第18話 トレートルとの長い戦い
4人は作業を一旦終え、家に戻り赤魔道士を迎え入れた。
「えー、僕が赤魔道士のホイットですぅ。ま、宜しゅうたのんます〜あ、ホイちゃんって呼んでやぁ!」凄く明るい。
「俺は健です。よろしく」
「はいはーい、たけちゃんやな!」
「おいは豪もす。宜しゅう」
「おいかぁ、なんかかっこええなぁー。豪ちゃん、よろしくっ!」
「私は琴音です、よろしくお願いします」
「ことちゃん!可愛いなぁー、モテるやろっ!悪い男に捕まったらあかんでぇ」
「悪い男の代表だろ」
「ユキちゃん、そんなこと言わんといてぇやぁ。僕はユキちゃん一筋なんやでぇ」
一気にこの家が明るくなった。ホイットは俺には無いものを、いっぱい持っていた。ちょっと羨ましい。
それから数日経ち畑と店が出来上がった。畑は各世帯1つずつ行き渡り、ニーナの父が指導して回った。店は全部で12個、これは売りたい物がある人が、空いている店にいつでも自由に使える。
俺達5人はまた、イノッチに挑んだ。狩り場は傭兵達で賑わっている。
「さぁさぁ、やって参りましたよぉ〜イノちゃんどっからでもおいでやぁ」
盾でもないのにホイットがそんな事を言っている。おかげで緊張がなくなる気がした。
俺と豪は新しい防具に身を包み、気持ちも新たに挑む事が出来る。
猪肉を手にいれるため、レベルを上げ強くなるために何度も何度もイノッチに挑んだ。
ホイットは必ず最初に弱体を数発入れ、MPを適時回復してくれる。4人の時と比べかなり楽に戦闘が出来るようになった。
数日間毎日イノッチを狩り続けると、皆みるみるレベルが上がって行く。俺はスキルラッシュが使えるようになると、素早く倒す事が出来た。
ラッシュは飛び上がり二刀流で交差し、落ちる瞬間に斬るスタイルだった。なかなかコツが掴めなかったが、自分のものにすることが出来るようになっていた。
いよいよ最後の建設、傭兵達の家が出来上がった。20人は寝れる大豪邸だ。傭兵達は歓声を上げ喜んだ。ロンとジョン、住職も来ていた。
「健さん!俺は信じていたよ!俺の目に狂いはなかったって事だな!」
ジョンは満足そうに言った。
その時1人の若い村人が石段をかけ登って来た。
「大変だー、勇者様助けてください!トレートルが、トレートルが、」
息も絶え絶えに若い村人はそう言うと四つん這いに倒れた。
「行くぞっ!」
俺は無我夢中で石段を駆け下り、皆とロン、ジョン、沢山の傭兵達が後に続く。
逃げる村人は石段を登って来ていて、細い石段は人でごった返す。
やっと下に降りた時、トレートルと巨大な召喚獣がいた。東門をぶち壊すほどの大きさで、サイのような顔に大きな牙、ぼこぼこのコブが多数あり二本足で立っている。
俺は怖くて動けない子供を石段まで連れて行き、大声で仲間に言った。
「位置につけ!」
沢山の傭兵達は戸惑いを隠せず、後方に集まっていた。
「戦える者は前に!」
数名が移動してくれた。
そこに装備をし大きな斧を持ったロンも加わった。
「俺の腕はまだまだ鈍っちゃいないぜ!」
ロンは叫んだ。
完全装備をしたジョンも大きな盾を持って加わる。
「盾役は俺に任せろ!」
ジョンは最前列の豪の隣についた。
ヨシュアはローブを来て琴音の横につく。白魔道士だった。
「なんと大層な出迎えだな」
トレートルがそう言うと、召喚獣は火をはいた。皆は一斉に火を避け後方に下がったが、ジョンと豪は動かず盾を前に必死で耐えていた。
「健さん!召喚獣を操るのはあの右にいる魔導師だ。アイツをやっつければ召喚獣は消える!」
ロンは皆にも聞こえるように叫んだ。
トレートルといっても同じ人間、元は夢を追って勇者に付いてきた琴音達と変わりない若者のはず。どうしても殺す事が出来ない、いや、殺してはいけないと思った。
「皆、人には危害を加えるな!召喚獣だけを狙ってくれ!」
俺の言葉に一同がどよめいた。
「健さんらしいな……」ジョンがつぶやく。
「やっぱり無知でおバカな勇者だな。召喚獣は死なない。」
トレートルの1人がそう言い終わると、皆一斉に召喚獣目掛けて攻撃を始めた。
俺はラッシュで目に斬りつけた。目が片方ふさがり、血が流れる。ユキナは必殺技で凍らせた。ロンは大きな斧で何度も何度も足を狙った。その時轟音と共に、召喚獣は真横に倒れた。下敷きになったトレートルもいた。
召喚獣は倒れた間もトレートル達が攻撃を繰り返す。ジョンは余裕でかわすが豪は何度も何度も倒れた。
やがて召喚獣が起き上がり吹雪を吐く。一瞬にしてジョンと豪が凍りつく。
盾を失った俺達にトレートルは容赦なく攻撃してくる。琴音が後方に吹っ飛んだ。すかさずホイットが駆け寄り、ヨシュアが回復した。
元に戻ったジョンと豪は急いで挑発を使った。住職の幸在は石段の所から豪に回復を送り続けてくれていた。