遠い空の下~君の隣で寄り添って~
第七章 番外編の最後は「遠い空の下」の最終話です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
既に闇に染まりだした空の下。俺は相対する桜川の冷たい瞳を睨みつけながら口を開く。
「予想どころか事実、か……」
「ええ。あなたが知らなかった……いえ、知ろうとすらしなかった秘密の彼女の過去……知りたい?」
「別にいい……」
「そう……やっぱりあなたにとって詩帆はその程度の存在……」
「勘違いしないでくれるか」
自分の声が思った以上に冷たく響いた。
「どういう意味かしら?」
「そんな事実なんて聞かされるまでもなく、解ってるよ。ずっと詩帆の隣にいて、ずっと彼女を見てたらそんなことぐらいはね」
「……そんなこと信じるわけが……」
「両親の事故の真相が母親と添い遂げたかった父親の無理心中だったなんていう事実を暴いて楽しいか?」
「……どこで調べたの?」
「確信に近い推測だ。だが、その反応を見る限り図星みたいだな」
詩帆が言いたくないことなんてすぐに分かる。彼女の両親が事故で亡くなっていて、俺に好意があるのに自分から距離を置こうとする……そこまではっきりした情報があって、好きな女の子のこんなことも分からないほど馬鹿じゃない。
「……彼女のトラウマも、解ってるって、ことよね……」
「ああ……だから俺は彼女に好きだとは言わない。彼女が自分自身を信じられる日まで、俺はずっと隣にいられればそれだけでいい……」
「……そこまで想ってて……何で……」
「あんたがどういう意図で、詩帆の過去を調べて、俺にかまをかけるような真似をしたかは知らないが……」
桜川は何かに怯えているようだった。先ほどまで冷静に話していた人物だとは思えないぐらい、狼狽していた……普段だったらフォローを入れるところだが、今は間違いなく詩帆の方が危ない……
「詩帆の過去を調べたなら分かっていると思うが、詩帆が負ってる心の傷の原因は依存レベルの父親の母親への愛情だ。だから、俺が詩帆にのめりこんでいると彼女が思えば思うほど、彼女は罪悪感を感じる。その状況下で、俺に重荷だと言われたと思ってるんだ……最後の心の支えを失った彼女が何をするか……」
「分かってるわよ。さっきも言ったでしょう……彼女なら、あなたを巻き込まないよう一人で生まれ故郷で……」
「それが分かってるなら詩帆がどこに行ったか教え……」
「……あなたは、それでも、結局詩帆から逃げたじゃない」
「どういう意味か知らないが、今は詩帆を追いかける方が優先で……」
「あなたと詩帆の中学と高校時代の話も調べたわ。そこであなたのこの大学の理学部を選んだ理由も知った」
「それが何だと……」
「とぼけないでよ。あなたがここを選んだ理由は……詩帆から離れようとしたからでしょう」
「……」
何も言い返せなかった……それは、一つの事実だったから。
「……言い返せないということは、事実だと判断するけど?」
「そうだよ……どこで知った?」
「開き直る気かしら?」
「そんな気はさらさらない……ただ、俺がこの話をした奴なんて、そうはいないんだが……」
「じゃあ、その人から聞いたと思ってもらって結構よ……」
「そうか……それで何か問題があるのか?」
「大有りよ……一度、逃げたあなたがもう一度詩帆を追いかける権利はない。ましてや、自分の言葉で彼女を傷つけたあなたが……」
「……そんなこと、なんであんたに決められなきゃならないんだよ」
桜川の言動が支離滅裂なのは分かっていた。彼女のほうにも何かしら事情があるのだろう。俺と詩帆の関係性を聞いていて、ここまでのことをしているんだしな。ただ……
「私が決めてるわけじゃないわ……あくまで一般論よ」
「一般論なら、なおさらだ。あくまでそれは大多数の意見であって、それを俺たちが踏襲する義務はない」
「でも……でも……」
「一度嫌いになったのは事実だ。仕方ないだろう、あれだけ好きだった女の子に、相手も好きだと信じて疑わなかった相手に、何も言わずに逃げられたんだ……事情を知っていてもショックは受けるさ。ただ……」
