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第11話 女の子、男の子になるための努力

ほのかにしろ、翔にしろ、ホルモン治療が始められる15歳の誕生日、つまり中学3年の4月までは、体の成長については油断がならなかった。体が大人になり始めるのは中学1年からである。女子ならば、小学6年から始まる例も多い。


だから、中学1年、2年ではノンホルモンでそれぞれ希望の性別に近づく努力をした。


まず、ほのかである。


成長期ではあったが、徹底的に食事制限を行った。

ちょっと痩せすぎになるくらいであった。

男性としての成長を抑えるためには少しでも大きくなってはだめだと思ったからである。


また、運動は徹底的にしなかった。

筋肉や骨が太くなってはいけないからだ。

また、ウエストが太くならないようにコルセットも着用した。


その結果、ほのかは顔までやつれてしまい、中学入学当時に比べて、可愛さが減退してしまう。

(今は痩せすぎのみすぼらしい女の子みたいだけど、少しの我慢だ。ホルモン治療始めたら食生活変えよう。)

彼女は一時的に女性らしい顔を失っても、先を考えようと考える。

名付けて醜いアヒルの子作戦だと思う。


女性化のためには、体型以外にも努力すべきことはいくらでもあった。

声、話し方、ムダ毛処理、歩き方、しぐさ、生理日の設定、ホルモンの知識、ファッション、メイク、髪型の知識などである。

トイレの使い方やマナーも大事だった。

女性社会の中での人間関係の作り方、付き合い方というのもある。


普通の女子ならば幼い頃から自然に身につくものがある。

しぐさとか、髪型とか、着こなしなどである。

もちろんトイレの件や人間関係も。

ほのかの場合は知らなかったことも多く、中学生になってフルで女性で過ごすようになって初めて意識したりした。普通の女子より覚えなければいけないことは多かった。


とにかく一通り覚えなければ生きていけない。

普通の女子なら常識として備えていることに加え、思春期以降に覚えるべき女子の常識を。


一つ一つ意識して、真剣に学ぶほのかであった。


人に聞かなければいけないことも多く、元男性の副担任に聴いたり、実の姉二人に聴いたり、一般クラスの女子と交流を持つようにして、いっぱい情報を得た。

幸いにして、一般クラスの女子で女子力の高いグループと仲良くすることができるようになり、一緒に買い物に行く機会を作れたのは大きかった。

若い女子がもつ情報をリアルタイムで得るというのは実に貴重である。


その代わり、興味深々である同い年の女子の質問攻撃に応じなければいけなかった。

ちょっと面倒なサービスだったが、そこは我慢出来る度量の広いほのかだった。


そして料理や裁縫、手芸、茶道、お花といった女子ならば身につけておきたいことにも興味を持ち最低限できるように取り組んだ。


本物の女性以上に女性らしい心の動きと所作を覚えたいと思うからである。


一方、Ftmの柚木翔は、とにかく、たくましい体をつくろうと考えた。

そして、女子サッカー部に入部する。

2年生までという限定条件付で。


男子サッカー部に入りたいとは思ったが、いまのところは全く女子の体であり、やむを得なかった。


柔道部も考えたのだが、スマートな感じの男に最も近い女子の運動部ということになると、やはり女子サッカー部だという結論になった。

女子バレー部や女子バスケット部は意外と、女っぽい雰囲気がある。おっぱいも大きかったりする。

その点、女子サッカー部は陸上部とならんで、胸が目立たない女子が多いような気がした。

女子サッカー部に入るような女子は攻撃的な気の強い性格が多く、女っぽさをあまり感じないと

いうのもよかった。


そして、何より、胸が大きくなることを怖れた翔は、胸がまだペッチャンコである段階から、ナベシャツを愛用することにした。事前防御である。

少しでも大きくなって、あとで乳房切除なんていうのは結構面倒だと考えた。

とにかく、中学3年の4月までは胸が大きくならないようにしようと真剣に考えた。


そして体質についても研究した。

最も女性らしくない体をしている陸上のアスリートを一つの理想と捉える。

筋肉をつけて、脂肪がつかないような体型が胸の膨らみを阻害するのではないかと考えた。


サッカー部の練習に加え、脂肪が付かないような食生活やトレーニングを意識してするようにする毎日であった。


声については、とにかく低い声で話すようにした。

ドスの効いた声を心がけるのである。

興奮すると、女の子らしい可愛い声を出してしまうので、

(しまった!)ということが最初は多かったが、

慣れると、低い声での会話が当たり前になっていった。


そして、ほのか同様、男独特のしぐさや歩き方も一生懸命研究する。

少しでも女っぽさが消えるように、周囲にも厳しい指摘を求めた。



やがて2年がすぎて、3年生の4月がやってくる。


二人については努力は報われた。


さすがに、精通や初潮は始まってしまってはいたが、


ほのかも翔も、第二次性徴で性的な成長はそれほどはっきり出ていなかった。


ほぼ希望通りの状態でホルモン投与が始まった。









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