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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第三章 魔人の復活と王都への旅編
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第四十四話 王都観光

連休限定 、一日二話投稿も今日で終了です。


読んでくださった方、ありがとうございます。


そしてブクマ50人突破しました。こちらもありがとうございます。


さて本日一話目です。


「お兄様、まだ今日は時間、ありますよね?」

「ああ、早く着きすぎたからな。王立魔術学院の入学手続き関係は二、三日後でも大丈夫だろうしな」

「では……フィールダー家の王都屋敷についたら、そこから王都観光をしませんか」

「あっ、私もアレクスさんと行きたいです」

「私は眠いから屋敷で寝てる」


さて王都に入った馬車は、王都の中心部外縁にある子爵家の王都屋敷に向かっていた。本来の旅程ではもう十日ほど後に到着の予定だった訳で、俺とリリアの王立魔術学院への入学まで間が開いてしまった。ということで、俺も王都を歩くというのは賛成だ。


「でしたら王都の観光名所なんかをお教えしましょうか」

「いや、特に何も考えずぶらぶらしたいから俺はいいよ」

「私もそれで行きましょうか。お兄様がいれば護衛もいりませんし、迷っても転移で一瞬で帰ってこられますから」

「でもリリアは一人でも大丈夫だとは思うけどな」

「うっ、確かにそうですけど」

「フフッ、まあ妹とのんびり王都を歩いて来ようかな」


リリアとの関係性もこの二週間ですっかり安定したのは良かった。ここまで来てギクシャクしながら学校に行くのはさすがに辛いからな……


「私たちは、そういうの聞いていこうか」

「そうだな。クライスと違って、迷ったら大変だし」

「分かりました。では到着したら王都屋敷の者に頼んでおきます」

「ありがとうございます。フィーリアさん」

「いえ、私は頼むだけですから」


そのまま馬車は子爵家の屋敷へと向かって行った。






「お兄様、こんな感じでよろしいですかね」

「ああ、いいと思うよ。じゃあ行こうか…<召喚(サモン) 不可視の妖精(インビジブルフェアリー)><座標転移トランスポート>」


王都屋敷にたどり着いた俺たちは、屋敷の使用人たちからの熱烈な歓迎を受けた。それをサラッと受け流した俺とリリアは、旅の間中着ていたローブを脱いで風呂に入った。その後、平民風の服に着替えて家の玄関に集まってから転移魔法で街へ向かうことにした。

まあ、俺の服はローブの下のいつも通りの格好だったし、リリアもシンプルな白のワンピース姿だったのであまり変化はないけど。


「到着」

「で、お兄様。ここはどこなんですか」

「後ろ、見てごらん」

「さっき通った門ですね」

「そういうこと。後、今の俺たちは周りから見えてないからな」

「転移で現れる瞬間を見られるのはまずいですからね」

「ああ。じゃあ、人にぶつかられる前に端っこに移動して術式を解除しようか」

「了解です」


そのままそっと道の端に移動して、人の視線が切れたタイミングで俺は魔法を解除した。


「じゃあ、行こうか」

「はい。今日はお兄様に支払いを全て任せて、買い物をしまくりましょうか」

「俺の財布も考えてよ」

「魔石と竜の素材に自作の貴金属のインゴットで<変異空間イリュージョンルーム>と<亜空間倉庫ディメンジョンボックス>をいっぱいにしているお兄様の懐具合なんて気にする必要ありますか」

「うっ、まあないだろうけど。……限度は考えてくれよ」

「分かっていますよ」


そう言いながら、俺達は街の大通りに向かってゆっくりと歩き始めた。


「まずは、ここですかね」

「えっ……ここって結構高い服の店じゃ……」

「大丈夫ですよ。それでも貴族御用達の店よりは遥かに安いですから。……さあ、大量購入していきましょう」

「天使みたいな笑顔で、えげつないことを言うな」


そのまま店に入っていくリリアを追いかけていたとき、俺は失敗したと気づいた。


「ねえ、ここって男性禁制とかじゃないよね」

「当たり前ですよ」

「それにしては男性客が全く見当たらないんだが……」

「女性の衣服なら上から下まですべて揃えられるような店に、普通は男の人はいないと思いますけど」

「いや……分かってて言ってるから。その代わり置いていかないでくれよ」


まあ、店の中には男性客が全くいなかった。いや、どう見ても婚約者同士か夫婦みたいなのは見かけたけど……男一人でこんな店、うろうろしてたら不審者確定だしな。きちんとリリアについていこう。まあ男性店員はいるので、最悪はそう言い逃れればいいけど。


