アデルとの交渉1-4
「......え。...う......うわぁぁぁあああ」
「..................。」
ソーマが叫んだ。
手にはまだ、肉を突き刺さし、血管を引き裂き、骨を砕いた感触が残っている。
全身には、ミーレスの血が染み渡り自身が殺したことを強調している。
血まみれの手が震えて止めようとしても止まらなかった。
悲惨な叫び声と先程の光景を見ていたアブとファルサは声をかけようとしたがなんと声をかければいいのか分からず目を伏せた。
辺りに新鮮な血が追加された。ミーレスが吐血したようだ。
まだ生きているが今から回復させることは無理だろう。
全体をぼんやりと眺めていたアデルはコツコツと音をたてながらミーレスに近づく。
そして、ミーレスの身体を貫通している錆び付いた鉄の剣を乱暴に引き抜いた。
「ぎゃゃゃぁぁぁああああ」
ミーレスが絶叫する。
傷口はアデルが引き抜いたせいで広がっていた。
中からは、血が滴り落ち、白い物が顔を覗かせている。
血が一箇所に集まり、地面に広がっていく。
血はアデルの足の間を通っていき、ソーマの元にたどり着く。
ソーマが崩れ落ちた。叫び声はすすり泣きに変わり、声を上げていたことでその時の感触を本能が忘れようとしていたが冷静になったことで人を殺した感触が鮮明に蘇ってきた。
自分の右手を涙で濡れた瞳で見つめる。
その姿を一通り見ていたアデルの手から錆び付いた鉄の剣が滑り落ちていく。
鉄の鈍い音が店内に響き渡る。
何回か跳ねた鉄の剣は静かに横たわった。
コツ コツ コツ
静かになった店内に足音が聞こえる。
目を伏せていたアブとファルサ、血まみれで動かなくなったミーレスを見ているアデルはお互いを見るが誰も歩いていない。
ならばとソーマを見るが地面に崩れ落ちた時の姿から変わっていない。
アブとファルサは警戒するがアデルは誰か分かったようで商品棚を見ながらその人物に問いかける。
「おい、サギちゃん。さっきから空気読んでいたようだが最後は俺が締めるだろ普通。勝手に出てくるな」
商品棚の影から小柄な体格をした人物がひょっこりと顔を覗かせた。
「...誰がサギちゃんなのよ。不老族限定の能力だから仕方ないでしょ」
そう言ってため息をつくがアデルは、見てない・聞いてない・知らないを使って(そんな能力はない)全力でスルーした。
「75歳のくせに見た目が10歳で言葉使いも頭の中も幼い奴のことを周りは年齢詐欺師って言うからな。だからサギちゃん。異論なし」
「......お前の理論はよく分からないよ...。
でも、頭の中は75歳分の経験と知識があるし名前もドクス・ケーラって言う自他共に認める魔道具の革命娘って名称があるしね」
ドクス・ケーラは凄いオーラ(可愛い)を出しながらアデルを見る。
...肝心のアデルはソーマを観察しており、全くと見ていなかった。