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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第三章 魔人の復活と王都への旅編
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第三十六話 道中での厄災との再会

読んでくださる方、ありがとうございます。


昨日の投稿時間遅れのお詫びとして、今日は二本連続投稿します。


一本目です。


次話は十分後に投稿します。


2017年10月18日 細部改稿


「なるほど、そういうことでしたか。……召喚魔法、便利ですね。それに妖精もかわいいですし」

「そうだね。じゃあ、適性がありそうなら講師は紹介するよ。と言っても一人しかいないけど」

「えっ、それって賢者セーラ様ですよね」

「もちろん」


二時間後、馬車は順調に領境の森の中を進んでいた。その二時間の間中、三人に俺はひたすら師匠のところでの生活についてや、召喚魔法について聞かれ続けていた。


「私が会いに行ってもいいんでしょうか」

「もちろん。たぶん歓迎してくれると思うよ」

「そうですか……じゃあ、楽しみにしておきます」

「私たちは?」

「私も行きたいです」

「うーん、まあ師匠がいいというのならいいけどさあ……魔法好き以外にはとことん何もないただの雪山の小屋だぞ」

「うーん、それでも賢者様には会いたいですかね」

「たぶん、呼んだらすぐに来る気がする……呼びたくはないけど」

「なんで?」


リサが不思議そうに訊いて来たが、答えは単純だ。


「あの人も、俺を教えてた時にはそうとう魔力隠蔽にも気を配ってたらしいんだよ。ただ、今呼んだら……」

「どうなるんですか」

「やあ、クライス君久しぶり、と同時にあいさつ代わりの上級魔法が飛んでくるだろうな」

「上級魔法って……」

「普通の人から見たら異常だろうけど……師匠の家では夫婦喧嘩で上級魔法が飛び交う家だからな。感覚がマヒしてるんだろうよ」

「でも、お互いに無事でも周りの人が……」

「それぐらいは判断して撃ってくるから質が悪いんだよ」


もっとも師匠クラスの攻撃魔法の使い手なら、同じ魔法でも集束・拡散を利用して攻撃範囲はどうとでもいじれるので、周りに人がいても正確に俺だけ狙い撃ちにしてくるだろうが……


「おい、クライス。俺も話に混ぜろよ」

「アレクス……お前、御者役は」

「フィーリアさんが変わってくれるって……多分あの人、俺よりうまいし」

「そうか……じゃあ、フィーリアさんお願いします」

「はい、かしこまりました」


と、師匠の愚痴を言っていると、前方の御者席からアレクスが入ってきた。にしてもフィーリアさんって御者までできたんだな。


「それで、何を聞きたいんだ」

「セーラ様ってどんな人だったんだ」

「……アレクスさん」

「下心丸出し……って、マリーがキレてる……」

「えっ、リサさん。私は全然怒っていませんよ」

「え、笑顔が引き攣ってる」

「お、落ち着け。まあ、七賢者の人柄については話してなかったからな。ちょ、丁度いいな」


早速下心丸出しの発言をしたアレクスがマリーに睨まれているが、ここは場の空気を変えるため、そのまま答えようか。


「ええっとなあ……身長は俺より少し低いぐらいで、明るい銀髪のロング。顏は清楚系美女」

「ほうほう……で、胸のサイ…グボッ」

「一回、静かにして。アレクスさん」


再び下心丸出しの質問を婚約者の前でしたアレクスが女性陣三人に殴り飛ばされたが……見なかったことにしよう。


「で、普段から白竜の毛皮で作ったロングローブを着てたな」

「お綺麗そうな人ですね。それでどんな方だったんですか」

「普段は穏やかな人だったけど、師匠相手には容赦しない人だったな。後、家事全般がハイスペックで子供好き」

「そ、そんな完璧な人がいるわけが……」

「リサ、驚き方が激しすぎ」

「もちろん冗談」

「セーラ様、きっと全力でマーリス様を愛しておられるのですね…そういう恋愛。憧れます」

「そうだな」


俺が愛する彼女も、俺だけに素を見せてくれた。それが全身で愛を表していたというのなら……俺は、この世界に来てから……彼女を裏切り続けているんだろうな……


「お兄様、どうかしましたか」

「いや、なんでもないよ」

「そうですか、じゃあ次はクライス君のお師匠さ……キャッ」

「…<質量低減ダウンバースト> <風霊庭園ウィンドガーデン>」


突然、馬車が大きく揺れた。俺は咄嗟にフィーリアさんを含めた馬車に乗っている全員にかかる重力を低減させて、揺れで浮いたところを風魔法のフィールドで空中にそのまま体を浮遊させた。

