第2話 勇者様
俺は暗闇の中に立っていた。暗闇という表現よりも真っ黒いという方があっているかも知れない。あまりの怖さに一歩も動けない。
突然眩い光の球が前方に現れ、こちらに近づいてくる。眩しい……眩し過ぎる……。
その光の球は虹色に輝き、クルクル回りながら移動して来る。上には巨大な穴が空き、そこから幾数もの光の柱が出来ていた。
虹色に輝く球は俺をすっぽり包み込み、穴の中に登って行く。光の柱は時折俺を照らし虹色に染まる。何故か恐怖はなく、暖かさと安らぎを感じていた。
穴に入ると辺りは一変し明るくなった。
"これはこれは勇者様、お待ち申しておりました"
声の方を振り返ると、そこには髭を生やした爺さんが一人立っていた。
"早速ですが、勇者様。貴方様は男ですか?女ですか?"
「はぁ!?何言ってんだ、このクソジジィ!
どこから見ても男だろうがっ!」
"あいわかり申した。男でございますか……。何分目が良く見えませんで申し訳ございません。次に、ジョブは何になさいますか?"
ん?わかったぞ!俺は新しいゲームを始めた夢を見ているのか。ゲーム好きとは言え夢まで見るとは……。
"勇者様?"
返答を待ちかねた爺さんが催促してきた。
「俺様はいつもアタッカーだ。何があるんだ?」
"アタッカーでしたら……槍使い・魔導師・双剣使いーー"
「双剣!双剣にする!」
"かしこまりました。
次に容姿をこちらからお選びください"
なんと細かい設定なんだ。輪郭から鼻の形眉の形、髪型も色々あり過ぎだ。俺は青目金髪の超イケメンに作り上げた。
"こちらでよろしいですね"
「OK!」
"では最後に勇者様のお名前を教えてください"
「いつも俺は健を使っている」
"けん様でよろしいですね"
「けんじゃない!た・け・る!」
"これは失礼いたしました。ではたける様。登録は以上となります"
チュートリアルが始まるのかな……。そう思っていると、ヒューーードサッ!
「いってぇー!」
砂浜に落とされた。
「おいっ!クソジジィ!なんて事しやがるんだ!」
"私は今まで数多くの勇者様の良きアドバイザーとして務めて参りました。姿は見えませんが、いつでもどんな時でも適切な助言をさせていただきます。これからどうぞよろしくお願いします"
「はぁ、こちらこそ……。って、てめぇ人の話聞いてるのかっ!?」
"それと申し遅れましたが、私共にも名前がございまして、ハレルヤと申します"
そんなの何でもいいわ……。
"そして健様が今いらっしゃる所は『コマンスマンの村』でございます"
それもどうでもいい……。
「っで?何すんの?」
"それは健様が考える事。私目はシステムを教えたり助言をしたりーー"
「いやいや、普通あるでしょ?チュートリアルってのがさ~。それしたりクエスト受けたりしないとゲームは進まないよ?」
"はて……?何のことかは存じませんが"
ダメだ、このクソジジィ!こんなゲーム作ったの誰だよ。リアルならすぐ消してやるわ!