行動開始です1-3
ソーマに子供に避けられたことを言われるとアブは目に見えて落ち込んでしまった。
「...ロリコン。(ボソッ)」
「あぁ?なんだと、ソーマ。」
「僕じゃないですよ。アデルですって」
ソーマはあたりを見渡すとアデルが店の奥にあるカウンターでファルサに飲み物を渡しているところだった。
「...アデル。てめぇ......」
「静かにしてろ。いちいち大きな声を出すなアブ。」
「すいません......」
アブはファルサに一括されて大声を出すことはなかったが縮こまってソーマと魔道具について語り合っている。
「済まないな。部下の礼儀がなっていなくて」
「大丈夫ですよ。どうせ、たまにしか客は来ませんし。」
「お前...敬語使えたんだな...」
「いつもは敬語使いますよ。イラついている時は、使いませんけど......」
「でも、敬語は気持ち悪いからやめてくれ。先程のことがあったからお互いに敬語はなしで行こう。」
「ひどくね。まぁ、そっちがそういうならいいけど...」
ファルサはアデルと話すことで本性を見抜こうとしたが元はいい奴なんだと確信した。
その証として出てきた飲み物を一気に飲みほして警戒してないことをアデルに示した。
「この飲み物は...。予想だがデウス・ウェントスの飲み物じゃないか?あの国は一部を除いて鎖国していたはずだが...。それに鎖国をやめさせるために攻めたメルム帝国がウェントスの魔道具と兵士の武器や防具が高性能だったためにボロ負けしたと聞いたが...」
「あぁ、あの時か...。懐かしいな...」
アデルは何かを思い出すかのようにつぶやき表情が和らいだ。
「あの時?もしかしてその戦いに参加していたのか。だとしたら凄いな。その時にウェントスで何か借りでも作っているのか?その国と交易している商人だったりしてな」
ファルサの話を聞いていたアデルは、一瞬険しい顔つきになると少しくぐもった声で質問する。
「それって調べたのか?」
「ん?...調べるって何のことだ?」
「あ、そうなの。ならいいや。」
ファルサが否定すると安心したようにほっと息を吐き、元の声に戻った。
「さっきの飲み物のことだけど......。あ、今から言うことは誰にも言わないと誓えるか?誓うならこれに触れてくれ。」
そう言うとアデルは、四角い石に魔法陣が書かれた物を取り出すとファルサの前に差し出した。
「何だ、これは」
「これは、契約の石と呼ばれる魔道具だ。これの効果はその名の通り触っている物同士が契約を交わすとそれが無意識に守られるようになる。契約主が契約を辞めれば契約がきれるという優れものだ。どうする」
「...どういう事だかさっぱりだが......。分かった、誓おう」
アデルとファルサがお互いに石に触れると石が明るい光に包まれて数秒後に収まった。
「......良し。契約完了だ。飲み物のことだけど、直接俺が仕入れているからな。さっき言ってた戦争も俺と俺に関わりがある者達が協力してくれたおかげだしな。」
「.................................え?聞き間違いか。直接仕入れていることと戦争の立役者ってことが聞こえてきたが...」
「そう言ったんだが...。まぁ、この情報はそれに関わっているやつしか知らないしな。多分、お前の上司でも知らないだろうな。どこの国もヤケになって探してるくらいだし。」
国に関わる重大な情報を聞いたファルサは声にならない悲鳴を上げた後、自身の脳が処理できる情報量を上回ってしまい椅子から滑り落ちて気絶してしまった。