」


「これからはどうするんだ?また勇者を召喚するのか?」


「今は必要無いかと思われます。それに国王様が居なくなってしまいましたので、私の独断では行いません。王女様に頼まれれば別ですが」


「そうだな、もう必要無いな。これで最後の質問は終わりだ。今まで世話になった。ありがとう、ハレルヤ」


「いえ、最初はどうなるかと心配しておりましたが、立派に成長されて何よりでございます」




 今日は愛夢の5歳の誕生日だ。この国では5歳15歳の誕生日を盛大に祝う習慣があるらしい。夜のパーティだというのに、朝から広間では準備をし、厨房では料理の下ごしらえが始まっていた。王室の者はもちろん諸外国の方達、それに国の為に働いた国民、もちろん俺の仲間達も招待していた。合わせて200人近くになるだろう。その準備とあって皆忙しそうだったが、どこかお祝いとあって嬉しそうだった。


「健公様、愛夢姫様を見かけませんでしたか?」

侍女が血相を変えて飛び込んで来た。

「お着替えの時間ですのに、いらっしゃらなくて……」

もう夕方だ。本当に困った奴だ。

「勇者の家じゃないかな。ちょっと見て来るよ」

「いえ、健公様も着替えの支度の時間ですから、私が行ってまいります!失礼します!」


程なくして綺麗にドレスアップした愛夢が走って来た。

「そんなに美しいのに走ってはダメだぞ」


「お父様!本当に美しい?本当に?お母様よりも美しい?」

そう言いながら飛びついて来た。全くお転婆な女の子だ。


「あぁ、美しいのと可愛いのと両方だ。お母様は美しいだけだから、愛夢の勝ちだな」


「まぁ、私は負けてしまったのですね」

美しく着飾ったリリアが嬉しそうに笑った。


 幸せとはこういうものを言うのだろうな。だが何故だろう、いつも心から喜べない自分が第三者のように遠くから見ていた。


 誕生日パーティが始まった。リリアの挨拶が終わると愛夢が登場し、淑女のようにお辞儀をした。そして中央に置いている大きなケーキのロウソクを吹き消した。拍手がおこりオーケストラ楽団が曲を演奏し始めると、一気に和やかな雰囲気になった。立食パーティで皆楽しそうに語らい、リリアと愛夢が挨拶に来るとそこだけ歓声が湧き上がった。

 半ばまで来るとダンスを楽しむ人が増えてきた。愛夢を抱きあげて一緒にダンスの真似をした。くるくると回ると愛夢は声をたてて笑った。


「さ、愛夢。そろそろおやすみの時間だな」


「私のパーティなのに?」


「もう充分楽しんだだろう?どうだ?いいパーティだったか?」


「最高のパーティよ!」

そう言って抱きついてきた。そのままリリアの元へ連れて行った。リリアは愛夢を抱きしめキスをした。愛夢が喜んでくれたなら、それが1番だった。


 仲間達の方へ向かって歩いていると、1人の男がぶつかって来た。酔っているのだろうか。

「大丈夫ですか?」


「ノイズ様の仇だ」

男は耳元で囁くと胸に何かを突き刺した。

「うっ……」

その男の肩に倒れかかるように手を置いた。

ニヤリと笑ったかと思うと「トレートル万歳!」と叫んだ。

すぐさま兵達に囲まれ捕まった。

 その男にもたれかかっていた俺は、片方の膝をつきその場にしゃがみ込んだ。胸を見ると大きな剣が突き刺さっていた。


「健公様!」

兵達が駆け寄って声をかけたから、来客達は一斉に静かになり楽団も奏でるのをやめた。

「嫌だ!離して!お父様ー!」

愛夢の声だ。「来てはいけないよ」と声をかけたいのに言葉が出ない。

「健さん!」

リリアの泣き叫ぶ声だ。目は次第に霞んで来た。人影しか分からない。胸に突き刺さった剣を思い切り引き抜いた。胸からお腹に血が流れるのが分かる。温かい。俺の血はこんなに温かかったのか。

「健!」

「たけちゃん!」

「健さん……」

「健!」

分かる、目が見えなくとも分かる。仲間達が駆け寄って来たんだ。そして死ぬ事も分かる。血が吹き出し口からも血を吐いた。痛みは全くないのに俺はこんな形で死ぬのか。やり残した事がまだある。愛夢の成長を見たい。リリアのこれからも心配だ。死にたくない、そう思っていると手に握りしめていた剣を誰かが取った。突っ支い棒にしていた体が一瞬傾いた。


「ダメー!」「やめて!」

仲間達が叫んだ。一体何が起こったんだ。

誰かが右の肩にしなだれかかった。右手で肩を掴み左手で剣を触ってみた。間違いない。俺から奪った剣で胸を刺している。


「どこまでも……一緒に……」


ほのの声だった。


「俺が死んだらどうする?」「もちろん一緒に死ぬわ」そう答えて笑った顔を思い出した。まさか、本当に死ぬのか!

 左手にほのの温かい手が重なった。柔らかな優しさに包まれた。あの夜二人で見た夜空の時のように。

 今なら分かる。ほのとの未来が愛おしい。心から喜べ心から癒され君の前では泣くことも出来た。

 遅すぎたかも知れないが、俺はほのを心から愛している。やっと気づいたよ。


「医師はまだか!」


誰かが叫んだ。

沢山やり残した事があったかに思えたが、ほのの死によって全てが終わった気がする。皆ありがとうな。本当にありがとうな。

この2人の光景はリリアにどう写っているだろうか。思考が低下してきた。

もういいな……、もういいよな。


ほのを抱きしめながら前に倒れた。

ほのの温かさに包まれながら、牢獄された時の皆が泣き笑い大声で歌っている光景が蘇った。


♪君が 微笑むその目には♪


♪はるか遠くの 道が見える♪


♪果てしなく 辛い 道なれど♪


♪険しく 困難な 道なれど♪


♪君がいるから 乗り越えられる♪


♪さぁ〜行こう 君の道へ♪


♪さぁ〜行こう 皆が待つ夢の奇跡へ♪



次話は最終話となります。もう少しのお付き合いよろしくお願いします<(_ _)>

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