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山奥の屋敷

 俺はどうやら道を間違えたらしい。

 釣り仲間といっしょに山奥にあるイワナ釣りにのスポットに出かけたがよかったが、俺が立ちしょんべんをしていたら仲間とはぐれてしまった。携帯で連絡をしようとしたら園外のようだった。道なりに歩いたら追いつくだろうと思った俺だったが、その考えがあまかった。俺は完全に道に迷ったようだ。

 どれくらい歩いたかわからないが、空模様があやしくなってきた。このままだと遭難するのではないかと俺は思った。

 山道を歩いていたら家が見えた。俺はその家に近寄った。遠くからだとわからなかったが、家というより屋敷といったほうがよかった。この屋敷は、山奥にあるには手入れがよくしてある。

 

「すみませーん。だれかいませんかー」

 

 俺はおおきな声でいったら、奥の部屋のほうから返事が聞こえた。奥から出てきたのは赤い着物を着た女の子だった。

 

「ちょっと道を間違えたみたいで・・・こんな山道に家があったものだから・・・」 

 俺は、その女の子に言い訳みたいにいうと、女の子は上品に口を押さえて笑いをこらえていた。俺はなんだかはずかしくなって顔が赤くなった。

 女の子は、俺の顔を見ると家に入るようにいった。 

「遠慮しなくてもいいのですよ」

 

「じゃあ、ご両親にアイサツでも・・・」

 

「お父さんはいないわ。お母さんと二人だけなの」

 

「それでは、お母さんにアイサツを・・・」

 

「結構です。お母さんはいま病気なので・・・失礼ですけど、おじさん、ちょっと汗臭いんですけど」

 

「じつは、ここに来たのははじめてでして。仲間と釣りをしに来たのですよ。ここはイワナがよくとれると聞いてね。そしたら仲間とはぐれたらしくて。でも助かりましたよ。まさかこんな山奥に・・・」

 

「いまからお風呂を沸かしますので、それまで部屋でまってください」

 

 女の子は、俺のこれまでの説明をさえぎった。女の子に案内された部屋は、きれいな和室だった。

 

「お風呂の用意が出来ましたら呼びますので、それまでくつろいでください」

 

 女の子はそういうと、部屋から出ていった。

 俺はリュックから、和室のちゃぶ台にコンビニで買った弁当を置いて食べた。 俺はあらためて和室を見て違和感を感じた。だがそれが、何なのか俺はわからなかった。弁当を食べ終わると、女の子が入ってきてお風呂の用意が出来ましたといった。

 俺は女の子の後に案内されて風呂場にきた。風呂場もきれいだった。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

 女の子は風呂場の扉を閉めた。

 風呂の湯はちょうどいい湯加減でとても気持ちよかった。でもまた疑問がわいてきた。この風呂はどうやって湯をわかしているのだろうか。ガスをひいてあるのか。もしひいてなかったら、どうやって風呂をわかしているのだろうか。あの女の子が薪でわかしているのか・・・

 そういった疑問を残ったが、俺は山道に迷った疲れがとれていった。

 

「着替え、ここに置いときます」

 

 俺は風呂からあがると、女の子がもってきた着替えを見た。それは白い浴衣だった。俺は、なんだか死に装束みたいだと思った。

 何かおかしい・・・

 俺はこの屋敷の疑問がわいてきた。屋敷の中がきれいなのだ。

 あの女の子ひとりでは、とてもではないがこんなきれいにはできない。母親は病気みたいなので掃除ができない。ではほかにだれかいるのかといえば、そんな気配はない。

 俺がそんなことを疑問に感じながら部屋に戻った。俺のリュックのうえに一匹のクモがいた。俺はクモを払い落とそうとすると、女の子が俺の手を掴んだ。

 

「何をしようとしているのです」

 

「いやぁ、その、俺のリュックに乗っているクモを払おうとしているんだけど」 

「クモは、私たちにとって家族です。ここではクモを殺すことはやめて下さい」 

 女の子が強い口調で俺にいった。

 そのときだった。突然カミナリが鳴り、雨が降ってきた。雨はやみそうになかった。

 

「もう日が暮れたのと、豪雨で地面ですべってケガでもしたらたいへんなので、お母さんが泊まっていってはどうですか、といってます」

 

 俺は女の子の母親の好意に甘えて、一晩この屋敷に泊めてもらうことにした。 俺が泊めてもらう部屋には、もう布団がひいてあった。俺は布団の中に入り寝ようとした。俺は布団をさわった。絹みたいだが絹でない。ただいえることは一度も使われてない感じだった。

