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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第八章 魔神討伐戦編
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閑話 雅也には癒やしが必要だと思うの

投稿開始したばかりですが、作者が殺伐とした戦場書いてて疲れたので、癒やしを書きました。



王都クーデター事件から三週間後。

俺は増えに増えた王宮筆頭魔術師と魔術省大臣としての書類を整理していた。


「解任者処分報告書……もう、見飽きたよ。処罰理由、王国反逆行為への部分的加担……金銭面での協力だけか。人手が足りん、減棒と降格処分で済ませよう。次は……役職候補の選定か……仕事減らしたいから早急に決めたいけど……仕事減らすために仕事増やさなきゃならないとか本当に……」


クーデターに主に加担していたのは魔術省の下級役人達と、王宮魔術師団の初級の若年者が多かった。今後の組織設計からやり直しなのも勿論痛いが、単純に実務労働力が大幅に減ったのも痛い。

副大臣のアディウス子爵を始めとして、本人あるいは身内の関与で役職を追われたり、降格された上位者も多く、現状通常業務すら処理しきれていない有様だった。


「俺がまだ組織全体を把握できてないのに、これだけ資料わたされても効率悪いんだよなあ……一応病み上がりなんだが?」


魔王戦争で瀕死の重傷を負い、結果的にクーデター騒ぎの収拾の際に治りきっていない傷を開いた俺は主治医、詩帆から絶対安静を言い渡されていた。一週間は絶対安静で、その後二週間も原則外出禁止と来た……面白がってレオンがそれに賛同したせいで、絶対安静が解けてから俺の大臣としての書類仕事はフィールダー伯爵邸に運び込まれるようになってしまった。


「仕事は増えるばっかりだし……はあ、まだ魔王と死線くぐってた方がマシだよ、まったく……さて、次の書類は……」

「雅也!」

「な、何だ詩帆」


ブツブツ愚痴を言いながら、次の書類の山に手を伸ばした俺の目の前にお茶を突き出した詩帆はこっちを向いて睨んでいた。えっ、俺なんかしました?


「さっきから何回も呼んでいたんだけど?」

「全く気づかなかった……書類に集中しすぎてたかな」

「そうかもね……ところで雅也」

「何?」

「昨日、徹夜してなかった?」

「…一緒にベッドに入っただろ?」

「ええ。その後、<眠りヘの誘いスリプルガス>で私を眠らせて抜け出したでしょ」

「……夢じゃないか?」

「レジストしたから、私は起きてたのよ」

「……やったよ。今日までの書類が片付いてなかったから」


昨日の深夜。詩帆に強引にベッドに連れ去られた後、今日中に渡しておきたい役職承認の書類を作るたまに……確かに徹夜した。最後にベッドに戻って仮眠は取ったけどね。


「はあ……」

「いや、溜息は分かるけど……それくらいは勘弁してくれないか」

「そうね。普段の、雅也が復調してるときなら一日二日の徹夜ではなにも言わないわよ」

「……それを言われるとなあ」

「あなた、分かってる?三週間前に相当ダメージを負ったのよ?体は一見魔術で治ったように見えるけど、治療魔術の性質上、治っても体力が低下してたり、ダメージは残ってたりするの」

「はい、先生」

「先生って言うのなら主治医の指示は守って」

「……はい」


詩帆が怒るのもごもっともだ。三週間前死にかけた人間が今、バリバリ仕事をしていいわけがない。そして医者モードに入った詩帆にたてつくと、本気で怖いので、大人しく従っておこう。

……俺のためを思って言ってくれてるしね。


「わかった。徹夜はしない」

「よろしい……後、仕事は仕方ないから許すけども、適宜休憩は取ってください」

「はい……」

「珍しく素直ね?」

「まあ、奥さんを心配させるような無茶をした俺が悪いし……何より大事に思ってくれての発言だから、嬉しいし……」

「っ……そこで唐突に素直になられると、卑怯」


顔を赤くして睨んでくる詩帆が可愛かったのでなでてみたら、顔を真っ赤にして腕をはねのけられた……単純に気恥ずかしいだけっぽいので寝る前とかなら受け入れてくれそうだな。


「って、そこが本題じゃないのよ」

「何?」

「雅也には癒やしが必要だと思うの」

「詩帆がいるけど?」

「……私を癒やしだと思ってくれるのは嬉しいんだけど、そうじゃなくて」

「観葉植物とか?」

「そういうのもありね」

「うーん、芸術鑑賞とか、散歩とか?後は読書とか?」

「そういえば、雅也って色々な趣味に触ってたわね……」


前世では世界各国から狙われ続ける異常な生活していたからな。自然と多種多様な気分転換策は持っていた。詩帆とあれらの趣味がなければ、どこかで俺は壊れていただろう。


「そういうのもいいけど……ペットとかどう?」

「アニマルセラピーってこと?」

「それもあるけど……飼いたいな、って」


結婚したら犬を飼いたいとは詩帆はずっと言っていた。結局、お互い安定するまでは無理だって言って、せめて子供が大きくなるまではって言ってたら……あんなことになって実現はしなかったけど。


「わかった。じゃあ、今度見に行こう」

「うん」

「しかし、この世界、前世のような犬とか猫とかいるのか?」

「結構いるわよ?」

「いや、知ってるんだけど愛玩動物としてって意味で」

「王都だと、中流以上の商人以上になってくると割とポピュラーよ」

「へー」


この世界特有の魔物なんかを飼ってるかとか思っていたけど、ちゃんと犬猫なんだな安心し……


「もちろん、中には魔物を飼ってるひともいるけど」

「……やっぱりいるんだな」

「まあ、こういう世界だから」

「それもそうだな」


魔物と言っても可愛いものや、小さい無害な物もいるし……きっと、そっちなんだろう、そう思っておこう。


「それで……いつ行く?」

「今から行こうか」

「今?えっと、言っておいてなんだけど仕事は……」

「今日は昨日よりはかなり少ないから」


昨日は非常に仕事が多い日だった。今日は昨日の6割くらいだし……


「1,2時間くらいならいい気分転換かな」

「そう……じゃあ、私着替えてくるから、玄関で待ってて」

「ああ」


長年の夢に近づいたのもあって、珍しいくらい子供みたいにテンションの高い詩帆の後を追って、俺も部屋を出た。

久々に手動投稿でTwitterに投稿情報載せたかったのですが、バイトと被ったので予約投稿です。

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