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第12話 夏休み、中学3年生の8月

「よかったーっ。やっと、おっぱいらしい形になってきた。

ブラが引っかかってるって感じのところまで来たよ。

急激に大きくなってきたけど、やはりBカップになると違うね。」


ほのかは、自分の部屋で自分の上半身を鏡に映し、その乳房の形を確認して、満足そうな声をあげた。


もうすぐ夏休みが終わる。


もう8月の下旬だ。

ホルモン治療を始めて4ヶ月。ほのかの体は明らかに女性化した。


髪の毛はなんとなくサラサラになってきた。


顔つきは丸くなり、可愛くなってきた。

確かに以前から可愛いほのかの顔だったが、

女性の可愛さというよりも子供っぽい可愛さのほうが大きかった。

いまは、明らかに女性としての可愛らしさが強くなっていた。つまり色っぽくなってきた。


胸は最初は小さな隆起から始まったが、どんどん成長している。

今は同世代の女子と全く遜色のない膨らみである。


腰は細い。


中学1年から始めたコルセットのおかげで、50センチ台である。

女性ホルモンを始め、睾丸の摘出も7月に実施。もうコルセットはやめたのだが、ウエストは細いまま。


コルセットのおかげでアンダーバストも70センチ以下だ。

華奢なからだが維持されている。



腰の周りには少しづつ、脂肪がついてきており、このままでいくとミツバチ体型になっていくのは間違いなかった。



ところで、なぜ、おっぱいを鏡に映しているかというと・・・


今日、胸の成長を実感して、下着専門店に行って、胸のサイズを測ってもらったからである。

いままでAカップだったのが、ちょっと合わないと感じていたほのかは、店員さんに測ってもらった。


「これはBカップですね。胸が成長しています。

新しいブラに変えたほうがいいと思います。」


(やったーっ!)

試着室でほのかは飛び上がりそうになった。


そして、早速新しいブラを何枚か買ってきたのである。


帰宅後・・・

改めて、体の変化を自分で確かめたくなり、鏡の前に立ったという次第であった。


(うーん、このブラをつけて、服を着るとおっぱいがいままでよりも強調される!

よしっ、和也に見せに行こう!)



そして、30分後、和也の部屋にいるほのか。


「なんか、変わったと思わない?和也。」


「えっ、そりゃ毎回見るたびに変わっていると思う。ホルモンのせいだろ?

それから玉抜いたしな。」


和也はほのかがホルモンを始める前までは、ほのかに抱きついたり、後ろから胸を揉んだりしていたが、

ホルモンを始めてからは、ほのかに近づかなくなっていた。

部屋にほのかがいても、1メートルくらいは距離を保った。


女っぽくなってきたので、ちょっと緊張してしまうのだ。


いまの返事も照れた顔で、目を合わせないようにして行った。


「もうっ!よく見てよ。おっぱいが大きくなってBカップになったんだよ。

ほらほらっ。」


ほのかは自分の胸を手で持ち上げるような感じのカッコで和也に強く声をかけた。


和也も見ないと悪いと思い、ほのかの胸を見る。


(やべえっ。また女っぽくなった。

このままだと、押し倒しちゃうかもしれないっ。

まずいなあっ。

俺たちは親友で、そういう関係になっちゃまずいんだ。)


「ああっ、確かに大きくなったな。」


「ええっ、それだけ?もっとなんか言ってよ。」


「じゃあっ、触らせてくれるのか?」


和也は口に出してしまったと思った。売り言葉に買い言葉で答えてしまったが、明らかにセクハラ発言だ。でも触りたいというのは男として素直な気持ちだった。



「ええっ、触りたいの?

うーん、和也は男の子だもんね。

条件付きで触ってもいいよっ。服の上からだけど。」


「ええっ、触ってもいいの?

条件付きってなんだ?」



「まずは、


私に、好きだって告白して。


それで、私を彼女にすること。


次に、キスをして。ちゃんと唇にね。


私のファーストキスを奪うの。


それができれば、いいよっ。」



「おい、ちょっと待て。

俺とお前は親友だぞ。

そんなことできねえよっ。

お前のことは好きだけど、それは昔からの親友としてだ。

彼女なんて、無理だよっ。」



その返事を聞いて、ほのかは明らかに機嫌を悪くする。


「あっ、そうっ!

私、体が女っぽくなってきたから、彼氏ほしくなってきたんだ。

彼氏だったら和也がいいなあって思ってたけど、

それなら、他に彼氏つくる。

もう、ここには来ない。


かっこいい彼氏作って、キスしてもらうんだ。

おっぱいも触られて、そのあとは、どうなっちゃんだろう?


和也のばかっ!!


うっ、うううっ、うえーんっ!」


ほのかはそこで泣き崩れて、座り込んでしまった。


和也は呆然としながら、考える。


(そ、そういえば、女性ホルモンの治療をすると、精神が不安定になるって話だったな。

やっべえっ。

それに、俺はほのかのことを支えるって約束したんだっけ。

このままではまずいっ。)



和也はほのかに駆け寄って抱きしめた。


「ごめんっ。本当のことを言えなかった。

実は・・・

(もうやけくそだ!)

俺はお前のことが好きだ。

俺の彼女になってくれ。

頼むっ!」


泣きながら、ほのかが声を絞り出す。


「本当?


こんな、中途ハンパな体の私でもいいの?


性転換手術までは、まだ3年近くあるし、戸籍の変更は20歳になってからだし。


それに子供を産むことができない私なんだけど。」


「細かいことをいうなっ。

俺はお前が好きだ。

それでいいだろっ。」


確かに問題は山積みだと思いながらも、ほのかの人生を支えざるを得ないと思う和也は勇気を振り絞って、強く答えた。


「ありがとう。

私、和也の彼女になる。」


「よしっ。」

和也はほのかの唇に自分の唇を重ねた。


(ああっ、幸せ!)

ほのかは、嬉しい気分に自分の気持ちが変わるのを実感した。



キスをしながら、和也は思う。

(おっぱい触りたいけど、この流れでは無理だ。

そのうち触らせてもらおう。)


まじめな和也だった。


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