やがて、馬車が急ブレーキをかけて止まった。


「一体どうしたんだ」

「すみません。それが前方の道が塞がっていまして……」

「んっ、崖でも崩れたか。それとも倒木か」

「それにしては太い気がしますが……まあ、護衛の確認を待ちましょう」

「そうだな」


さて、かなり遠くで馬車を止めたらしく、その道を塞いでいるものはよく見えない。おっ、あれは確か護衛のリーダーのウェグス、だったかな。で、あの物体の正体は何なんだろうか……魔力で探ってみるか……っ、まずいあれは……生物だ。


「今すぐそこから戻って来い」

「えっ、どうしましたクライス様……」

「ちっ、気づいてないか…<転移テレポート>」

「えっ、クライス様なんで」

「後ろを見ろ」

「えっ、一体何が……うおう」

「…<絶氷要塞ブリザードフォートレス>」


その道を塞いでいたものは。物ではなく生物だった。その生物は近くにいた俺達を喰らおうと、巨大な口を開けて噛みついて来た。咄嗟に俺は正面に巨大な氷魔法の要塞を張って凌ぐ。


「せ、赤竜……お、終わりだ」

「落ち着け。俺がいるから……いったん引くぞ…<転移テレポート>」


そう、そこにいたのは俺の初戦の相手、赤竜だった。

俺はひとまず恐慌している兵士と転移で後方に飛び、距離を稼いだ。


「お兄様。ご無事ですか」

「もちろん。あっ、この人を頼む」

「分かりました……お兄様、一人で大丈夫ですよね」

「ああ、もちろん。たかが赤竜・・・・・だからな。じゃあ、この場の守護は任せた」

「はい…<光子障壁フォトンシールド>」

「じゃあ行くか…<能力値限界突破ステータスオーバーロード> <空中歩行ウィンドウォーク> <重力刃グラビティブレード>」


俺はリリアが結界の魔法を張ったのを確認すると、自身に身体能力強化をかけた。そのまま魔法で空中を蹴って一瞬で赤竜の正面に移動する。そこに向かって赤竜がブレスを放ってきたが、生憎と俺には無意味だ……


「…<魔力喰らいマジックイーター>」


当然、ブレスのような魔法攻撃は魔力に還元させてもらい、そのままブレスを影にして、相手の背中側に回り込む。


「さて、五年前は通らなかったが……今は余裕だな…<氷結樹アイシクルスパイク>」


後方から身体能力強化を施した状態の全力で杖を赤竜の背骨の真上から心臓に向けて振り下ろす。斥力を纏わせている杖はいとも簡単に背骨を突き破り、とどめに氷魔法第十階位<氷結樹アイシクルスパイク>によって発生した氷の棘が、体内から赤竜をズタズタにした。

こうして断末魔の悲鳴すら上げることなく、赤竜は即死した。


「よいしょ…っと。よし抜けた。この魔法、血まで凍り付くから抜くの大変なんだよな。まあ、血が飛び散らないからそこは好都合なんだけど」

「クライス様、ご無事でしょうか」

「ああ、もちろん。ああ、少し離れていてくれるかな」

「はい、かしこまりました」

「うん、じゃあいこうか…<亜空間倉庫ディメンジョンボックス>」


俺が杖の血をぬぐおうとしたタイミングで、護衛の兵士三人が追い付いてきたので、俺は先に赤竜をひとまずしまい込んだ。


「あんなに巨大な赤竜が一瞬で」

「まあ、空間の箱をかぶせているようなもんだからな」

「そうですか……」

「まあ、ともかく完全に絶命してたようだな。さて、杖の整備は馬車内でもできるし……暗くなる前に次の村辺りまでは行きたいな。俺がいるから野営もそんなに危険ではないんだが」

