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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第二章 魔法修行編
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第二十七話 物理学者の超越級魔術師

読んでくださる方、ありがとうございます。


6000PV突破しました。ありがとうございます。


修行編と番外編までは連続更新頑張ります。


追記:即日で誤字・脱字を修正しました。


「ダメだなあ……」

「んっ、どうしたのクライス君。ため息なんかついて」

「いや、世界の理を膨大な魔力を使って、メビウスさんは書きかえたじゃないですか」

「そうね」

「それでイメージ力によって魔法の効果を増大できる超越級魔法なら、理論理解ができているものなら疑似的に一定範囲の空間の理をゆがめられないかなあ、と」

「また無駄に高度な事をしようとするわねえ。まあ、協力が必要だったら言ってね。役に立つかどうかわからないけどアドバイスはするわ」

「ありがとうございます、セーラさん」


師匠の家に来てから早くも一年少々が過ぎた。その間に一通りの第九階位までの術をひとまず行使できるようになった。それに加えて師匠の超越級攻撃魔術にセーラさんの召喚魔術、さらにその他の超越級魔術もある程度は使えるようになった。

まあ、超越級魔法は本当にただ使えるようになっただけなので、実戦で使うには全然、練度が足りないけど。





さて、そこまで習得した俺はある日、師匠に超越級……というか新しい魔法の使い方を教えてもらった。一応これまでにも複数の既存魔法を組み合わせる簡易的な新魔法なら試作していたのだが、新規に魔法を作るとなると少し普段の魔法と勝手が違うらしい。


「さてクライス君、一応この世界の魔法原理は一通り把握しているね」

「はい、してますけど」

「じゃあ、おさらいだ。まずはこの世界の構造から。あっ、幻影魔法使ってね」

「はいはい…<映写プロジェクション>」


そう言いながら俺は幻影魔法によって映し出したスクリーンに巨大な立方体を展開した。


「まず、世界の形なんか分かりませんので、この立方体を全ての次元の詰まった「総世界」とでもすると……」


そのまま今度はその箱の中に複数のサイズの違う球体を浮かべ、満遍なく並べていく。そしてその隙間に紫色の光をともした。


「で、この「総世界」の中に複数の世界……というか次元が存在します。その次元一つ一つを球体として、その球体の動きを安定化させているのが魔力空間、つまりそこに詰まっている高密度のエネルギー魔力と魔法情報あるいは量子データ……ということでいいですか」

「その説明でいいよ。じゃあ次はなぜ魔法が使える世界使えない世界があるのか」

「次元の壁の厚さの差です。どの世界も魂を存在させるのに微量な魔力がいることは絶対ですが、壁の厚さによっては魔法が使えるほど壁が薄くないと考えられます」

「正解」

「後は師匠たちが魔法を使いやすくしたせいで、人に認知されるほど魔法が広まっただけって可能性もありますけどね」


要は俺たちの世界にも魔法使いが実はいたかもしれないという説だ。俺的には夢があるし、確率論的に後、魔法のある別世界の存在を知っているので半ば確信している説であったりもする。


「はは、まあそれもあるかもしれないねえ。じゃあ次は魔法情報と魔力の存在について」

「大雑把ですね。……自分の前世の研究成果を踏まえると、魔法情報は膨大なエネルギーを持った魔力が各次元の壁に触れることによって、その世界の情報を上書きしたものを巻き込んでいき、それが微細な形を成したもの…ですかねえ」

「そう、だからこそ魔力を操れる魔術師は魔力空間から任意の情報を引き込めるわけなんだが……そのプロセスについて」

「……また面倒くさい命題ですねえ。まあ理解しとくのは必要でしょうけど」


そうして俺は宙に浮かぶ映像上から立方体を消し去ると、新たに人型を配置し、その上に透明な壁、更にその上に紫色の靄といくつかの文字を展開した。


「まず人は身体が存在している三次元上以外に、微細な魔力によって作られた精神、あるいは魂と呼ばれるものを有する別次元の体があります。そしてその別次元の体に有するエネルギーが魔力です」


