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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第二章 魔法修行編
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第十八話 魔神の存在と七賢者

事情があって時間帯変更してますので、本日は二話投稿します。


二話目です。

 

 国王の謁見の間に儀礼も何もなく飛び込んだ俺たちだったが、緊急事態のためか何も言われることはなくそのまま俺たちは国王の前に通された。


「話はすでに聞いていると思うが、魔王が北西の草原に魔人の軍勢を展開しているという情報が入った。君たちに助力を願いたい」

「分かりました」

「要は魔王をぶちのめせばいいんだろ」

「それは、魔王討伐の依頼ということですか。依頼という形でなら受けますが……」

「もちろんだ。賢者殿に無報酬で危険な任務に就かせる訳にはいかないからな」


 魔王出現の報が王都に届けられてから即座に王城に呼ばれた俺たちは、国王から魔王討伐を依頼されるということとなった。魔王は魔人を束ねる魔人の上位種であり、軍勢を率いてたびたび人間の国を攻撃していた。そして、遂にルーテミア王国王都にもその侵攻があったと言う訳だ。


「情報を伝えておこう。魔王軍の軍勢は総数五千。王都北西の草原に陣を築いておる。既に騎士団を筆頭とした軍勢二万を派遣しておるが、とてもではないが足止めが精一杯じゃな」

「つまり、足止めを喰らっている軍勢の殲滅が僕たちの任務と言う訳ですね」

「そういうことじゃな。しかし幸いなことにまだ戦闘は始まっておらん。準備を行ってから速やかに向かってくれると助かる」

「分かりました。一人の犠牲も出しません」

「頼もしい言葉であるな。うむ、分かった。私もすぐに戦場に向かう。後で会おう」


 依頼を承諾した俺たちは、準備のために全速力で家に戻った。


「しかし、俺達が賢者ねえ」

「もう、恥ずかしいから思い出させないでよ」

「まあ、隔絶した実力を持った俺たちが畏怖されないだけいいだろ」

「まあ、それはメビウス君の言う通りだけど……」


 メビウスの発言に納得しつつも、何か言いたげなセーラに俺は何も考えずに聞き返した。結果、地雷を踏むことになった。


「なんだよ。何か気に入らないことでもあるのか」

「だって、あ、あんまり女の子が強くなりすぎたら……もらってくれる男の人がいなくなっちゃうから……」

「「………」」


 その発言に俺とメビウスはそろって息をのんだ。二人とも、セーラに対してほのかな恋心を抱いていることは互いに知っていて、停戦協定を結んでいる。一応、共同生活をしている以上気まずくなってもまずいし。


 だが、こんな言葉を言われたら耐えきれるわけもなく、俺とメビウスは魔王討伐の件も忘れてセーラに詰め寄った。


「セーラ、あの、それなら……俺が……」

「セーラさん。大丈夫だよ僕が……」

「やっぱり大丈夫だよね。セーラには二人がいるから」

「「…………」」


 最高の笑顔で振り返って殺し文句を言われて、しばらくフリーズしていた二人だった。


 その後、二人でどちらがセーラと付き合うか頻繁に抗争を繰り広げるようになったことは言うまでもない。


 フリーズが解けてから30分後、準備を終えた俺たちは王軍の集まっている、王都北の荒野に向かった。



 そこには魔王軍と対峙している、王国軍の姿があった。


「陛下、遅れてすみません」

「うむ、賢者殿たちか。今から王軍で魔王軍との戦闘に入る。その隙をついて、魔王軍の深いところに潜って、魔王を討伐してくれ。大人たちが揃いも揃って、君たちのような子供に最も危険な任務を任せるのは心苦しくもあるのだが……」

