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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第六章 王国魔人戦争編
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第九十九話 終戦宣言

遅ればせながら、10万PV&16000ユニーク突破しました。ありがとうございます。


また間が開いてしまってすみません。おそらく今後も投稿ペースは週に二、三本程度になるかと思います。

ひとまず今日で第六章本編が終了しますので、この後の番外編で投稿ペースを安定させていけるよう頑張ります。とりあえず何とか一月中に終わって良かったです。


「それで……その話は飲まなきゃいけないのか?」

「ああ、飲んでもらおう」

「面倒くさい上に……今の俺はこんな体なんだが」

「あれだけ過保護に君をベッドに拘束していたユーフィリア嬢が、君の外出を許可したんだから問題ないだろう」

「そうかよ……」


王宮の一室。つい先日まで前国王の私室だった部屋で俺は心底嫌そうな顔でレオンの話を聞いていた。


「まあ、そうは言っても一応聞いておこう……怪我の状態は?」

「ひとまず内臓の傷は綺麗に塞がった。それから断裂していた筋肉はひとまず繋がった。骨折は完治はしてないかな」

「それなら問題ないな」

「いや、問題あるだろう。これでもつい一週間前まで昏睡状態だったんだぞ」

「でもこの一週間は元気すぎるぐらいだっただろう……という訳でだ、フィールダー王宮筆頭魔術師殿。魔王戦争の凱旋パレードに参加してくれ」

「……そもそも王宮筆頭魔術師になるのも了承した覚えもないんだが……」

「あれだけの活躍をして、今更そんなことが言えるとでも思っているのか」


俺が渋っているのは、戦争での功績によるパレードへの参加だ。正当に伯爵令嬢である詩帆ユーフィリアと婚約するために地位は必要だが、正直に言って下手な仕事は増やしたくはない。貴族位をもらい受けるだけなら好都合だが……


「……王宮筆頭、ねえ……なあ、前筆頭のテルミドール伯爵は……」

「言っただだろう。彼は表向きはあの戦場で死んだことになっている。そのまま息子に爵位が引き継がれた。死人に筆頭魔術師になってもらえと?」

「じゃあハリーさんは?」

「ハリーは新宰相に決まってるんだよ」

「エマ先生は?」

「もっと無理だな。彼女はローレンス公爵家の娘として婚約が決まった……そんなに嫌か?」

「正直言って目立ちたくもないし、魔神戦が終わってからも公職で時間が潰されるのはなあ……」

「目立ちたくないという一点だけに関してはもう遅いと思うんだが……」

「分かってるよ……ただ、少しでも抵抗したくてな……」


あれだけ魔王戦争の最前線で大立ち回りを演じておいて身元が割れていないなどとは思ってもない。第一、学院でも色々やらかしているからな。


「もう諦めろ……どの道、受けるしかないぞ。お前も魔神戦の最前線に立つ公的な理由は欲しいだろう」

「もう少し、軽めの理由でいいんだがな……」

「一つ言っておくが、お前はユーフィリア嬢が軍務大臣の役職を世襲できるレベルの高位の伯爵家の一人娘だということは理解してるのか」

「理解してるよ」

「じゃあ、お前が軍務大臣家を継がず、ユーフィリア嬢と結婚するのにつり合う家格が最低限伯爵位以上だということは分かってるよな。その上でたかが子爵家の三男に伯爵位を与えようと思ったら……公的な役職に就くしかないというのは分かっていて言っているか?」

「……分かったよ。確かに俺に拒否権はない、な」

「お前がどれだけ権威が嫌いなのか、仕事が嫌いなのかは知らないが……普通だったら誰でも飛びつくぞ、こんなうまい話」


正直言って、俺は詩帆さえ幸せなら俺自身の権威とか興味ないしな……いや、でも……待てよ。


「レオン、その話、全て受ける」

「いきなりどうしたんだ?まあ、好都合だから構わないが」

「ああ、少し考えが変わった」


前世同様、俺の持つ力は間違いなく敵を作る。それなら詩帆を守るために最低限の政治的な発言権はいる。前世では俺の持つ情報で、圧力をかけていたが……この世界では間違いなく物理的な攻撃の可能性が高い。だったら少しでも安全のための布石は打っておいた方がいい。


