表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
最終話 『俺と彼女達の下半身事情……なんか、もう色々な意味で』
62/152

062 『我は空亡である。仕事はまだ(したく)ない』

「というわけで依織よ、お代わりをくれぬか」


 そう言いながら、我は皿を差し出す。


 本日の夕飯はカレーなのである。元々はまろやかなコクのあるルーと、その辛味を引き立てる炊き立ての白御飯が盛られていた皿は、いまや米粒一つ残らず空になっていた。


「なにが、『というわけ』ですか、これで三杯目ですよ。まぁ元より大喰らいがいますし、かなり多めに用意してありますから大丈夫だとは思いますが、明日の分ぐらいは残してくださいね」


 少々呆れた様子ながらも依織は我から皿を受け取ると、またカレーをよそってくれた。


どれほど食べても飽きがこぬ、絶品ともいって過言ではないカレーである。というか、こやつの作る料理は本当になんでも素晴らしく美味い。


かつての我ですら、もしこの味を知ったのなら己の性質を捻じ曲げてでもあの申し出を受け入れたことであろう。こんな料理を食べながら、なにも働かずに過ごせるのだから。


「ちょっと、あんた食べすぎよ! カレーは一晩寝かした方が美味しいって前に彰が言ってたんだから少しは自重しなさい、働かさる者食うべからずってこの国の言葉にも在るでしょ!」


 我が受け取ったカレーにスプーンをさそうとしたとき、そんな文句をつけられる。けれど、その理屈はおかしいと我は思う。そしてそれは料理を作った依織も同じだったらしい。


「その言葉、そっくりそのままあなたに返しますよ、レイアさん。何一つ働いていないのはあなたも全く同じですし、カレーにいたってはもう既に三杯平らげてるあなたが一番自重するべきです。えぇまさしく働かざる者食うべからず、ってやつですね」


「ぐぬぬぬ……! あんたの料理が美味しすぎるのが悪いのよ……! だからあたしは悪くない、さぁ早くあたしにもお代わりをよこしなさい……!」


「はぁ、言うだけ無駄とは分かっていますし、喜んで食べていただけるのは嬉しいのですが、なんだか複雑な気分です……」


 諦めた様子でレイアの皿にもカレーをよそってやる依織。どれだけ言ったところで納得しないと分かっているのであろう。まだこの家にきて一週間の我ですら理解したことであるし。


「まぁそう気を落とすでない、おぬしの料理が美味いのは本当なのであるから。だから我もレイアもおかわりをしたくなる、というものなのだからの」


「まぁそう思うしかない、ということなんですよね……」


 疲れたように肩を落とす依織を慰める。こやつには落ち込まれるのは困る、というかそんな暇などないのである。この家の家事全般を受け持ってもらっているのだから。


「……つーか、馴染みすぎだろ」


 そう半眼で呟いたのは、この食卓につく最後の一人にして、現在の家主である彰である。こやつの誘いに応じて、我がこの家に来て今日で丁度一週間。居心地はとても良い。


「うむ。種族は違えど、話せばなんとでもとかなるものであろう。本当に快適でよい日々である、やはり誘いを受けて正解であったの」


 今日も今日とて、朝昼は惰眠とテレビを嗜み、夕食を食べ終えたらお気に入りのサイトなどネットを適当に見る予定である。勿論、何か働いたりするつもりなんて全くない。



 ――これは、そんな我のぐーたらライフの記録である。



「……とか、書いてるわりに、それだけで終了じゃねえか」


 放り出された日記(?)を見ながら呆れ果てる。


空亡が来て一月。どうやらうちに来てから一週間目に書いたらしいその記録は、最初の分だけで終わっていた。それ以降は完全に白紙のページが続いているだけだ。


「仕方なかろう、飽きたのだから」


 悪びれずそう言うのはこれを書いた張本人、即ち我が家の居候であるところの空亡である。


 日がな一日、悪事はしないが、家事もしない。毎日ぐだぐだ寝て、起きて、遊んで、食べて、また寝る、というぐーたらニートの手本のような生活をしている存在である。


 こいつが働くまともに働く日は来るのだろうか……?


 なんてことを思っていると、その内心を読んだのか、空亡はイラっとくるドヤ顔で、何処かの小説のタイトルのようにこう言った。


「我は空亡である。仕事はまだ(したく)ない」


 そして俺は、無謀な望みは棄てることにする。


 この三日どころか一日坊主の日記が示すように、こいつがまともに動くことはないだろうと。


活動報告載せたついでに、おまけの更新。


なぜか発掘された謎の短編。

下手をしたら第二部の語り手はこの幼女になってた可能性が微レ存。

いやまぁ流石にとか形式はそのままですが。


そんなわけで、おまけ更新でした。

よければ活動報告のほうに感想やらくれると嬉しかったりします。


では、読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