「……」
桜川はもう反論する気もないのか、ただ黙ってうつむいていた。その状態でも、最後まで言わせてもらおう。この件に関しては他のどんな意見でも譲る気はないから……
「ただ……一度嫌いになった相手を、また好きになるのは別に悪いことじゃないだろう」
「えっ……」
「俺は中学時代のあの子を見ているわけじゃないんだよ。一度最悪の別れ方をして、嫌いになったとか関係なく、大学で再開した詩帆に今度は一目惚れした。ただ、それだけだよ」
それは、嘘偽りのない本心だ。もっとも、そもそも彼女に対する感情だけは嘘をつく気はさらさらないんだが……
「……私は、間違ってない。間違っているはずが……」
そう言って桜川は崩れ落ちた。それで彼女の動揺の原因も大方予想がついた。きっと彼女は自分の推論に対して絶対的な自信を持っている。彼女の家の財閥の情報網を使えば、大抵の情報は手に入り、彼女自身の頭脳も相当なものだから、当然のことだろう……俺みたいな異常者の思考回路を除けばだが。
「……私は、間違っちゃいけない……完璧でなければ……」
ただ、同時にその正解を積み重ねた功績は彼女のプレッシャーにもなっている。それに財閥の一人娘としてのプレッシャーも加わり、彼女の心の中は、見た目とは裏腹にずたずたになっていたのだろう。
「私は……」
「間違うのは人として当然のことだ。俺だって何度も間違ってるし、それはどんな人間でもそうだろ」
「でも、私は完璧じゃなきゃ、いけないの……ずっと、そうしなさいって教え込まれて……」
「一度帰って聞いてみれば確実だと思うが、お前の両親やおじいさんだって、きっといくつも大失敗してるぞ」
「でも、でも……私には、それしかないの……」
「はあ……完璧な人間なんていない。もし、そう見える人間がいるんだとしたら、その人は失敗した後の動きがすごいんだろうな」
「……失敗した、後?」
「失敗した後のことも考えて準備をしておいて、失敗しても即座に修正すればいい」
「修正……そう、か……」
彼女の中でどす黒く渦巻いていたものが消えた気がした……少なくとも表面上はだが。
「だから、俺も今からでも詩帆を迎えに行く。色々失敗しちゃったけど……生きていれば、いくらでも取り返すチャンスはあるからな……」
「……そう。それだけ想いあってても、すれ違ってしまうのね」
「どういう意味だ?」
「詩帆は、あなたを自分の我儘に付き合わせてると思ってる。それにずっと罪悪感を感じてる……自分が彼を縛ってるって」
「言えよ……あの馬鹿」
詩帆がそれを気にしていたことは分かっていた。ただ、それを俺に言いたくないことも分かっていた……だから、聞けなかった。
「縛られてる気なんてさらさらない。むしろ俺が一生詩帆を縛ってやるぐらいのつもりなのに……」
「ごめんなさい……私が仕組んだせいで、こんなことに……」
「それは今さら言われなくても分かってるし、責める気もない……それより、詩帆はどこに向かったか分かるか?」
「ごめんなさい。生まれ故郷に帰るだろうっていう予測は立てていたけど……細かい場所までは……」
「分かった……俺の思い当たる場所を片っ端から探すしかないか」
「本当に……ごめんなさい」
「今は謝らなくてもいい。全部が終わった後で、詩帆に謝ってやってくれ。それより、詩帆に電話かけ続けてくれるか。取らなくても……思いとどまる一助にはなると思うから」
「分かったわ……後は、お願い……」
「言われなくてもやるよ」
そう言って俺はその場を走り去った……さて、世界一天邪鬼で可愛いお姫様はどこに行ったのやら……
……一時間後 とある駅前商店街
「私は……雅也にとって、どういう存在、だったんだろう……」
彼とものすごく長い間一緒にいたような気がしていたのに、そんなことすら聞けていなかった自分が嫌になる。
「……彼はずっと隣にいてくれた。そして、あの日は間違いなく私に……」
