第13話 イノッチとの死闘
薬品店のアレンにネズミの尻尾を渡し、家に戻った。
ユキナはシャワーを浴びくつろいでいる。ポニーテールの髪を下ろした彼女は美しかった。好きになれない奴だったが、それは素直に認める。
「挨拶がまだもした。豪と言いもす」
豪はソファーに寝そべるユキナの前に行き、頭を下げた。琴音も慌てて挨拶に行く。
「琴音です。初心者なので色々教えて下さい」
ユキナは2人を見ず「豪、レベルは上がったか」と尋ねた。
「はい。11になりもした。」
それから3人は交代でシャワーを浴び遅い夕飯にした。
次の朝。サリとの約束猪の肉は今日の夕方までだ。
「おはようございます、勇者様!」
ニーナの声。扉を開けるとまたサンドイッチを持って立っている。幼さの残る顔立ち。鼻が少し上を向いていて、唇なピンク色で小さかった。可愛いと思った。
無言でまたぐいと差し出し走って行った。急いでお礼を叫んだ。
ここの村人達は、皆食料に困っている事を知っている。ニーナはきっと無理をしているに違いない。もしまた来たなら断るつもりだ。
4人で有難くいただき、みんな緊張しながらイノッチと戦う準備をしていた。
東門を目指した。
俺はいつも以上に緊張していた。
「健、レベルは?」
ユキナが聞いた。
「14になった」
「そうか……」
何故か残念そうだった。だが、その理由をユキナに聞かなかった。
イノッチの前に着いた。
「待て。作戦だ」
いつしかユキナはリーダーになっていた。
「琴音、MPを温存するためにHP回復量を考えろ」
「はい」
「健、何としても奴の必殺スキルを阻止しろ」
「分かった」
「それと回復薬はあるか?」
リュックから回復薬を出した。昨日アレンからネズミの尻尾と交換した事で、9個あった。
「琴音に1個あたしに1個健が2個、残りは豪に渡せ」
俺は言われた通りにした。
「豪、回復薬を飲む時は剣をおけ。間違っても盾を下ろすな」
「分かりもした」
イノッチを倒した事があるであろうユキナの顔は、指示を出しながらもこわばっていた。その表情でイノッチがどれほど危険な相手か分かった。
「あたしが魔法で呼び寄せる。近くに来たら、豪、挑発を直ぐ唱えろ。みんなは位置に付け。琴音、間違っても前には絶対に出るな」
2人共イノッチを見つめながら、大きく頷いた。
「行くぞ!」
そういうと1番近くにいるイノッチに軽く魔法を放った。ドシドシと凄いスピードで走って来る。間近で見るイノッチは思った以上にでかかった。
直ぐに豪が挑発する。向きを変えイノッチが豪に体当たりした。豪は盾でそれを受け必死に耐える。
イノッチは後ずさりして、反動をつけるかのように前足を蹴る。その時ユキナの魔法攻撃で炎に包まれた。炎が消えるとイノッチは頭を振った。そこにすかさず連撃を浴びせる。
一瞬よろめいた。攻撃をくらいイノッチは怒った。そこから更に後ろに下がり、豪目がけて突進してきた。豪はよろめいた。それでも右手の剣で首を刺している。
「豪、無理するな」
ユキナは低い声でそう言った。
次も後ろに下がるはず。俺はそれを待って普通攻撃を浴びせる。バランスが悪いのか横に倒れた。
「琴音、何をしている豪を回復しろ」
ユキナが叫んだ。
「すいません、MP切れです。」
「切れたなら豪に回復薬の指示を出せ!豪今のうちに回復薬を!」
ユキナの声が怒号に変わる。
イノッチはいつの間にか立ち上がり、後ろ足を蹴った。凄いスピードだ。
「来るぞ!」
ユキナは魔法攻撃を浴びせる。一瞬にしてイノッチが凍った。
「今のが必殺スキルの前だ。」
ユキナは俺に教えてくれた。
イノッチは氷から解き放たれた。後ろに下がると思っていた俺の予想に反して、大きなクルリと回った牙を豪に突き立て、豪は空中に持ち上がる。首を思い切り振り回し、豪はドサッと地面に叩きつけられた。
豪はよろけながら、必死に立ち上がり、盾を構えた。剣を持つ右手から血が溢れだし、だらんと垂れたままだった。左の太腿からも血が出ていた。
なおもイノッチはトドメを刺すかのように、後方に下がり後ろ足を蹴った。必殺スキルだ。俺は夢中で前に突っ込み連撃を浴びせる。ドサッと倒れた所をユキナが必殺スキル雷を落とした。イノッチは横になったまま痺れている。
「豪さん回復薬をお願いします!」
琴音が叫んだが右手が使えない豪は盾を置き飲んだ。
イノッチはようやく起き上がる。また後ろ足を蹴った。その時ユキナはあろう事か、豪よりも前に出た。イノッチは向きを変えユキナに向かった。豪はヨロヨロと前に歩き出す。
「来るなっ!」
ユキナが叫ぶ。それでも豪は歩みを止めず挑発する。
「バカか、お前はっ!」
ユキナは豪に叫んだ。
イノッチは向きを変え豪に向かう。俺は左の剣でイノッチの行く手を遮り、右手で腹を刺した。それでもズルズルと前に進む。ユキナが必殺スキルを使った。その後直ぐに連撃を浴びせる。
ギューーーーーーーッ!!!
イノッチは大声で呻き、腹這いに倒れた。
それを見た豪もドサッと倒れた。