そう言いながら、人型を少しずらしてもう一体配置して、その中を紫色の靄でいっぱいにした。さらにその周りにもうっすらと紫色の靄で覆う。


「一つ一つの世界は複数の次元を持っており、その世界の周りに魔力空間があるため、その世界の中の環境にはどの次元にも平等な量の魔力が広がっています。そして人は自身の精神体が存在する次元上に持っている自身の魔力によって外側の魔力空間に干渉することができます」

「そう。ただし外側の空間に干渉するためには最低でも上級並みの魔力が必要だ」

「そこで師匠たちが、魔力空間に広がる情報を世界の壁の内側に張り付けることによって、少ない魔力であっても魔法が発動できるようにしたと」

「そういうことだね。じゃあプロセスの続きを」

「はい」


そうして今度は幻影を少し変える。そうして俺は続きを語りだした。


「魔法情報は世界を構成している理同様、それ一つを核としてその現象を再現できます。超越級魔術師は魔力空間から自身のイメージに沿った情報を世界の中にコピーして引き込み、それを核として自身の魔力と環境魔力、最後に自身のイメージで細かい修正を加えて魔法をこの世界に引き起こします……これでどうですか」

「ああ、おつかれ」

「はい、クライス君解説お疲れ様。これ飲んで」

「あっ、いただきます」


セーラさんが出してくれたお茶を飲みながら幻影魔法を解除して、一息ついたタイミングで師匠が超越級魔法の作り方を話し始めた。


「うん、クライス君。そこまで理解できてるならほとんど言えることはないんだが…」

「まあ、この二年で叩き込まれましたからね。でもその言い方だと、後少し何かを足したら超越級魔法を製作できるってことですか」

「ああ。実際に魔法運用する際に使用する魔法情報は直接、外の空間から引き込むには使う魔力も制御力も膨大なものが必要だ」

「そうですね。だから魔法情報をコピーしたものを空間の内側の壁に貼り付けて、模造魔法を作ったんでしたよね」

「まあ超越級魔法の使い方もそれとほぼ同じなんだよ」


そう言いながら師匠が魔法を唱えた。


「…<風霊庭園ウィンドガーデン>」

「これも風の超越級魔法でしたよね。僕も一応使えますけど」

「その上で訊こう。そのときに模造魔法との使用感の違いはあるかい」

「そういえば……特には感じませんね」

「そうなんだよ。超越級魔法も初めて作るときはともかく、二回目以降は引き寄せた魔法情報のコピーが世界の壁の内側に残るんだよ」

「……そういえば、今自分で言いましたね。魔法行使に使うのは魔法情報そのものではなく、そのコピーだって」

「さて、そこまで言ったら後、やるべきことは分かるね」

「ええ、まずは一度でも情報を引き寄せて、魔法を使うことですよね。じゃあ、さっそく……」




そうして再び時は数日後に戻って、俺は合成魔法 仮称「物理魔法」の修練を行っていた。


「それで、どういう魔法を作ろうとしてるの」

「いや、せっかくなので他の魔法等を踏まえて十二階位の魔法を作ろうと思って、名称と効果のリストは作ったんです」

「なるほどね。成功してるのは第一階位の<超電磁砲レールガン>だけね」

「ええ、これはほとんど既存の魔法を合成しただけでも作れたんですが、威力をいじったり、射出速度を速めたりするために超越級にしてみました」

「ふーん。ねえ、せっかくだからやってみてよ」

「いいですけど……せっかくですから的を用意していただけませんか」

「もちろんいいわよ。…<召喚サモン 守護大亀ガーディアン・タートル 絶対防壁アブソリュートシールド>」


その言葉と同時に俺たちの正面に巨大な青い盾が出現した。


「分かってるとは思うけど、この盾は魔法の威力を吸収して反射するから……どれだけ強く撃っても大丈夫よ」

「では遠慮なくいきますよ…<超電磁砲レールガン>」


この魔法ではまず、七賢者のジェニスさんが作った超越級土魔法<錬金アルケミス>の効力で周辺の土を球形に形成した後でその材質をタングステンへと変化させる。そのままその金属球と盾を結ぶ直線状に雷魔法<電子光波領域プラズマフィールド>を利用した電磁力を利用したレールを形成する。


「じゃあ、行きますよ」

「良いわよ」


最後に金属球を押さえ込んでいた逆方向からの電磁力を解除した。瞬間数千億ボルトの電圧によって形成されたレールは音速の数倍の速さで金属球を盾に叩き込んだ。その際にセーラさんが本気でと言っていたので、風魔法によって加速を行い、ついでにレール周辺を真空にした。