「ユーフィリアを守るために、色々と力はいるだろう……」

「政治的な、か……まあ、分かった。さてと、それじゃあ戦後処理の話から聞いてもらおうか」

「結局、空席はどれだけできたんだ?」

「軍務省、財務省、は上から下までかなり汚れてたな。住民省も大臣以下、かなり腐ってたから一掃した」

「人事関連はそんな物か」

「ああ。一応上位の役職者が更迭された省では、既に代理が業務を引き継いでる。まあ色々と残ってる不正関連の証拠集めと、組織運営の正常化。さらに現場の方の不正体質の改善で……実際、通常業務に戻すのにはかなり時間がかかるだろうな」


レオン側についていた省庁以外はトップから現場まで相当腐っていたようだな……よくもまあ、あの国王の下で国家運営が十何年も続いたよ、本当に。


「後、お前が荒らした戦場の後始末だが……」

「荒らしたとか言うな、戦闘の余波だ」

「明らかに過剰火力な魔術がいくつもあっただろうが」

「うっ……まあ、一部だし……」

「前半、遊びすぎて、魔王や魔神の眷属相手に苦戦したらしいじゃないか。マーリス殿が頭抱えてたぞ」

「……ノーコメントで」

「そうか……で、荒れ果てた地面は無事に元に戻った……大半がマーリス殿やセーラ様のおかげだけどな」

「良かったよ……」

「本当にな。で、過去の話はそれぐらいにして本題に入ろう」

「ああ、そうしてくれ」


実際この辺りの話は詩帆や師匠達から聞いているので、適当でもいい。要は確認事項みたいなものだからな。


「まず、お前には魔王戦での戦功を受けて、王宮筆頭魔術師に就任してもらう。その功績をもってまずは子爵位ぐらいかな」

「まあいきなり伯爵位を上げるのは不可能か」

「ああ。まあ、どのみちすぐにお前の爵位を上げることにはなるだろうけどな……」

「ああ……」


師匠達も魔神の魔力が膨れ上がっていくのを感知している。そしてその反応の強さ的にどれだけ長くとも一年以内には魔神が再びこの世界に出現するであろうということも……


「魔神を倒して帰って来い。そうしたら二階級昇爵も考えてもいいからな。そうしたら世界を救った英雄だ」

「簡単に言ってくれるなあ……」

「お前なら余裕なんだろ」


そう尋ねてくるレオンに俺は曖昧な笑みを返すことしかできなかった。だって魔神の眷属相手に死にかけ、詩帆を失いかけたのだ……確信を持って言えるわけがない。だけど……


「まあ、善処はするよ」


俺はそう言うしかなかった。俺が諦めたら、この世界は終わるのだから……


「善処っていう言い方が怖いけど……まあ、それでだ。ひとまずお前がベッドに縛られてた一週間の間に最低限の役職の入れ替えと引継ぎが済んだことはさっきも言ったな」

「ああ。聞いたな」

「それで、だ。今日の午後から終戦宣言に加えて、私の王位継承を発表する」

「急だな」

「まあ、正式な即位式典は後日だけどな。その日に同時に凱旋パレードや、お前を含めた新閣僚陣のお披露目だな」

「そうか……はあ、分かった」

「ああ……さて、時間が自由な正式即位前に少し外に出かけないか、クライス?」


俺がため息をつきながら、頷いたところでレオンがそんな提案をしてきた。


「いいのか?次期国王様」

「お前がいるなら身の安全は保障されたようなものだろう?」

「そうかよ……<座標転移トランスポート>」


俺はレオンを連れて、王都の裏通りに転移した。


「さすがの精度だな」

「当たり前だろう。それじゃあ、まずはどこから行く?」

「ひとまず小腹でも満たしに行こうかな?」

「了解」


こうして俺とレオンは次期国王と、新王宮筆頭魔術師ではなく二人の学生として街に繰り出した……






「レオン殿下。あなた、今の自分の立場分かってるんですか?」

