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異世界でも貴女と研究だけを愛する  作者: 香宮 浩幸
第六章 王国魔人戦争編
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第九十四話 魔王戦決着

今日から投稿を再開します。遅くなって申し訳ございません。何とか土曜日中に投稿できました


また体調不良でご心配をおかけしましてすみません。


「……ありえん。まさか魔人が、人間一人に……あんなに、簡単に……」

「こっちとしては、まだ俺を舐めてることの方が意味が分からないけどな……いい加減、現実を見ろよ。もう配下の魔人達はいないぞ」

「貴様……魔人達と我の力を同一視すると……死ぬぞ」

「言ってろ……」


魔人達の全てが魔力の塵となって消え去った荒野で、俺と魔王は相対していた。魔人達がいなくなったことで余裕を失った魔王は多少、怯んでいたが……俺の煽りが失敗したかな?


「そろそろ……終わらせようか」

「こちらもそのつもりだ……貴様さえいなければ、世界を滅ぼすのなど容易い」

「安心しろ。お前一人だけなら惨殺できる人間は市井にもいるからな……まあ、お前が俺を倒せるかは知らないけど……絶対に無理だろ」

「………貴様……絶対に死んでもらう……<身体能力強化ステータスアップ> <暗黒装甲ダークコート>」


魔王は自身を強化すると、自分の手に闇属性の魔力を纏わせると、俺に向かって飛び込んできた。


「……お前なあ、<転移テレポート>が使える相手に物理で殴りに来るとか……馬鹿なのか?」

「言っていろ……」

「……まあ、俺も<転移テレポート>は使わないけどな……さてと、同じ戦法で正面から潰してやるよ……<身体能力強化ステータスアップ> <能力値限界突破ステータスオーバーロード> <思考加速ドライブ> <重力制御グラビティコントロール>」

「詠唱が長すぎたな……消えろ」

「お前がな」

「はっ……グボオオッッッ」


俺に向かって来ていた魔王は直前で俺を見失い、直後に横方向に音速で吹き飛ばされた。


「なっ、速すぎる……」

「<能力値限界突破ステータスオーバーロード>の能力を最大限まで活用すれば、音速の数倍は軽く出る」

「それでも……思考と、身体が、その動きに、追いつくわけが……」

「追いつくよ。そのために色々と補助の魔術は使ってる」

「あの速度で自身の体を制御しながら、一体いくつの魔術を、同時制御していたというのだ……」

「うーん。精々五つかな」

「化け物、が……」

「お前が言うな」


俺が音速で動けた理由は二つの魔術にある。一つ目は<思考加速ドライブ>。これは脳内の電気信号の伝達速度を加速させることで思考速度を上げる魔術だ。脳にかかる負担がすごいので、各属性の治癒魔術を同時併用しなければならないが、その優位性が圧倒的だとは思っていたが……正直言って魔王レベルでもなければ使う前に終わるからな。


「……<魔法威力倍加マジックロード> <暗黒破壊……」

「遅い」

「なっ……」


続けて、魔王が魔術を放つ前にもう一度杖で側頭部を殴って吹き飛ばす……<重力制御グラビティコントロール>で自身にかかる重力を足元に向かっての1Gだけに限定しているおかげで、どれだけ加速しても俺の体には負担はかからない。しかしこの魔術で加速、減速は思いのままなので、正直言って<能力値限界突破ステータスオーバーロード>は使わなくてもよかった気がするな……


「過剰火力だったかな……」

「舐めるな……<暗黒流星ダークメテオ>」

「さっきのか……<次元切断ディメンジョンスラッシュ>」

「なっ……空間ごと、魔術を切り裂く……だと」

「余裕だよ。さてと……そろそろ殺しにかかろうかな。音速で吹き飛ばされても死なない頑丈な体だから……多少、手荒い真似にはなるけどな」

「……くっ、<闇弾ダークバレット>」

「苦し紛れの弾幕か?まあ、意味はないけどな……<転移テレポート>」

「なぜ転移系魔術が使える。私の結界で封じているはず……」

「あの程度師匠の結界に比べたら、弱すぎる。さっきあんたを吹き飛ばした時に……ついでで破壊させてもらった」


魔王が張っていた星魔術結界<星空の守りプラネタリウム>は修業時代の初期に師匠が俺を一定範囲に閉じ込めるのに多用していた魔術だ。構造は知り尽くしているので、魔力さえ使えるのならどんな状況でも解除できる。


「終わりだ、魔王。魔力の塵となって消えろ」

「くっ……<暗黒障……」

「……<魔力喰らいマジックイーター>」

「なぜ、結界がその魔術で消せるというのだ……」

「魔力に戻った後で自分で調べろ……<神槍ロンギヌス>」


最期に光の槍を空に浮かべて魔王にこう言った。


「自害するか、殺されるかぐらいは選ばせてやる……どうする?」

「……<魂喰らいソウルイーター>……死ね……はっ……」

「……<反射障壁フォースシールド>……で、自身の魔術に殺される気分はどうだ?まあその魔術は反射するときにただの魔力エネルギーの塊になっているわけなんだが……」

「……<闇……」

「終わりだ」


魔王の胸に深々と<神槍ロンギヌス>が突き刺さり……やがて、そのまま魔王は崩れ落ちた。






「終わった、か……」


魔王から完全に魔力のエネルギーが見えなくなったことを確認して、俺は魔王に背を向けて王国軍のもとに戻ることにした。


「さてと、割と色々と魔術の実験もできたし得だったな。まあ、それ相応に魔力消費が多いから実戦ではシャレにならないものの方が多いけどな……って、これが実戦か」


実際には<能力値限界突破ステータスオーバーロード>を使うとしたら間違いなく魔神との戦いぐらいだろう……これを対人間との戦闘に持ち込むとか考えられない。というかそれなら普通の上級魔術を使った方がいい。


