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次元層の狭間より 壱
雅也が消えた直後。正に視線を感じた方向で何かが揺らいだ。
「なるほど、さすがに千年前のやつくらいは葬るか」
それは不定形の何かで、それでもハッキリと一人で何かを呟いていた。
「まあ、それぐらいはやってくれないとね。まあ、しばらく平和の味を噛み締めてもらおうか。今は忘れたままで、楽しく過ごせばいい。その方が……」
それは、笑っているように見えた。そして何かを呟いて溶けるように消えた。
それを見ていたものがもう一つ。
「今の彼にあれが本気を出さなくて良かったよ。やはり……ということか。さてと、最終局面か……もうすぐ会えるね……」
そう呟いて見ていたものも消えた。
辺りは再び淡い光を放つ文字列が流れるだけの無音の空間へと転じた。