 俺は頭のなかの霧が晴れた。

 この屋敷には生活感がない。

 いったいこの屋敷は何なのだ。なぜこんな山奥にこんな屋敷があるのか。

 俺はとても恐ろしくなってきた。この屋敷は人が住むところではない。人でない、なにかがこの屋敷にいるにちがいない。

 この屋敷から逃げるために服を着替えなおし部屋の扉を開けると、女の子が立っていた。

 

「ちょうどよかったです。お母さんがあなたに会いたいといってます」

 

「ちょうどいま仲間から連絡があって、ここを出なくてはいけないんだ。だからお母さんには会えないといってくれないかな」

 

「それはできません。あなたはお母さんに会わなければならないから」

 

 俺は屋敷から逃げようとしたが足が動かなかった。いや、動けなかった。足に何かが絡みついていたのだった。

 俺は足元を見た。

 無数のクモが俺の足元にいた。クモは糸を吐き出して、俺の足を動かさないようにしていた。

 俺はクモを払いのけようとしたが、今度は手が動かなくなった。クモが俺の手に糸を巻き付けているのだった。

 

「さあ、いまからお母さんに会ってもらいますから」 

 俺は最後の力を降りしぼって、女の子を突きとばした。

 女の子は糸が切れたみたいに動かなくなった。よく見ると、女の子の体には無数の糸があった。女の子は操られていたのだ。

 俺はクモの糸を払いつづけたが、クモの数がだんだん多くなってきていた。とうとう俺の体は、クモの糸に絡められて動けなくなった。

 クモは、動けない俺を屋敷の奥に連れていかれた。その部屋は、女の子がいっていたお母さんの部屋だ。部屋の扉が開くと、一匹のクモがいた。そのクモは俺よりも大きく、女の顔があった。

 

「おどろいたでしょ。でも私はうれしいの。だって人の肉を喰らうのは久しぶりだから」

 

 俺は声もでなかった。クモが俺の口に糸を絡めて動かせなかったからだ。

 

「屋敷のなかの女の子を見て安心したのが運のツキ。こんな山奥で女の子が生活できるわけないでしょう。ダマされたあなたが悪いのよ。そのおかげであなたみたいな人が、この屋敷に来るから。あの子には助かるわ」


 女の子が俺の後ろに立っていた。女の子は無表情だった。それはそうだ。女の子は人でないから。その証拠に女の子の口からクモが何匹かでてきた。

 俺はもがいたが、逆にクモの糸に絡まって身動きがとれなくなった。


「そんなに動いてもムダ。あきらめなさい」 クモは俺の首にかみ付いた。俺の意識がだんだん薄れてきた。

 

「大丈夫よ。食べるのはあなたの中身だけだから。あなたの皮だけはのこしてあげる。いつまでもあの子だけでは不安だから。あなたとあの子のふたりだと、また迷ってきた獲物があなたたちのことを親子だと思って油断するでしょうね」

 

 クモはそういってまた俺の首を噛んだ。今度は血が吹き出して女の子の着物にかかった。

 女の子の着物が赤いのは血のせいなんだ。俺が気付いたときにはもう意識が無くなってきた。

 




 熟年の夫婦がこの屋敷の前に立っていた。夫婦は疲れきった顔をしていた。

 

「だれかいませんかー」夫がいった。

 

 屋敷からでてきたのは、赤い色をした着物を着た女の子と父親だった。

 

「どうかなされましたか」父親はいった。

 

「道に迷いましてね。助かりましたよ」


「それはよかったですね」 

「あのう、この屋敷で休ませてもらいませんか」


「もちろんいいですよ。大歓迎です。うちの子が案内しますので」


 夫婦は、女の子に案内されて屋敷の中に入っていった。 夫婦が屋敷の中に入っていくのを見た父親。また新しい獲物がきたが、今度の獲物もまた年をとっているから、また愚痴をこぼすだろう。でも、この登山ブームで、獲物は熟年の人ばかりだからしかたがない。

 あれは納得がいかないだろうがしかたがない。俺たちはここから離れては生きていけないから。 そろそろ風呂を沸かす準備をしよう。あれは人の汗が苦手なのだ。

 俺はまだ人としての理性はもうすぐなくなる。クモが俺の体を喰いつくしている。頭も喰われるのも時間の問題だろう。


 もう一度釣りをしたかった。ここのイワナは美味いと聞いていて、食べたかったと思う俺だった。

携帯の調子が悪くて、やっと書き終わりました。ホラーは難しいですね。

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