店主の日常?1-1
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「......暇だぁ...。誰だよ、こんなところに店を構えたの。......あ、先代だったわ...。どうして、こんなところに店を出して売れると思ったんだか」
店に誰もいないことを独り言でごまかすアデル。
今日、店を開けてから1度も席を立たずに読書をしていて凝り固まった身体をほぐしながらけだるそうに立ち上がると、気分転換のために店の入口へと向かった。
店を出るとそこには、活気づく大通りが......なくモンスターを入らせないための巨大な壁で前が塞がっており、日が差さないために暗く細い道が前を横切っている。
右にまがって少し進むと大通りがあるのだが、わざわざ北門から町に入って壁沿いの暗い道を通って小さな魔道具店に入る人はいなかった。
ただし例外もいるのだが......。
少し時代遅れな魔道具店を経営してるとしてももう少し大通りに近いところにあれば、売れるのにと毎日思っても仕方が無いことを考えていると、
「おーい、店番やっていなくていいのかアデル。客が来るかもしれないだろ」
「当然のように客が来ないからってバカにするなソーマ」
今、話かけてきた失礼なこいつとは、俺が国に入ってきて魔道具店を継いでから初めてできた同じ歳の親友だ。
一応、俺も店を経営する立場として服装はしっかりしているが、それでもモテるために生まれてきたと言っても過言ではないこいつと俺とでは、天と地ほどの差があるほどモテ度が違う。
黒髪黒目という少し珍しい格好をしながらも顔は細く、身体付きも細いなりに引き締まった筋肉が身体の動きでもすぐに分かってしまうほどだ。
「まぁ、バカにしたことは、置いといて。どうするのさ。今日だろ、能力検査。本当だったら3年に1度測るのに毎回、仮病や逃走して測ってないけど...。どうやったらこの国のエリート能力者から逃げることができるんだか、僕も教えて欲しいよ」
「それは、企業秘密だな。いくら親友だからといって教えるわけには行かない」
「...冗談のつもりで言ったのに、それに真剣に答えるなよ...」
残念そうな声でつぶやいたがすぐに元の表情に戻ると言葉を続ける。
「君がいつも逃げてるおかげで一部の能力者の人は、その日の休日が無くなっているんだからな。自重しろ」
「はぁ、能力者の皆さんも大変だな、なんでそんな面倒なことをしているのか。俺には全く理解出来ないな」
その言葉を聞いたソーマは、呆れたようにアデルの顔を見ながら、
「それは、この国の王様が決めたからだろ。能力の誤った使い方をしないためにって」
「そんなことは建前だろ、能力の検査をして危険な人物をこの国に縛りつけるためなんだから」
国のことをサラリと侮辱するがソーマは、何も聴かなかったとばかりに話を続ける。
「まぁね。でも、今年は受けてもらうよ」
「なんでさ。なんかあったのか」
「毎回出ないが為に国からの依頼が僕のところに来たからね。今年こそ受けさせるようにって。まさか王様直々の伝言まで来るとは思ってなかったけどね」
「へぇー、そんな馬鹿なやつがいるのに捕まえられないとは。王国も堕ちたもんだ」
「自分のことを、他人事のように言える君は素晴らしいよ」
「ありがとな。なんか......、照れるな」
「褒めてないからね...。今年で18歳だから能力がある人が通う学園があるじゃないか。そのために能力を確認しないと」
「能力なんて知らね。測る意味も無いしな。後、勉強面倒」
そう言って、首を振っているアデル。
「今年は、その馬鹿なやつのために20人ほどの能力者がこの国に集まっているんだってさ。知らないだろ」
「馬鹿な奴って......、大変だな。どこのどいつだ。そんな面倒なことをしているのは」
「...僕の目の前にいるだろ。毎回、仮病や逃走をして一回も測ったことがないやつ。さっきもこんな感じで話したと思ったんだけど違ったかい?今回も逃走するなら、全力で捕まえるそうだし。説得に来たんだよ僕は。時間も少ししかかからないのになんで逃げるのさ」
少し理由があって逃げているのかと思いアデルに聞いてみた。
「そんなのは簡単だろ。面倒なのはいつも嫌いだっていつも言ってるじゃないか」
ソーマは諦めと呆れをもった表情でため息をついた。
「はぁ」