懐かしい喫茶店の前を通りながらつぶやく。この店で彼は私に最初の告白をしようとしてくれた……そこで、最悪のタイミングで、私は封じていた記憶を取り戻して……彼を拒絶した。
「……あれで、全部終わったと思った。どんなに好きでも、あのタイミングで逃げられたら絶対に断られたと思って、嫌われるのが当たり前……なのに、なのに彼は私を追いかけてきて、何も言ってないのに……」
全てを言い当てて、その上で、何も言わずに傍にいてくれた。好きだと言ってくれて、私の心の整理がつくまで、ずっと待ってくれると……
「その言葉に、甘えてたのかもしれない……いや、それにはずっと気づいてた。でも、気づかないふりをして、ずっと逃げてた……」
彼は何度も告白しようとしてくれた。してもいいかと尋ねたうえで、私が断れば、冗談だと、気にしなくていいと言ってくれた……私はずっと彼を傷つけていた。
「平気なわけ、ないのに……いつも平気そうな顔をして、彼女扱いしてくれようとしてたのに、私はそれが怖くて……彼の優しさを拒絶してた……好きなのに、そうしてほしいのに、これ以上彼に愛されるのが怖かった」
そんなことを言いつつ、歩みが止まった。そこは、私が雅也と出会った場所……
「あのころは、幸せだった。何も考えずに、雅也と、半分付き合ってるみたいな、そんな、時間だった……」
彼と、毎日のようにクラスや部活で顔を突き合わせては、くだらない話をした。何気ない言葉にドキッとしたりもした……彼への恋心を自覚したのはいつだっただろう。そんなはずない、とずっと自分に言い聞かせていたのに、気が付いたら抑えられなくなっていた。
「あの時、彼の手を取っていれば、どうなってたんだろう……」
クリスマスのあの日、もうほとんど恋人みたいだったあの頃、あの日。彼の言葉に包まれて、そうしていれば、どれだけよかっただろう。いや、もう一度、唯一彼からはっきり告白を聞いた卒業式の日。その時でもよかった……まあ、今さら、か……
「付き合ってください……って、言ってくれたのに、あんな最悪な逃げ方をした、私を、まだ、好きだって……」
なのに、私は答えられなかった……本当は、喜んで手を取りたかった。でも、それをしようとするだけで、手が震えて、何もできなくて、そんな自分が嫌で、嫌で……でも、でも……彼は、ずっと私の隣にいてくれた。全てを分かったうえで、返事もしないで保留し続ける、こんな私を……
「私、最低だ。でも……彼から離れられなかった。離れたくなかった。だって、だって、怖いけど、彼が私を好きになることも、それを嫌がってしまう私も……もう、なんだろ、何を怖がってるんだろう……もう、分からない……」
いつのまにか、私は自分で自分を縛っていたのかもしれない。雅也の想いにこたえてはいけない、っていう強迫観念じみた想いで。ああ、そうか……
「……私、ずっと雅也に好きだとも言ってないんだ。言えなかったんだ……なのに、私は、当たり前みたいに雅也の隣にいて……彼をずっと……」
私の身勝手な思いで、ただ、私が怖いというだけで好きとも言われていない相手を、彼にずっと傍にいさせることを強要させた。そんな私に……
「彼を好きになる資格なんてない」
気が付けば、私は町中の幹線道路の歩道に立っていた……ちょうど、両親が死を選んだ場所のすぐそばに。
「……いや、彼だけじゃない。いや、私に人は愛せない」
相手のことを好きになればなるほど、私はその人を失うことが怖くなって拒絶してしまう。
その人が優しかったら、それを分かった上で容認して、縛りつけられてしまう……そんな私の我儘につきあわせる人は、もう作ってはいけない……
「……だから、さよなら。ありがとう……」
誰に向けたのかもわからないその言葉を最後に、私は道路に身を投げた……最後に一つだけ呟いて
「……でも、本当に、雅也のことが……大好きでした……」
その言葉を言い切ると同時に、強烈なヘッドライトが私の全身を照らした―――
いつまで経っても、衝撃は訪れなかった。それどころか、私は倒れてすらいない。その事実に気づいて私はそっと目を開いた。そこには……