「まあまあハリーさん、レオンも少し羽を伸ばしたかっただけで悪意はないと思いますよ?」

「連れ出した張本人のクライス君が何を言っているのかしら?」

「……俺はレオンの命令で仕方なく……」

「クライスもノリノリだっただろうが」

「もとはと言えばお前が連れ出したから、嘘は言ってないな」

「二人とも、子供みたいな醜い喧嘩は止めましょうか」

「「うっ……」」


数時間後。終戦宣言発表の直前に戻ってきたレオンと俺がハリーさんと、一緒にいたエマ先生に死ぬほど怒られたのは思い出したくもない黒歴史になった。


「本当に二人とも、別に私達に行ってくだされば許可はしましたのに。クライス様が付いていてあなたが街中で死ぬことはないでしょうからね。何も言わずに消えたから大騒ぎになったんですよ」

「少し……こっそりと出歩いてみたかったんだよ」

「俺もそれに賛同した」

「ああ……私もそういう思いを持った経験あるわね……ねえ、ハリーさん」

「君が学校抜け出すのに何度か付き合わされたねえ……男女で抜け出してたから、いつも尋問を受けるのは僕だったけどね」

「そうね……」

「ああ、もう確かに納得できる部分もありますし……もう、私が怒れる立場ではなくなりますしね」


ハリーさんは少し寂しそうに言った。まあ、幼い頃から仕えてきたレオンがこの若さで国王になるわけだからな……内心は色々と複雑だろう。

と、思っていたらレオンがハリーさんの方に歩み寄って言った。


「ハリー」

「はい、殿下」

「私が国王に即位しても……私的な場ではこれまで通り諫めてくれ。むしろ公的な場でも言い方さえ問題ないと思えば諫めてもらって構わない」

「えっ……」

「私は統治者としてはまだまだ未熟だ。当然だろう。むしろ信頼できる相談役というのはありがたい存在だ。という訳でだ、これからもよろしく頼むぞハリー……いや、ローレンス宰相」

「は、はい」


レオンがハリーさんにそう言って握手を求める中、俺の頭の中には疑問符が立ち並んでいた。


「ローレンス、宰相?」

「ああ、そう言えばクライスには言ってなかったな。エマ嬢は財務省の現大臣ローレンス公爵の長女だ。それでハリーを婿養子入りさせてから、分家を立ててローレンス侯爵として宰相になってもらうことにした」

「ええっと、どこから突っ込んでいいのか分からないが……とりあえず、おめでとうございます」

「ありがとう、クライス君」

「いえいえ……」


俺がエマ先生に続けて話題を振ろうとしたとき、ドアからノック音がした。


「どうぞ」

「失礼します。レオン殿下、そろそろお時間です」

「ああ。ジャンヌか。分かった、今から行く」

「もう終戦発表か」

「正解だ。という訳で行って来よう」

「ああ、行ってらっしゃいませ新国王陛下」

「ありがとう、次期王宮筆頭魔術師殿」

「何を訳の分からない嫌味を言っているんですか」


ハリーさんの声を受けながらレオンはゆっくりと王城のバルコニーに出た。王城の周りで歓声が上がった。その中で<拡声>の魔術を用いて、レオンが言い放った。


「魔王との戦いは我らの勝利で終わった。多大なる犠牲も出た。しかし私達はこの犠牲の上に立って見せよう、進んで見せよう。亡き父王の統治は終わった。これからは私レオン・アドルフ・ルーテミアが時代を切り開いていく。貴族のためではなく民のための政治を。そのために私は骨を折ろう……」


レオンの所信表明演説じみた、終戦発表に歓声はいつまでも止まなかった……


前話が朦朧とした熱のある時の意識で書いたせいか、支離滅裂なので明日中に大幅改稿できたらしておこうと思います。

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