瞬間、膨大な魔力と運動エネルギーによって周囲数十メートルが吹き飛んだ。


「…<転移テレポート>」

「クライス君。な、何よあれ。第一階位魔術の威力じゃないわよ」

「ですよねえ……まあ、それ以上の位階の魔術は威力というか、その使用に際する効果がとてつもないので」

「……もう一回、さっきのリストみせてくれるかしら」

「はい、どうぞ」


リストを見だしたセーラさんの顔はさっきとは裏腹にどんどん青ざめていった。


「本気でこの魔法を作る気なの」

「ええ。理論上作れるのは確かみたいですからね。あっ、心配しなくても直接攻撃系統はあれぐらいですから」

「はあ。……ねえ、あの人もこのリスト見たのよね」

「ええ、見てましたよ」

「……なんで許可したのかしら」

「面白そうだからに決まっているじゃないか」

「あっ、師匠お帰りなさい」


俺の魔法の危険性に対してセーラさんが頭を抱えていると、そのタイミングで師匠が帰ってきた。


「ねえあなた。本当にあの魔法を許可する気なの」

「できることなら、彼の作り出す魔法の新たなる世界を見てみたいからね」

「……そうは言っても」

「大丈夫だよ。彼が道を誤ったときは私が差し違えてでも止めるから」

「……それ、本人の前で言いますか」

「まあ、そうよね。クライス君なら間違えないか」

「そう信じておいてくれよ。君と重要意見が食い違うのは……耐えきれないからな」

「あなた……」


そのまま師匠とセーラさんが抱き合ったタイミングで、無性にイラっときた俺は、なぜか魔法のアイデアが思いついてしまった。


「前世の俺と詩帆にイラついている水輝君の気持ちが分かった気がするなあ……。んっ、前世……実験……これで重力や圧力関係の魔法はいけそうだな。いや、そういえばさっき使っていた<錬金アルケミス>の応用であれもいけるし……」

「ねえ、マーリス。……この後、ねっ」

「分かってるよセーラ。この後、なっ」

「あの、師匠。せめて家に帰ってやってください」


盛りだした師匠たちに向けようもない怒りを向けながらも、俺は頭の中で魔法の行使方法を考え続けていた。







この五年間、物理魔法の習得だけでなく、その他の魔術も現存する物を片っ端から叩き込まれました。師匠との杖術の練習も日を追うごとに激しくなり、最終的にはどこのバトル漫画かと突っ込みたくなるような速さだったものです。


毎日毎日、雪山でスノードラゴンとセーラさんに追われる師匠に追われていました。魔力が枯渇して、死にかけたことも二度や三度ではないですね。特に物理魔法の修練は最初の内は魔力枯渇で行動不能になることはしょっちゅうでご迷惑をおかけしました。


それでもその毎日は楽しいものでした。次に師匠達に会いに来るときには絶対に大切な人もつれてきます。


そして平和になった世界でお互いの子供同士を遊ばせましょう。


まあ、すぐに会うでしょうのでご挨拶はこれで良いとしましょう。五年間、お世話になりました。




「ふう、こんなもんかな。……こんな長い手紙を書いたのは遺書以来かもしれないな。……水輝君、俺の研究どうしたかなあ」


師匠の家を立つ前夜。俺は自室で師匠達への手紙を書いていた。照れくさいので手紙は出るときに自室の机の上に放置していく気だ。


それ以外の俺に貸し出された魔導書やらの魔法資料は持っていく気だし、他の生活必需品もセーラさんが快く持って行っていいというので、明日の着替えを除くと俺の部屋にはもう何も荷物は残っていない。


入った日には大きく感じた部屋も今となっては若干手狭に感じるぐらいだ。身長は175ぐらいで伸びが止まったのでこの世界だと平均身長より、少し低いぐらいだろうか。


「大きくなったよなあ。……詩帆も美人になってるんだろうなあ」


などと詩帆のことを考えながら俺はそっと手紙を閉じて机の上に置くと、そのまま布団に入って目を閉じた。

というわけで説明回とさせていただきました。


後、次回で修行編終了です。


と言っても師匠たちの出番はまだまだございますのでご安心ください。

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