「お兄様。せっかくですから一揃い、合わせてもらいましょうか」

「本気で言ってるのか」

「お客様、何かお探しでしょうか」

「ああ、はい。……お金に糸目はつけませんので、私にぴったり合うコーディネートをお願いします」

「リリア、ちょっ……それはまず…」

「……お客様。ご注文はそれでよろしかったでしょうか」

「はい、ものすごく可愛くしてくださいね」

「待って、店員さん。話を聞いて……」

「ええ、かしこまりました……少々お待ちを」


そうして去っていった店員さんの方から、「上客だ。絶対に買わせろ。常連以外は無視して構わん」と怒号が聞こえてきた。……ヤバイ予感がする。


「お兄様。試着したら似合うか見てくださいね」

「ああ……リリア、覚えてなよ」

「ええ、覚えておきますよ。お兄様が私に手を出しそうになったら……既成事実を作り上げてしまいますから」

「くっ……なんて卑怯な」

「そういうお兄様こそ、私の恋心を弄んだゲス男だと思いますけど」

「グッ…言い返せない」


駄目だ。もう俺にリリアに勝てる条件は何も残されていない気がする。って、そんなことしている間になんか大量の服を持った店員たちが周りに整列してる。


「お客様。試着室に移動していただいてよろしいでしょうか」

「ああ、はい」

「……もう勝手にしてくれ」

「どうぞ、こちらです」

「あっ、お兄様。……覗かないでくださいね」

「そんなことするわけないだろうが」


店員とともに、試着室に入ったリリアは何回着替えたことだろうか。たぶん、通算で二十回は着替えたんじゃなかろうか。


「お兄様、これとこれで悩んでるんですが……」

「うーん、黒髪に合うのは黒系統より水色だろ。そっちがいいんじゃないか」

「……じゃあ、そうします」

「ではこのセット全てお買い上げと言うことで」

「はい。あっ、元の服に着替えるので全て、包みなおしていただけますか」

「かしこまりました。では着替えている間にお会計を済ませておきましょうか」

「お願いします。じゃあ、お兄様にお任せしますね」

「はいはい」


そうして、俺はレジへと案内された。


「ではコーディネート、全てまとめて三万七千六百アドルです」

「へっ……そんなに高いんですか」

「はい。いやあ、この店では滅多に出ない高額会計ですよ。大商家の方でも、なかなかこれだけの額は出ませんよ」

「う、内訳は……」

「ワンピースドレスが一番高い品で、一万五千アドルです。ついで、上にはおるカーディガンが一万アドル。後はその他のアクセサリーなどでさっきの額ですね。ちなみに今回の服類が高いのは、魔物素材や魔石を使った品を集めたからです」

「……まさか」

「正直に申しましょう。絶対に売れると思ったので、懇意にしている服飾工房から譲っていただきました。……もちろん、買わないとはおっしゃいませんよね」

「うっ……」


日本円にして三十七万円か。痛い出費な気がするが、懐が痛まないのが不思議だ。……超越級魔術師って稼げるもんなんだなあ、本当に。まあ、仕方ない。現金価値になるものは死ぬほどあるから、現物で払うか。