「まあ、危険はなるべく回避しましょう」

「そうだな。……じゃあ、急ごうか」


そう言って馬車に戻ると、リリアはキラキラした目で、他の三人はあきれた目をして俺を見てきた。


「お兄様……素晴らしかったです」

「なんか、五年前もすごいと思ったけど……化け物度合いが増してるな……」

「本当ですね……赤竜って本当に天災レベルの魔物なんですか」

「その通り。おかしいのはクライス君だから」

「おい、三人とも。何で被害ゼロで討伐したのに、何で罵倒されなきゃならないんだよ」

「仕方ない。だって世界基準の強さの概念が崩壊しそうになってるから」

「うっ……くそっ。五年前はかなり加減してたのに……本当に師匠たちに毒されすぎてる」


五年前と違って隠しきる必要性もないのと、師匠たちのもとでは隠す必要性もなかったので、かなりそういった思考が弱くなっている気がする。……王都に行くまでに改善しておかないとな……正直言って、赤竜程度なら模造魔法だけで何とかなるし……


「ところで、何でこんなところに赤竜が」

「確かに。それは俺も気にしてたんだ」

「言われてみればそうですね」


と、ふとアレクスが言った疑問だが確かに不思議だ。五年前の時は縄張り争いに負けて、東の山脈からやって来たんだったが……そもそも赤竜の様な生態系の頂点にいる生物が、そう簡単に出会うというのもあり得ないんだが……


「ああ、その理由でしたら私は把握しておりますよ」

「フィーリアさんが……なぜ」

「実は東方で赤竜の生態系を調査していた学者の一団がございまして」

「ああ、それで」

「縄張り争いによって、古い縄張りの主クラスの大物がその区画を抜け出したという情報をこの一団が、護衛の冒険者経由でその情報を周辺各国に伝達済みだったんですよ」

「なるほど、冒険者ならではだな」


さて、この世界にある冒険者ギルドというのは魔物を狩るハンターと、軍へ戦力を提供する傭兵たちの相互公助ギルドである。その活動領域は大陸全土に及び、その活動には各国ですら口出しはできないほどの巨大な組織である。

ギルド員たちは、能力に応じてSからFの七つのランクを振られており、そのランク付けがそのままモンスターの危険度に当てはまっている。

またこのギルドでは魔物を含めた野生動物の解体、買い取り業務も行っているため一般の人も良く利用する組織だ。さらにその上で全世界に広がるネットワークを利用しての情報収集能力も高く、とにかく世界中で大きな影響力を持つ組織だ。


「んっ、でも何で俺には知らせてくれなかったんだ」

「距離的に進路上にいる可能性が低かったのと、最悪クライス様ならどうにかなるだろうから、無駄な時間はとらなくていいだろうと……ガーディア様が」

「なるほど……俺って赤竜に縁があるのかもな」

「えっ、そうじゃなかったのか」

「うるさいわ、アレクス」


ともかくこれで赤竜出現の謎も解けたな。あっ、でもまだ出発できないな。


「すみません。フィーリアさん」

「はい、なんでしょうか」

「僕が少し先行しますので、その後を馬車でついて来てもらっていいですか」

「いいですけど……なぜですか」

「いや……さっきの魔術行使で……地面もズタズタになっていまして……それを直さないと、後々まずいですから」

「分かりました。では一人で向かわれますか」

「ええ……いや、リリアにも手伝ってもらいましょうか」

「分かりました。お手伝いします」


本当は俺一人でやろうとしていたのだが、リリアが私もやりたいですと目で訴えかけてきたので、手伝ってもらうことにしよう……となると、どう直すかな。


「じゃあ、まずは周りに散ってる砂埃を中央に風魔法で集めてくれるかな」

「はい…<気流操作ウィンドコントロール> こんな感じでしょうか」

「さすがのコントロールだね。うん、それでいいよ。じゃあ俺は……<錬金アルケミス>」

「あっ、土が砂状になっていますね」

「ああ、これを<氷結樹アイシクルスパイク>で開けてしまった穴に流し込んで……後はこれを濡らすから……」

「あっ、私がやります…<濃霧生成ディープミスト>」

「なるほど霧状にして染み込ませるのか……さすがだね」

「ありがとうございます」

「じゃあ最後に踏み固めて終わろうか…<大地神の大槌ストーンハンマー>」


さて、最後に森の土から生成した<大地神の大槌ストーンハンマー>を道路の上に振り下ろして、固まったら完成だ。にしても本当にリリアの魔法のセンスは高い。ひょっとしたら俺以上かもしれないな…


「よし、これでいいね」

「はい。いいとおもいます」

「じゃあ馬車も来たし…行こうか」

「はい」


やがて馬車に乗り込んだ俺たちは、夕闇の森の中を進んでいった。

面白かったらブクマ等お願いします。


アクセス数とブクマの増加が執筆意欲に結び付きます。

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