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第8話 男と女のちがい

GID特別クラス、別名Tクラスでは、保健体育の時間が普通の生徒より多く設けられていた。


それは、今後性別を超える予定の生徒ばかりだったからである。


男女の違いを普通の男女以上に教える必要があった。


入学して、数日目、最初の保健体育の授業の担当はMTFである成沢由紀子である。

成沢はその男女の違いについて、基本的なことから教えようとしていた。



「みんな、男女の違いってどう思う?

あなたたちなら、日頃からすごく感じていると思う。

一人一人答えてみて。」


成沢は教室の端から、一人一人答えるように促した。



「男は、体がでかくてごつい。女は小柄で、丸みがある。」


「男は髪の毛が短い、女は長い。」


「男は声が低い、女は高い。」


「男は胸がない。お尻が小さい。女は胸があって、お尻が大きい。」


「女性は脂肪に覆われているから体が柔らかい、男性は筋肉だから、体を触ると硬い。」


次々の常識的な答えが返ってくる。



「うーん、みんなよくわかっているわね。

でも、みんなが言わなかった大事なことがあるから言うわね。


たとえば、背が高くて、髪の毛が短くて、胸が小さく、お尻も小さい女性がいるとします。

でも、その人はやはり男性には見えません。女性に見えます。

なぜでしょうか?

逆に、小柄で髪の毛が長い男性がいます。でも女性にみえません。

なぜでしょうか?


そのヒントは体のバランスにあります。


男と女では上半身の大きさが違うっていうことを押さえておいて。」


生徒たちは、意外なことでも聞くような顔になった。


「男はね肩幅と肺の肋骨が大きいの。

第二次性徴をすぎると大きくなっていくの。

だから、胸囲が大きくなる。

女の子でいうアンダーバストは男性の場合85センチくらいになるの。


逆に女の子だったら、中学くらいから肩幅も胸囲も大きくならない。

アンダーバストは70から75くらいが多くて、そのまんま年をとっていく。

脂肪がついて、なんとなく上半身が大きくなる子もいるけど、骨格は男性みたいに大きくない。


あと肋骨についていえば、男性の場合、台形で下の方で広がっているけど、女性の場合は下のほうが

狭まっていく。それがくびれにつながるわけ。

あと女性には、男性にない骨盤が作られていって腰の張りが出てくる。

それがミツバチのような体型をつくっていくの。


だから、君たちのうちMTFは上半身を大きくしないように工夫しなきゃだめ。

体を鍛えたりすると、すぐ上半身の骨格が立派になっちゃうから注意して。


FTMは体を鍛えて、上半身を大きくみせるようにしてね。


それぞれ、15歳になればホルモン治療ができるようになって、骨格や肉のつき方を変えることが可能になるから、それまでは、なるべく男女らしい体型にならないように工夫するしかないの。」


「だったら、今すぐにでもホルモン治療を開始したいんですけど。」


生徒の一人が声をあげた。


「ごめんね。日本の取り決めでは許されてないの。ホルモン投与の体に与える悪影響や、若い人の人生をよく考えるための期間を考えた結果、14歳まではだめ。

うちの学校もそのガイドラインに従っているから、それを無視したら、退学よ。」


「厳しいなあ。」そんな声も出てきた。


「みんな、あわてちゃだめっ。体を自分の希望する性に近づけることは確かに大事だけど、それ以外にも

女らしさ、男らしさを学んでいかないとだめだからね。」



(そっかー。体が大きくならないように努力しなきゃ。

肋骨が大きくならないようにするにはコルセットがいいかも♡

強引に抑え込んじゃおうっ。

肋骨が大きくなるのを防がないと。)


ほのかは、あらかじめ研究していた対策を実施しなければいけないと思った。


姉たちからはかわいい服を着るには、体型やサイズが大事だとなんども教えられていたのである。


一方、FTMの翔は、

(よし、体を鍛えるぞ、骨格が大きくなるようにがんばらなきゃ!

15歳になったらホルモンとの相乗作用で体を大きくしよう!)


そう考えていた。


不安を覚えていたのが麻由である。


(私のお兄ちゃん、でかいんだよなあ。

私、中学の間にでかくならないといいなあ。)


美人の麻由であったが、体格と成長にはかなり問題意識をもっていた。

遺伝についてはある程度覚悟していたが、何とかホルモン投与の時期までは

中性的な体型でいたかった。


同じく不安を抱えていたのが、陸斗である。

(お母さん、ナイスバディだからなあ。

おっぱい大きくて、お尻も大きい!

あんな体型になりたくないっ。

気をつけないと。

胸が大きくならないようにずっと晒しを巻いていようかな。)


体型の変化については、12から13歳の少年少女たちはまだ予想がたたない。

第2次性徴がどのような形で自分たちに影響をもたらすかは、いまひとつ実感がなかった。


もし、自分の希望通りにいかなかったらどうしよう?と思う。


それでも、希望する男性化、女性化を実行したいとみんな強い意志をもっていた。


望まない性に生まれてしまった現実にどこまで逆らって生きることができるかチャレンジする気持ちでいっぱいだった。


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