第八十五話 王軍の戦い 軍務大臣side
本当の意味での番外編です。最後にこの男の下種さを知っていただこうと書いただけですので、不快な方は読み飛ばしていただいても結構です。
俺は陛下がいらっしゃる天幕へと足を踏み入れた。
「陛下。お加減はいかがですか」
「ああ、グレーフィア軍務卿。戦況はどうかね」
「まずまずといったところですな」
実際はまずまずな訳がなかった。前方に配置した農民兵は弱すぎて糞ほどの役にも立たず、紙屑のように消え去っていくばかりだ。あれじゃあ時間稼ぎにもなっていやしない。しかし、俺は自身の名誉のためにこういうしかないだろう。
「もうあと、数時間もすれば勝どきが聞こえてきますよ」
「そうか、そうか……」
「では陛下。まだ戦場指揮がございますので」
「おお、そうか。では頼んだ」
「ありがたきお言葉です」
そう言って俺は天幕を出ると、入り口を警備している兵に陛下を外に出さないことを厳重に言い含めてから、すぐ隣の自身の天幕に入った。
「まったく、こんなことがなければ軍事予算を使い込んで好き勝手ができたのによ」
戦争は理不尽だ。こんなことさえなければ、暇なままだったのに。軍務大臣という役職上、戦場にはいかなきゃならない。軍事の知識なんて欠片もないがな。
「挙句の果てに、ユーフィリアは子爵家の三男なんかにうつつをぬかしやがって……」
それが最近の最も腹の立つことだ。娘には美味しい嫁ぎ先に行かしたかったんだが……あいつは、自分の魔術の才が少しあるからと、調子に乗って俺に無視して人脈を作り出し、あろうことか子爵家の息子なんかに惚れて……
「しかも、惚れたのがよりにもよってあのクソガキだぞ」
誰でも倒せるような魔人を自分でなければ倒せないなどと、言って褒賞を与えようとした陛下の勧誘を断わったクズ野郎を好くとかどうかしてる。
「……今度、調教してやらねえとな……ヒッツヒャッツハハハハ」
戦場にいるとは思えないような下品な笑いはいつまでも天幕の外にまで響き渡っていた。
正直に言うと、もう少し長くなる予定だったのですが、こいつをこれ以上書く精神力がありませんでした……
明日は三話投稿して、明後日からは通常通りのクライスsideです。