「ああ、俺も大好きだよ。だから、勝手に自分から死ぬな」
いるはずのない大好きな人がいて、私に言ってもらえるはずのない言葉をかけてくれた。
「どうして……」
「お前があの状況で来るとしたら、この場所しかないだろ。で、未練たらたらなお前が学校の前を通らないはずがない。それさえわかれば、ショートカットしてここに来れば間に合う」
「なんで、助けてくれたの……」
「お前をここで失いたくなかったから……それで不十分なら理由を付け加えようか?」
そう言ってキレ気味に尋ねる彼の様子に……私はだんだんと死のうと思っていたのが馬鹿らしく思えてきていた……
―――詩帆が、道路に飛び込んだ瞬間。心臓が止まるかと思った。彼女を抱きとめて歩道側に倒れこんで、その瞬間、真正面を大型トラックが走り去っていった。
訳の分からない内に詩帆を抱き抱えたまま、必死で言い立てた。今にも命を断ってしまいそうな彼女を、その先に行かせないために……
「……分かった、今はしない」
「そうか……」
俺の必死の説得はなんとか彼女の心に届いたようで、少しだけ表情が和らいだ。
「それで……理由って何?」
「やっぱり、聞くか?」
「教えて」
「じゃあ、言うけど……答えろよ」
「えっ……ま、待って、今分かったから……」
「まだ、中学の卒業式の時の告白を聞いてない」
詩帆が気づいて俺の質問を遮る前に言いきった。
「……ごめん……」
詩帆はそう言って俯いたまま、口ごもった……やっぱり、まだ早いか……一度は人生を終わらせようとした直後に聞ける質問ではない、か……
「悪かった。今聞くべきじゃ……」
「ち、違う……ただ、何て言ったらいいのか分からないから……」
だが予想に反して、彼女の返答はいつもとは違った。
「……だって、あなたが好きだから。でも、その想いが強くなればなるほど、怖いの」
「そうか……」
きっと、今までの俺なら、きっと待つと言っただろう……でも、もう彼女を気遣うことを盾にして、逃げるのは止めよう。
「詩帆……」
「はい……」
「初めて告白したときから色々なことがあった。一度は俺も詩帆を嫌いになった」
「うん……それは私も……雅也が中々告白してくれないから、身勝手にイライラしてた時期もあったから」
「そっか……でも、色々あったけど、やっぱり詩帆が……」
色々なことを思い返す。
―――初めて出会ったクラスの隣の席
―――ずっと話していた夕暮れの部室
―――何気なく近づいてはドキドキしていた二人の帰り道
―――泣きそうになったクリスマス
―――全てを忘れたかった卒業式の日
―――自暴自棄になっていた高校時代
―――再会した君に魅了された新歓の夜
―――付き合っているようで違うもどかしい最近の日々
―――想いを伝えられなかったバレンタイン
―――そして、全てが終わりかけた今日
色んなことがあった。でも、最終的に想いは一つだ。
「……大好きです。だから、付き合って下さい」
「……もし、私が死にそうになったら、あなたはどうする?」
「今みたいに引き戻す」
「……病気で、余命宣告、されたら……」
詩帆がか細い声で言った……昨日までの俺だったら言い淀んだかもしれないが、もう悩まない。
「……三途の川から連れ戻す……外道と言われようが、何と言われようが、どんな手段を使ってもな」
「その回答は……予想してなかった、けど……」
「俺らしいだろ」
「うん、そうね……分かった……」
詩帆も色々なことを思い返しているようで少しの間目をつぶっていた。そして、目を開けて言った。
「……雅也、私もあなたが好き。だから……これからも面倒な私でよければ……恋人として、一緒にいてください」
「喜んで……」
「うわっ……ま、雅也……」
詩帆を抱きかかえたまま、俺は飛び上がった。そしてそのまま詩帆をゆっくりと地面に下ろす。
「私を抱きかかえたまま飛ばないでよ……その、嬉しかったのは分かるけど」
「そこは言わないでくれよ。五年越しの恋が叶ったんだ……」