「すまないんだけど……今、現金の持ち合わせが少なくてね……現物でもいいかな」

「物によりますが…構いませんよ」

「これ、なんだが」

「そ、それは赤竜の毛皮ですか。……かなり状態がいいですね」


俺は買い物のために珍しく持ち歩いていたバッグの中に<亜空間倉庫ディメンジョンボックス>の入り口を開き、赤竜の毛皮を取り出した。


「これでいくらぐらいになるかな」

「そ、そうですね。……その一部分だけで五万アドル程度にはなるかと……」

「そうか。じゃあ、手数料代わりにおつりはいらないから」

「はっ、はい。……あなた様方はいったい」

「それは聞かないでくれよ」

「ええ、かしこまりました」


その後、服を入れた袋を抱えたリリアと店を出るまで、店員たちはそろって見送ってくれた。……うん、さすがにやりすぎたな。


「お兄様、一体何をされたんですか。サービスですって言われて、もう一セットのアクセサリーをつけられたんですけど……」

「たぶん高い買い物したからな。これからもお得い様になってくださいってことだろ」

「そうですか……さて、お腹もすきましたし……どこかで昼食でもいかがですか」

「じゃあ、せっかくの王都観光だし……裏通りの店でも探ってみるか」

「なんでそういう結論に至るんですか」

「冗談だよ。さてと、じゃあいい匂いがした店に入ろうかな」

「屋台はダメですか?」

「待たされすぎて、ものすごく空腹だから却下」


だって二時間は待たされたからな。……詩帆は基本的に買い物に時間かけるようなタイプじゃなかったし。ただそれでもセンスが抜群なのが謎なんだよなあ……

俺があまりに服に無頓着だからって俺の服も詩帆に任せていたけど、そっちの選定もうまかったからなあ……


「お兄様、いつか女性に嫌われますよ」

「そうか……まあ、そうなる気はする」

「分かっているのならいいです……あっ、あの店にしましょう」

「どの店だ……ふう、今度は普通の喫茶店か」

「ええ、あまり高い料理のフルコースとか出てきても、堅苦しいだけですし」

「なるほどね」


そのまま店に入ると、空いていたようですぐに注文を聞いてもらえた。俺はメニューの中から分厚いステーキセットを注文し、リリアはしばらく悩んでから、サラダとムニエルを注文した。


「お兄様。そんなに食べられるんですか」

「余裕だよ。リリアこそ、そんなに少しで大丈夫か」

「私は小食ですから」

「そうだったな」


しかしこの世界での料理はステーキや焼き魚とかの単純料理が一番だな。味付けがシンプルな方が元の食材の生育環境がいいから、食材本来のうまみが味わえるし……というか、この世界の調味料が少なすぎて味付けがシンプルすぎるんだよな。

うーん、詩帆と再会して、魔神を倒したら料理革命でもしようかな。


「うーん、でも作るとしたらなにからやろうかな」

「お兄様、独り言が怖いですよ」

「ああ、悪い」

「後、私は食べ終わってますから。さっさと食べ終えてください」

「了解」


料理革命計画をそっと胸の内に秘めて、俺はステーキをかっこんだ。リリアにものすごく睨まれたが、別に公式の場ではこんなことはしないから問題ないと思うんだけどな……






「じゃあ、次は俺の好きな店に行ってもいいか」

「書店ですか、それとも魔術関連の店ですか」

「さすがにわかるか……ああ、魔術用品の品ぞろえが多い店があるらしくてな」

「お兄様らしいですね。……でも、私も気になりますね」

「だろう。じゃあ行こうか」


喫茶店を出て、再び大通りを進んだ俺たちは魔術関連の店が多いエリアへと向かっていた。


「いやあ、楽しみだなあ」

「お兄様、はしゃぎすぎです」

「そうか……」

「はい」


魔術関連の新情報に出会えると、はしゃいでいるのをリリアにたしなめられてしまった……さすがに落ち着こうか。


「で、どの店に入ろうかな」

「あの店とか人気がありそうですよ」

「いや、人気がなさそうな店程、面白いものが転がっていそうだろ」

「はあ。まあ、お兄様がいればたいていのことは問題なさそうですし……行ってみましょうか」

「ああ。じゃあ行こうかな」


そのまま奥の方にある薄汚れた看板に「魔術堂」と書かれた店内に俺達は入った。

疑問・反論・誤字、脱字報告等は感想欄にお願いします。


次話投稿は一時間後です。


2017年10月19日 通常修正

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