プロローグ
薄暗い洞窟の中、そこには1人の少年と
1人の少女がいた。
周りはいままで激しい戦闘があったことを物語るように赤黒い血のあとや壁から崩れ落ちた岩、さまざまな形の肉片や骨などが散乱している。
その少年は、身体に隙間のないほどの切り傷や火傷、服に血がこびりついている状態で地に伏しており、少年の近くにしゃがみこんでいる少女は擦り傷や服が汚れているが少年のように死に関わるような大きな怪我はなかった。
「ねぇ......、起きてよ。死んじゃやだよ。......起きてまた遊ぼうよ」
「......あぁ、大丈夫だよ。......泣くなって。心配しないで......。少し疲れていて眠いんだ...。先に帰っていてよ」
少女がしゃがみこみ心配そうに顔を覗きこんで少年に話かけているが少年はその場を動かずに息をするのも苦しそうに少女に話かけていた。
その少女は少年のために何も出来ずにかばってもらうことしか出来なかった自分自身を責めながら少年に声を掛け続けた。
......だが、そんな少女の行動も虚しくそのまま、少年は力尽きたかのようにゆっくりと瞳を閉じて、少女の顔がぼやけるように見えなくなっていく。
「ねぇ、起き...よ......。起き...て...ば......。起......一...に......うよ。ねぇ.........」
少年はその時、少女を守れたことに対する達成感と同時に自分が少女を泣かせてしまったことに対する罪悪感を感じながら薄暗い意識の底へと静かに沈んでいった.........。
カーン カーン カーン
太陽が出てきたことを知らせるための鐘が王国内に響き渡る。
その一角には、小さな魔道具店が店を構えていた。
窓をカーテンで仕切られた暗いその部屋の中でアデル・リシュタインは目を覚ました。
「ん。.........もう朝か...。はぁ、今日も1日始まってしまうのかチクショウ……。なんか、昔の夢を見ていたような気もするが...まぁ、いいか」