「五年……じゃあ、私の方が雅也を好きになったのは先ね」
「いつだ?」
「秘密……」
「そんなに秘密にするところか?」
「いいじゃない……一回、彼氏に秘密って言ってはぐらかしてみたかったのよ」
「可愛いらしいことをやってるな、詩帆ちゃん」
「も、もうからかわないでよ……」
そうやって慌てている詩帆だったが、その顔はずっと微笑んでいた。何年かぶりに見た彼女の本心からの笑顔……
「……楽しむな、って方が無理があるだろう」
「どういう意味?」
「秘密……」
「真似しないでよ」
「すいませんね……それで、過去は吹っ切れたのか?」
最後に、聞いておかなければならないことは聞いておいた。その途端に詩帆の顔が曇る。でも、俺はもうその表情も含めて、過去も含めて、詩帆を愛すると決めた……だから、どんな回答でも受け入れよう。
「……きっと、また何かあったら、取り乱すと思う。不安で眠れない日もあると思うよ……でも……今日からは、全部雅也にぶつける。抱え込まないでいる……あなたに気なんて遣わせない」
彼女は俺なんかよりずっと強い。両親を最悪の形で亡くして、それを周りに悟らせず明るく振舞ってきたのだから……でも、そんな俺が彼女にできることがあるとするなら……
「ああ。弱いところは全部俺にぶつけろ。支えになれなくても……ずっと隣にいるから。君を守る盾にはなれるから」
「うん。頼りにしてる……」
そう言って彼女は俺の胸に飛び込んだ。やっと素直に抱きしめられた彼女の温もりはとても暖かくて、大切で……その感覚が心地よかった。
「もう、離さない。絶対に……」
そのまま彼女が落ち着くまで、俺はずっと彼女を抱きしめていた―――
これは遠い空の下 聖夜にようやく結ばれた二人の恋人の雪の下とは思えない暖かい歓喜の中の物語―――
……数十年後 遠い異世界の空の下
「そういえば、告白はそんな感じだったわね」
「そういえばって……意外とショックなんだが」
「冗談よ。忘れるわけがないでしょ」
忘れるわけがない。彼が忘れてもずっと覚えている―――
「ひどい冗談だな、まったく……」
「それは、ごめんなさいね……でも、私としてはあの後のあなたのヘタレっぷりが印象に残っているのだけど……」
「な、何を思い返してくれてるんだ」
忘れない。彼女がいなくなっても絶対に覚えている―――
「でも、事実そうでしょう。終電、終わっちゃたねって、女の子に言わせておいて……どうやって帰ろうかなんて言う?」
「……じゃあ、なんだよ下心丸出しの方が良かったのか?」
「……それは、嫌だけど……でも、あの時は……雅也に包まれていたかったから」
「それ……男に対しての殺し文句だぞ」
大切な思い出だから。どんなに周りから見たら歪んだ青春でも―――
「べ、別にいいよ……あなたに対してしか、言わないから」
「それも加点だからな……というか、あの日は結局覚悟決めたんだからいいだろ」
「……」
「……何で顔を赤くしてるんだよ」
二人だけの思い出だから。どれだけ周囲から見たら回りくどい恋愛でも―――
「いや、その……色々と思い出しちゃって」
「そ、そうか……」
「……顔、赤いよ」
「うるさい」
―――どれだけ時が経っても、どんな場所でも、ずっと、ずっと忘れない。だから―――
「フフフ、ねえ―――雅也」
「何だよ―――詩帆」
「ずっと、一緒にいてね。私が死ぬまでは」
「当たり前だ。最初に約束しただろ。俺は守らないことは約束しない」
「そう、だよね……」
「ああ、そうだ」
―――私達の命が続く限り、ずっと傍にいよう―――
「さてと、仕事に戻りましょうか」
「じゃあ、私も」
「体には気を付けて下さいよ……」
「言われなくても分かってるわよ」
これはどこか遠い空の下、結ばれあった二人の澄み渡る青空のような記憶―――
~~~FIN~~~
それでは、受験勉強頑張ります。また来年の四月に戻ってこられるよう努力します。
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