親父の死
〜これは遥か昔の話です。この国の南にある魔宮のモンスターが人間界に攻めてきました。王様はすぐに軍隊を向かわせましたが強力な魔力を持った魔王の前になすすべなく敗れました。その時一人の勇者が現れたのです。颯爽と現れたその勇者は人並み外れた剣術と魔術で魔王に挑みました。勇者は自分の魔力と引き換えに魔王の剣を手に入れました。その剣で見事魔王を打ち取ったのです〜
俺の名前はリン、町のパン屋さんだ。しかしひょんなことから勇者をやっている。これは一人のパン屋の青年が一人前の勇者になるまでのお話だ。
〜リン〜
ある晴れたへ実の朝だった。いつも早起きな親父がいつまでたっても起きてこなかった。俺が14歳の時だった。4歳の時に母さんが死んでから10年間、二人で暮らしてきたたった一人の家族だった親父が死んだ。不思議と涙は出なかった。よりによって昨日店を継がせたい親父と冒険者という将来の夢のことで喧嘩をしたばかりだった。仕事熱心な親父だった。34年前親父が店を開いて以来一日も母さんが死んだ時でさえも休まなかったこの店を俺は休ませた。幼馴染のメルも心配してくれて声をかけにきてくれた。それが俺にとってはそれが大きな心の支えだった。俺は小さい頃から大好きだった。
親父の死からしばらくたったある日のこと、俺は親父の遺品を整理することにした。
「全くもって真面目というか、面白そうなものは何一つねぇなぁ」
タンスの一番下の引き出しを開けると明らかに周りとは異質な何かがそこにはあった。とても見覚えのあるものだった。誰もが絵本の挿絵などで一度は見たことがあるだろう。俺はこれに憧れて冒険者を目指したんだ!
「ま、魔王の、魔王の剣、だよな・・・」