「大丈夫です。全員、無傷で帰ってきますので」

「そうか、それは頼もしい。………頼んだぞ、若き賢者殿。この戦争は君たちに託そう」

「「「はい」」」


 その国王の言葉を聞いた瞬間、俺達は<転移テレポート>で前方の魔人軍の頭上に飛んだ。


「<風霊庭園ウィンドガーデン>、<魔法威力倍化オーバーマジック>。セーラ、マーリス、ぶちかませ……」


 メビウスが風魔法の障壁で魔人からの攻撃を完全に防ぎ、魔法強化の高位魔術をかける。それを見はからって、俺とセーラは魔力を解き放つ。


「<召喚サモン 赤竜インフェルノドラゴン 灼熱竜の豪炎インフェルノフレア>、<聖光ホーリーライト>」


 続いてセーラが、召喚した赤竜のブレスと、自身の光魔法で手前の魔人を吹き飛ばす。


「<魔導神の神槍ランス・オブ・マジック>、<星光爆裂撃スターダストフレア>。吹き飛びやがれ」


 最後に俺が、複数属性の巨大な槍を放ち、その後ろから最高クラスの星魔法を叩き込んで道を作る。




 俺達は圧倒的な火力と鉄壁の防御によって猛烈な速度で突き進んだ。そうして高位魔法で数度魔人たちを吹き飛ばしてようやくゴールが見えた。


「<星光爆裂撃スターダストフレア>」


 星魔法で最後の魔人の集団を跳ね飛ばした先に魔王はいた。


「よくぞ、来た。その勇気を、たたえて、私が食って、やりたい、ところ、だが……まずは腕試し、といこう」


 魔人にしては少し流ちょうにしゃべる魔王がそう言った瞬間、3体の魔人が俺たちそれぞれに飛び掛かってくる。


「我が、魔王軍の、最高戦力を、打ち破って、みよ」

「魔人の最高戦力か。でも……」


 俺達3人は各々に魔法を展開する。そして、


「<魔力強化マジックアップ>、<神槍ロンギヌス>」

「<召喚サモン 白竜ホーリードラゴン 聖竜の審判ホーリーブレス>」

「<炎獄世界フレアエクスプロージョン>、<完全凍結ダイヤモンドダスト>」


 メビウスが出現させた光魔法の槍で一体目の魔人を、セーラが召喚した白竜のブレスで二体目を、そして俺が三体目を炎で熱した後、氷で包み込み粉砕して消滅させた。


「……弱すぎるな」

「ば、ばかな。そん、なは、ずは……」

「後はてめえだけだ、魔王。……メビウス、付与魔法頼んだ」

「了解。<能力値限界突破ステータスオーバーロード>、<魔法威力超越マジックオーバーフロー>、じゃあ、後は頼んだ」

「ああ。最高の一撃、喰らってもらうぜ。<星光爆裂撃スターダストフレア 極点集中化バースト>」


 一点に凝縮された高位星魔法の魔力エネルギーによって、空間をゆがませ、魔王を逃がさない。そのまま、そのエネルギーを魔王だけに叩き込む。


「ふき飛べ」

「くっ、<暗黒障壁ダークシールド>、<暗黒障壁ダークシールド>、<暗黒し……ダークし……、バカな。ギヤアィーーーーー」


 幾重にも張られた魔力障壁を貫通した星魔法が魔王に突き刺さった瞬間、膨大な魔力エネルギーの奔流によって魔王の体は瞬時に蒸発した。


「よっしゃー。終わったあ」

「よかった。あっ、二人ともケガとかしてない。治療するよ」

「二人とも、気を抜きすぎだ。いくら魔王が弱かったとはいえ、まだ魔人は残っているんだし」


 そんな風に魔王を倒して一息ついていたときだった。突然、魔王が吹き飛んだ地点から声がした。


「ええ、確かに魔王は弱かったですねえ」

「誰だ」

「メビウス、防御張れ。…<突風ウィンドブラスト>」


 俺は即座に風魔法で砂埃を払った。すると、そこには……


「な、何者だ、お前」

「人に名乗りを求めるのなら、まず自分から名乗りなさい。とはいえ今回は特別に答えてあげましょう。魔神の第一の眷属アルファと申します」

「魔神の眷属……」


 魔王は確かに跡形もなく吹き飛んでいたが、代わりに魔人の眷属と名乗る、謎の白服の男がそこに立っていた。


「今は、それで良しとしましょう。どうせ今からあなたたちには、死んでいただきますので」

「てめえ。喰らえ…<七柱の神撃セブンスヘブン>、なっ」


 咄嗟にほぼ不可避の距離で自身最高クラスの光魔法を放ったのたにも関わらず、白服の男は簡単にそれを回避した。それと同時に相手の手の中に、膨大な魔力が集まる。


「この程度の魔法など、当てられなければ何の意味もありませんよ……。それではお別れしましょうか」

「ちくしょう…」


 対処したくても3人とも先ほどの戦闘でほぼ魔力は残っていない。俺とメビウスはせめてセーラだけでも、と思いながら魔法で庇おうとした。

 その瞬間だった……


「それではさようなら。<暗黒破…デスブ……、ちっ<消滅陣バニッシュフィールド>」

「<聖神の清槍ランス・オブ・ホーリー>」


 魔神の眷属に向かって巨大な光の槍が飛んだ。それを何かの魔法で消した男はその反動を利用して、俺たちの方から距離を取った。


「おぬしら無事か。……残念だったのう、アルファ」

「ちっ、まさかあなたが出てくるとは……。仕方ありませんか。ここはいったん引かせてもらいましょう」


 俺達の前には、白いローブを着た老人が立っていた。どうやら、この人が俺たちを助けてくれたようだ。


「わしが簡単に貴様を逃がすと思うか。スリフ、やれ」

「もうやってます。だから、そんなに声荒げないでください。<空間座標固定ホールディングフィールド>」

「今の魔法で転移は封じた。おとなしく倒されろ」

「そうはいきませんが……少々分が悪いです、ねっ」


 動きの止まったアルファに向かって、今度は隕石の雨が降り注いだ。が、これもさらりと回避される。


「<流星雨メテオレイン>。あら、これも当たらないの」

「ラニア、余計なことをするな、逃げられるぞ」

「うるさいわよ、ジェニス」

「それでは、みなさん。取り込んでおられるようなので失礼します。<亜空間通路解放ディメンジョンゲート>」


 他にも三人の男女がいて、それぞれが大規模な魔法を発動していたことは肌で分かった。だが、それでも逃げられるほどあの男が強いということも。



「おぬしら、あらためて聞くがケガはないな」

「は、はい大丈夫です」

「そうか、それは良かった」


 その後、そのようにやさしく語りかけてくるおじいさんが世界中で有名な大賢者グラスリー・ザッカ―・メイヤーだと俺たちは知ることになる。






「師匠、魔人の眷属の使っていた魔法っていったい」

「俺も………私もよく知らないが、大賢者様によると世界の裏側を通る魔術らしい」

「あなた、今の口調が昔の……」

「ほっといてくれよ。ほんとに」

「それで、その魔法ってやっぱり……」

「魔法の解説は後でまとめてやるから、最後まで聞いてくれ」

「はあ、分かりました」


 師匠はそこまで言ってから、ティーカップから紅茶を注いでそれを飲むと、一息ついてから再び話し始めた。

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