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俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
第四話 『可愛い幼女……だとしても、其れは空を亡くすモノ』
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039 『「けん」とは何か』

「ようやく我を見つけてくれたか。うむ、良い顔をしておるの」


「何を言ってやがる? それより、覚悟は出来てるんだろうな、空亡……!」


 余裕の表情で俺を迎える空亡に、更に苛立ちが募る。だが、それも少しの辛抱だ。

俺が今から、こいつを殺すのだから。


「おぉ怖い顔をしておるの。だがその敵意、憎しみは心地よい。そのようになってくれたのなら、やはりお主をここに招き正解だったの」


「ふん、せいぜい言ってるといい。俺はお前をさっさと仕留めて、全部終わらせてやる」


「我を仕留める? どうやって? くくくっ、お主に何が出来るというのだ?」


 今まさに、殺意を抱いた俺が目の前に来ているのに、空亡はまるで警戒していない。俺がこいつを殺す方法を、何一つ持っていないと思っているのだろう。


 ――だが、それは間違いだ。


「お前を殺すことだよ」


 言って、空亡を下から蹴り上げる。


「……は?」


 俺の一撃を受け、戸惑ったような言葉を漏らす空亡。その身体は下から蹴られたはずなのに、少しも上に動いてない。けれど、その頭の上には蹴りきった俺の脚がある。


「そ、れは、我の半身を、断った……」


 驚愕する空亡の頭から身体の先まで、その中心に一本の線ができていた。


「まさか、『けん』が剣じゃなく腱だったなんて予想外だったがな」


 奈々の件をきっかけに空亡への憎しみを自覚したとき、脚に力が湧き上がると共に分かったのだ。感覚的に、この脚に宿る力こそが一番の切り札、そしてかつて空亡を倒したものだと。


「そ……な、我、が……」


 言葉を最後までつむぎきることも無く身体に奔った線、俺の脚――神すら断つとするその腱の力が切り裂いたそこから、驚愕に目を開いたまま空亡の身体は縦に分かれた。


 可哀想だとか哀れだなどとは思わない。こいつはこうなるべきだったのだ。どれだけ俺がこいつのことを憎んだか、それを考えればこの結果は必然といえよう。


「そう、当然なんだ」


 これほどまでに俺を憎ませたのだから。


そう、憎い。俺はここにきて空亡のことがとても憎く思えてきたのだ。そのお陰で、身体に活力が漲り、自分に眠っていたこの脚の力に気づくことが出来たのだ。


それが正であれ負であれ、強い感情は人を動かす原動力になる。俺自身が変わるほどに空亡を憎んだ結果、力を得ることが出来た、そういうことだろう。


自分以外誰もいない闇の中、そう一人で考えて結論付ける。



『うむ、当然だの』



 だから、自分の呟きに返答があるなんて想像もしていなかった。


「えっ?」


 見るが、空亡は今も地面に二つに分かれて倒れたまま――だったのが、いきなり起き上がり笑みを浮かべる。


「「どうだ、我の演技もなかなかさまになっておったであろう?」」


 左右二つに分かれた身体が宙に浮かび、ステレオのようにそれぞれから同じ声が響く。まるで訳が分からない。出来の悪い悪夢のような光景が、目の前には広がっていた。


「なんで、お前……!?」


「「最初に言ったであろう、ここは我の中、との。なればそこで身体を壊されたところで――」」


 この場に充満していた闇が密度を増し左右それぞれの欠けた部分に取り付く。


「「――ほれ、このとおり、すぐに元通りになるのだ」」


 そう語る空亡は、それぞれが元通りの姿になっていた。全く同じ姿をした二人の空亡が笑みを浮かべて左右に浮かんでいる。


「もちろん、消すのも増やすのも自由自在であるぞ」


 右の空亡が左の空亡の肩を叩くと、まるで幻であったかのように左の空亡は闇に溶け込み消え去った。


「一体、なにが……? 俺は確かにお前を憎しみの込めたこの脚で……」


「そもそもそれが間違いなのだ。そのお主が抱いた憎いなどという感情、それは我が与えたものなのだからの。我の中へと招いたうえに、わざわざこの世への憎しみを強く抱く今際のものの記憶を植え付け、更に仕上げであの娘の記憶を見せる。そうして我に恨みを抱くように誘導されただけであるのだよ、お主の思いなどというものはな」


「ど、どうしてそんなことを? そのせいで、俺は力を手に入れたんだぞ……!? なんで自分を危険にするような真似をなんで……!」


 俺がこの脚の力を得たのは、経緯はどうあれ空亡への憎しみを抱いたからだ。かつて自分を倒した力を、どうしてわざわざ俺に得させようとしたのか。


「――なに、それは、今から分かる」


 そう空亡が声をあげると、俺の身体は地面に仰向けに倒されていた。


「なっ!?」


それを行ったのは倒れこんだ地面そのもの。まるで生き物のように触手を蠢かせた黒い地面が俺の身体を引き倒したのだ。更に、その地面は俺の身体に纏わりついて動けなくしてくる。


「それでは、早速始めるとしようかの」


「何をする気だ……!?」


 そう叫ぶ俺の上に空亡は身体を降ろして乗りかかる。まるで、またがるようにして。


「くくくっ、なにそんなに恐れることは無いぞ。恐ろしいことも、痛いことも何も無い、寧ろ、気持ち良くしてやるだけであるからの」


 気持ちよく……?

 何のことかと考えようとすると、腰辺りに乗っていた空亡が俺のズボンに手をかける。


「まさか……!?」


「うむ、そのとおり、今からお主には我と契ってもらうぞ。我が半身を抜き取る為にの。その為にわざわざお主に憎しみを抱かせ、その脚の力を起こさせて共に封じられていた我が半身を活性化させたのだからのう。先のときとは違い、これならば手間取ることもあるまいからな」


「じゃあ、お前は最初からそのつもりで俺をここに……!?」


「ようやく気が付いたか。言ったであろう、当然であると。力に目覚めたお主が我を倒そうとすることまで含め、全て我の決めた筋書き通りなのだからの。なに、安心するがいい、これはお主を殺めずに半身を取り出すための手段であるから命など奪わぬ。お主はただ、悦楽を味わっておればいい、それですぐに終わる。その後も我の愛玩品として飼ってやるゆえにな」


 楽しそうに笑う空亡は、ついに俺のズボンを降ろすと自らも服を脱ぎ捨て、更に本来は存在していなかった下半身を、左右の身体を戻したときと同じように闇を固めて生み出す。その幼い見た目に相応しい、幼女特有の柔らかそうな足をはじめとした下半身を。当然、今から行為に及ぼうとする彼女の全身は、布一つ纏わぬ生まれたままの姿である。


闇の中に、その幼く白い裸体が映える。舌なめずりをするかのように一呼吸置くと、空亡は俺に残された最後の砦、即ち下着へと手を伸ばす。


モンスター文庫大賞のタグつけました。


ということでの不定期更新。

いや、だって『モンスター』文庫ならモン娘スキーとしては応募しないわけにいかないですよ……!


次は明日の夜に更新予定です。

次でようやく第四話終了です。


それでは読んでいただきありがとうございました。

次回もどうかよろしくお願いいたします。

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