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俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
第五話 『刃の導く彼女の記憶……けれど、それは悪意に塗れたもので』
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043 『両手に花』

 翌日の土曜日、俺達は街へ来ていた。


「ほら、さっさと行くわよ! あんたがいないと色々不便なんだから!」


「ちょっとレイアさん、いきなり彰さんを引っ張らないでください!」


 繋いだ右手を引っ張るレイアと、俺の左手越しにそれを引き止める依織。


 俺は、右にレイア、左に依織という、両手に花と言うべき状態になっている、が――、


「痛いから! お前ら、俺の身体はそんなに伸びるようには出来てないんだよ……!」


 傍から見たら美少女に引かれるうらやましい光景でも、人間離れした力で引っ張られている当事者としては溜まったものじゃない。なんか前にも、同じことがあった気がする……。


「あっ、ごめん」


「すいません、つい」


 二人が手を離してくれたおかげで、どうにか腕が外れる事態は回避できた。


「流石に加減はしてくれよ? んじゃ、今度は焦らず行くとしようぜ?」


 溜息をつきながら、二人の手を改めて握る。


 こうして彼女達と出かけているのは、昨日のレイアの思い付きが原因だ。

レイアが名案として話したのは『理由が分からなくても、楽しませれば気分は戻る!』なんて暴論だった。だが他に試す案もなかった為、丁度今日は土曜ということもあり、三人で街に遊びに来たというわけだ。


「……これ単にこいつが遊びたかっただけじゃないのか?」


「ん、なんか言った、彰?」


「いや、なんでもない、こっちの話だ」


 はしゃぎ具合的に、一番楽しんでいるのは提案をしたレイアである。依織を元気付ける為というのは建前で、本当は彼女自身が遊びたかっただけとも思えてしまう。


「そういえば依織、お前はどこか行きたいところとかあるか?」


「えっと、私は……」


「もう、こういうときに遠慮なんてするものじゃないわよ。ほら、まずはあんたから選ばせてあげるから、どこがいいか決め―――」

 

 ――ぐぅぅぅうう!


「―――――ッ!?」


 言いかけたところで大きな音が鳴った。レイアの腹部から。


「ふふっ、まずはお昼にするのが一番かと。お腹が空いては、あまり動けませんからね」


「あぁ、そうだな。そういや、もう昼だしな。俺も結構腹へってきたところだ。それじゃあ、まずはどこかで飯にするか」


「あっ、そうです、折角ですからここは――」


 依織が面白そうに提案する。なにはともあれ、楽しんでくれているようでよかった。

しかし、そんなこの状況に納得できないやつが一人。


「ちょっ、ちょっと、待ちなさいよ……! さっきのは、その、えっと、あたしのじゃなくて、その……! そもそも、あんなの単なる生理現象で――!」


 顔を真っ赤にして抗議するレイアを引きつれて、俺達は依織が提案した店へと入る。


「にしても、わざわざこんなとこを選ばなくてもいいと思うんだがなぁ……」


 料理を前に、微妙な気分になる。俺たちがやって来たのは、前に来たときと同じハンバーガーチェーン。もっと色々、いい店はあると思うのだけれど。


けれど、そんな俺とは対照的に、同行者の二人は満足そうに自分の分を食べると共に、俺の口元にその手を差し出す。


「折角ですから、あの時と同じのがいいかと思いまして。はい、どうぞ」


「確かに、これはなかなか悪くないわよね。あっ、まだ熱いから気をつけなさいよ」


 レイアがハンバーガーを、そして依織がポテトを差し出すという、見覚えのあるこの状況。当然の如く、俺の両手は彼女達の手で塞がれている。


「あぁありがとな」


 そう礼を言って、差し出される食事をされるがままに口にしていく。


「気にしないでいいわよ。あっ依織、飲み物取ってあげて」


「了解です。確かに、食べてばかりではのどが渇いてしまいますものね」


 せめてもの救いは、前のように二人がいがみ合ったりはしないことだ。依織は勿論、レイアのほうも強引に口に運んでくるのではなく、丁度いい具合に食べさせてくれる。


「……まぁこうするのが一番か」


 彼女達の好意を無碍にして犬食いをするよりは、大人しく食べさせられる方がいいだろう。二人とも、何故か俺に食べさせるのを楽しんでいる節があるようだし。


 しかし、当然ながら美少女二人に甲斐甲斐しく世話をされて食事する俺には、店内中からやっかみの視線が集まり、やはり以前と同じく精神的に疲労するのだった。



 昼食後。俺達は街の中心部の服飾店に来ていた。ただし、前に行ったような高級そうな店ではなく、今回は若者向きのカジュアルな店である。


それだけならよかったのだが、大きな問題があった。それは――、


「彰さんなら、絶対この落ち着いた服が似合います……!」


「いいえ、彰にはこういう派手なやつの方が良いに決まってるわ!」


 ……ここが男性向けの店であり、俺が着せ替え人形にされているということだ。


 依織とレイアは先ほど食事の際に協力したのとは違い、競うように俺へ着せる服を選んでいる。それも、手を繋いでる為に必然的に俺の身体を間に挟んで。


「……何故、こんなことに?」


 きっかけは二人の服装だ。彼女達の今日の服装は、レイアは青のワンピースドレス、依織はチェックのスカートにブラウスとカーディガンと、以前買ったものを着てきていたのだ。


 そんな彼女達に対し、俺は着なれたシャツとジーンズという格好。街を歩く分には問題ないと思ったのだが、二人はそうは思ってくれなかったらしい。


 昼食の後に二人の服装を遅まきながら褒め、「まるで今日はデートみたいな感じだな」と言ったところで、依織とレイアが揃って何かを思いついたかのように、


「彰さんの服を買いに行きましょう!」

「彰の服を買いに行くわよ!」


 なんて言い出し、あえなく俺はこの店に連行されたというわけだ。

 本当に、どうしてこうなった……?


月曜零時の定期更新です。


三人でお出かけ、好感度UP後、です。


しかしまぁ人外だけど現代モノなせいで、街にいるときには下半身人外描写がほぼかけないのは悲しいところ。


それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。


次回は月曜までのどこかで不定期更新、またはブクマ90いければ御礼更新になると思います。


それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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