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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第九章 つかの間の平穏と来訪者
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閑話 愛読書は魔術教本

読んでくださってありがとうございます

わたしリリア・フォン・ヴェルディド・フィールダーはルーテミア王国南部の中規模の領地を預かる貴族家、フィールダー家の長女として産まれました。


フィールダー家は貴族としてはとても庶民的……といっても生活水準は農民レベルと比べると圧倒的に高いのは分かっていますけど、変にお金のかかる趣味なんかはもっていません。

良くも悪くも貴族としてみすぼらしくない程度であればいいとお父様は言っていました。


そんな私には三人のお兄様がいます。

一人目はセリア兄様です。一番上のお兄様で、街に出かけるといつもおやつを買ってきてくれるのが嬉しいです。

たまに私や他のお兄様を連れて、街に遊びに行くのですが、その後帰ってくるとお父様に怒られているのをよく見かけます……

でも、私達姉弟のことをいつも気にかけてくれるところが優しいです。


二人目はシルバ兄様です。セリア兄様は剣や武術が得意なのですが、シルバ兄様はその辺があまり得意ではないそうです。私にはそんなに下手には見えないのですが、だからシルバ兄様は勉強を頑張ったそうです。

私にもたまにお勉強を教えてくれるのですが、そのときに将来はこういうのが苦手なセリア兄様を支えたいと言っておられました。


そういえば、この間メイドさん達が兄弟間でけんりょくの奪い合いが……と言ってましたね。何のことかはよく分かりませんけど、兄様達はは仲がいいのできっとお父様のようにこの領を豊かにしてくれると思います。


三人目、私と二つ違いのクライスお兄様です。お兄様は忙しいシルバ兄様やお父様、お母様の代わりに私の話をよく聞いてくれて、勉強も見てくれます。シルバ兄様が、クライスお兄様にはかなわないとも言っていたのでものすごく頭がいいのだと思います。

……何よりお兄様は魔術師なんです!


いつも優しくて、頭が良くて……格好良くて、すごうでの魔術師です。


お兄様は、この町を赤竜から救った英雄で、その実力を七賢者のマーリス様に認められて修行に行かれました。少し寂しいけど、すごいことなので応援したいです……




「でも、お兄様とこのままじゃ釣り合い取れないですよね……」


お兄様がいなくなった次の日、私は書庫で初等学院の宿題をしながら考えていました。お兄様は街の皆さんが認めるぐらい凄い方です。そんな私がお兄様の隣にずっといるためには、それに並べなくても、何か力がいると思うんです。


「なにか、ないかな……あっ、そうだ、そういえば」


私はあることを思いだして、書庫の高い棚に手を伸ばしました。そこにあったのは……


「魔道教本、ありました」


魔力を測る機能のついている書籍、魔道教本です。これのエンブレムに最初に触ったのはつい一年前でした。

どうやら私の魔力はかなり多いようで第十階位くらいでした……クライスお兄様に言おうかと思ったのですが、お兄様は凄い方なので、まだ上に二階位もある以上、言えないなと思ってしまったんです。


「……言っておけば良かった。そうしたらお兄様と魔術の話がもっとできたかも……そうだ!」


言えずに離れてしまったお兄様ですが、五年後には帰ってこられるはずです。


「そのときまでに、魔術がうまくなればいいんです!」


お兄様に褒めてもらえるくらい魔術がうまくなれば、きっとお兄様と並んでも大丈夫になると思うんです。大好きなお兄様の隣に。


「教本の内容は読んじゃいましたし……少し発展的な内容の本はないですかね……ん、何ですかこれ?」


周りを見渡していると、本棚のすぐ傍の小さなテーブルに本が置いてありました。


「なんでしょう、これ……こんな分厚い本、見た覚えがないですね。タイトルは……<九属性上級魔法入門>……上級魔術、九属性!」


魔術に詳しくない子供でも、四属性以外の魔術と上級魔術が使える人が貴重なのは知ってます……もし、私がこれを使えるようになれば……


「お兄様に並べる魔術師になれます……」


そう言って私は、その後一心不乱にその本を読みあさりました。そうして、自分が規格外の才能を持っていたと気づく頃には本当に超一流の魔術師になっていたのですが……その話は、またどこか別の機会で。

カクヨムさんの方にあげてた短編です。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。 ここまで読み進めてきましたが、本当にいい時間を 過ごさせていただきました。 これからも応援します。 無理せずに、ゆっくりでもいいので水輝がどうなったか知りたいです。 なので苦…
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