「考察は帰ってからでもできるし、早く帰るか。詩帆も心配してるだろうしな……待てよ」


俺はそこまで今日の戦闘を振り返ってから、ふと違和感を感じた。そしてその違和感は、直後に危機感へと変わる……


「待てよ……なんで、魔王は死んだはずなのに、魔力の塊として、霧散しないんだ?」


魔王の身体が魔人同様魔力だけでできていることは分かっている。生命体としての活動が終われば、奴は間違いなく消滅しなければおかしい。


「……ということは……」


背後を振り向こうとした瞬間、何かが俺の背後に突っ込んできた。俺は反射的に結界を展開しながら<身体能力強化>をかける。直後、その物体は結界を貫通して俺に向かってきた。それを杖で受け止めた時、俺はようやく奴の正体を知る。


「……魔王?ただ、様子がおかしい……狂乱状態か?」


そこにいたのは魔王だった。ただ、さっきまでとは違い、目に理性の色はなく、その代わりに魔力の量や身体能力が異常だ。


「というか、これって<能力値限界突破ステータスオーバーロード>かよ……」


しかも魔王にかかっている強化魔術は<能力値限界突破ステータスオーバーロード>だ。それ相手にただの身体能力強化では分が悪い、俺は即座に自身にもそれを掛けなおす。


「くそっ、こうなったら本気で終わらせる……っつ……<反射障壁フォースシールド>」


俺の杖を押し込もうとしながら魔王は俺に向けて<暗黒破壊槍デスブリンガー>を放ってきた。その威力は先ほどとは桁が違う。間一髪、結界で反射したが、結界が持つかどうかギリギリの威力だった。


「舐めてると死ぬな……<負荷上昇オーバーロード>……はっ、これで動くかよ……<氷結領域アイシクルフィールド>……これでも動けるのかよ」


魔王の動きをかかる重力を十倍にしてやることで止めようとするが、魔王はその重力の枷を振り切って動こうとする。それをさらに<氷結領域アイシクルフィールド>で凍結させたがそれでも意味はない。

続けざまに奴の周りの気圧を増加させ、温度を絶対零度にまで下げるも、それでも魔王は動く。


「……どうなってるんだ……まるで、奴の周りだけ物理法則がねじ曲がっているみたい、だ」


魔王からの攻撃を同様に受け流してはいるが、このままではまずいぞ……


「……くそっ、魔術攻撃も効いてるけど、奴の修復の方が早い」


拘束を諦め、大規模魔術を片端から撃ちまくっていく。氷魔術と火魔術を併用して、数万度の温度差を作り出したりもしてみたが、奴が崩壊しながら周りの魔力で自身を修復するため、むしろ逆効果だ。


「方針変更だ……<反射障壁フォースシールド> <座標固定結界ホールディングフィールド>」


魔王から大きく距離をとった俺は奴の周りに結界を張り、奴の転移を封じた。その状態で物理魔術を用いる。


「……<原子操作バーティクルオペレイト>」


錬金アルケミス>よりさらに精密な原子操作が可能なこの魔術は素粒子すら操れる。それを利用して俺がやる魔術は……絶対にこの世界に持ち込んではいけない技術だ。


「いくら、お前でもこれは耐えられないだろう……吹き飛べ」


閉鎖された空間内で俺が変質させた内部の原子が次々に核融合を起こす……つまりは


「e=mc2。質量とエネルギーの等価性を表した公式……平たく言えば……」


結界内部で爆発的に核融合が進み、臨界に達する。その兵器の名は……


「原子爆弾……人類史上、最も危険であり、同時に素粒子論の果てに生み出された物理学の一つの答え……まあ、俺は兵器なんて大嫌いだし……二度とこんな魔術は使わないけどな」


爆発的なエネルギーが結界を突き破ろうとするのを膨大な魔力で補強することで押さえ込む……


そして全ての反応が治まり、放射線を分解した後、結界を解除すると……中にはガラス化した地面しか残されていなかった……


「終わった……」


膨大な魔力を使ったことと、戦闘と放射能被害への恐怖から解放されて、俺はその場に座り込んだ。


「やっと、か……ふう。土壇場で成功してよかった」


さすがの俺もこんな緊急時でもなければあんな禁忌は侵したくない。だからこそ今まで使ったこともなかったのだが……あの場合、確実に消せる方法と言ったらあれが手っ取り早かったしな。緊急避難ということで勘弁してもらおう。


「もう二度と使わずに済むように……もっと自分を鍛えないとな」

「雅也」


そう、呟いているところに<転移テレポート>で詩帆が現れて、そのまま俺に飛び込んできた。


「大丈夫、怪我とかしてない?」

「ああ、この通り、無傷だな」

「そう……何かあった?」

「……やっぱり分かる?」

「ええ」

「そうか……ちょっと、使いたくない魔術を使わざるを得なくなって……」

「うん、お見事ですね。まるで千年前の賢者達を見ているようです……危険度はあなた達の方が……」

「誰だ」


俺が詩帆に話し始めた瞬間、辺りに拍手の音が響いた。それと同時に調子の良い声が聞こえてきた。その方向に目をやると、そこには燕尾服姿の奇妙な男が立っていた。


「誰?それをあなたが聞きますか……クライス・フォン・ヴェルディド・フィールダー……いえ、湊崎 雅也と呼んだ方がいいでしょうか?」

「雅也。どういうこと?」

「なるほど……魔神の眷属、か」

「ご名答。魔神様第一の眷属アルファと申します」


アルファと名乗ったその男は、大げさに礼をしてから俺に笑いかけた。

面白かったらブクマ、評価などいただけると嬉しいです。

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