アデルとの交渉1-1
アデルが先程とは違い純粋な殺意を放っていることに気づいたのかソーマがアデルとファルサ達の間に立って殺気を1人で受け止めていた。
「アデル...、これはどういう事だい。2人は何もしていないじゃないか。それに殺気まで浴びせて...どうするつもりなんだ。」
アブとファルサはいきなりアデルから殺気を浴びてしまい、喋れなくなっているがすぐにソーマが間に入ったことで時間はかかるが硬直から抜け出せそうだ。
「何もしていない?そんなはずは、ないだろう...。それに今のところは別に何もしないぞ。返事しだいだな。」
「とにかく、こっちに向けてる殺気を消してくれないか。僕は、たまに...いや、起きている時の九割くらいかな?特に理由も無いのにほとんどの男性がすれ違った時に殺気を放ってくるから慣れてるけど...後ろの2人が耐えれるくらいには抑えてあげて欲しいな」
「......お前が殺気を浴びる理由なんて一つしかないだろ...。殺気を浴びたくないなら大勢の人がいるところで2人以上の女といちゃつくな。そのうち、殺されるぞ......。まぁ、ソーマは後で殺るとして......これくらいなら話せるだろ」
「え、待って。なんか不吉な言葉が聞こえてきたような...」
ソーマは身震いをするがアデルは無視して、ファルサとアブの方に向き直った。
「おい、いきなり殺気を浴びせた理由はなんだよ。俺達は何もしていないじゃないか」
アブは話せるようになったがファルサは先程の気絶したダメージが残っているのかまだ喋れないようだ。
「知らないのか、それとも隠しているかは分からないが...。...この顔を見れば分かるか…。」
アデルはそう呟くと右腕を伸ばして指を一回鳴らした。その行動を見た三人は身構えるが鍵が開いた音がしたかと思うと大きな音で奥の扉がゆっくりと開いていく。
扉の奥は薄暗く、生暖かい風が流れ込んできた。
「...............。」
三人はアデルの行動に意味があるのかと困惑していた。
しかし、声に出してはいけないような雰囲気だったので誰も指摘しなかった。
扉が完全に開いた後、左右のロウソクに火が右、左と1本ずつ灯っていく。
時間にして10秒ほどたっただろうか。
扉の奥の廊下がロウソクの淡い光で照らされており、先程よりは奥まで見えるようになっていた。
奥には、廊下よりも少し小さめで縦長な物体があることが分かる。
それを見ることに本能的に危機感を抱いていたファルサだったが好奇心に駆られ目をこらして見てしまった。
「あ...、あれは......。ミーレス...なのか...」
そこには、細い丸太に縛り付けられ、ボロボロになっていたミーレスの姿があった。