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俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
第四話 『可愛い幼女……だとしても、其れは空を亡くすモノ』
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034 『一人で無理でも三人ならば』

「まったく、いくらなんでも軽率すぎます、彰さん……!」


「えぇ流石にこれはこの蜘蛛と同意見よ! あたし達が来なかったら、どうなってたか分かってるの……!」


「あー、その、すまん、つい焦りすぎて……」


 怒る二人、窮地を救ってくれた依織とレイアに平謝りする俺。

 奈々が心配で一人先走ってしまったが、二人が言うようにもしあそこで彼女たちの助けが無かったなら、俺はあえなく空亡に捕らえられていただろう。


「さっきは助かった、二人ともありがとな。それにしても、俺を引っ張ってくれたのは依織の糸なんだろうが、あの炎はなんなんだ? なにもない所がいきなり燃え上がるなんて」


 助かったのだ、と思い一息ついたところで疑問が浮かぶ。

 見えない何かに引っ張られたのは、依織が受け止めてくれたことから彼女の糸と分かったが、いきなりあがった炎は全く見当がつかない。


「ふふん、あれはあたしの魔術よ。感謝しなさい、本来は人間なんかには見せない高貴な魔族の嗜みを、このあたしがあんたの為に使ってやったんだから」


 そう得意げに語るレイア。居丈高な物言いだが、実際彼女のおかげで助かったのだから文句はない。というより、久しぶりに聞くせいで彼女のこの自慢が懐かしくて嬉しくなる。


 が、そう思ったのは俺だけだった。この場にいるもう一人、依織はレイアの言葉が気に入らなかったらしい。


「嗜みというには、慎みが足りない気もしますね。あのような炎の何処に高貴さなどあるのでしょうか? まぁ私が彰さんを助ける目晦まし程度には役に立ちましたが」


「目晦まし程度ですって! あんた、あたしがいなかったら彰がどうなってたか分かってんの? ほら、彰もこいつにあたしにどれだけ感謝してるかハッキリ言いなさい」


「そちらこそ、こうして彰さんをここまでお連れして助けたのが誰か、よく考えてから口を開いたらどうですか? 勿論、彰さんも分かってくれていますよね?」


 言い争いながら、矛先が俺のほうに回ってきた。しかし、俺はどちらに賛同も出来ない。

 レイアのあの炎は獣を食い止め、襲われる寸前だったところを助けてくれた。断じて、ただの目晦ましなんて思ってないし、とても感謝している。


 そして、依織の糸のお陰で俺はこうして空亡から逃れ、五体満足な姿で生き延びることが出来たのだ。彼女の助けがなかったら、あそこから逃げるのは無理だっただろう。


「さっきも言ったかもしれないが、俺が助かったのは二人のお陰だ。どちらが欠けても、俺はここにいなかったと思う。だから、二人共に同じぐらい感謝してる。この答えじゃ駄目か?」


 これが俺の正直な気持ちだ。どちらのほうにより助けられて感謝してる、というのではなく、彼女達二人共に同じくらい強く感謝している。


「はぁ、あんたに聞いたあたしが馬鹿だったわ。けど、それもそうね。考えてみれば終わったことで張り合うより、これからのことでもっと分からせればいいんだし」


「そうですね。それにどちらが、なんて些細なことです。彰さんが無事だった、それだけで充分ですから。今は言い争うより、あなたが言うようにこれからどうするかを考えるべきですね」


 どっちつかずと怒られても仕方ない答えだったので、二人があっさりと受け入れてくれてほっとする。依織はともかく、レイアは納得してくれるか少し不安だったので良かった。


 そう、今は俺達で言い争ってるような場合じゃないのだから。


「それじゃあ、これからのことだが、まず一つ聞きたいことがある。こうやって助けてもらった俺が言うのもなんだが、俺達が今ここにいるのは空亡にはバレてないって考えていいのか?」


「はい、そこは大丈夫だと思います。一応糸で隠形の式をこの辺りに張っていますし、彰さんをお連れするときも炎に紛らせたり、他の位置の木々を糸で揺らせたりもしていましたから」


「けど、探そうと思ったらすぐに見つけられるんじゃない? ちょっと見たけど、あの空亡って娘の魔力、化け物かって思うぐらいに相当強いわ。あんなのが本気で探したら、狭いこの敷地なんてあっという間に更地にして見つけてくるわよ」


「それは……」


 レイアの指摘に依織が言葉に詰まる。

確かにもし見つかっていなかったとしても、手当たり次第に探しされれば簡単に見つかってしまうだろう。そして、空亡にはそれを行う実力は確実にあるし、躊躇う必要も無い。


隠れるなんて無駄、つまりは手詰まり。そんな風に思いかけたとき、声が響いた。


『どこかに隠れておる霜神の末裔達よ、先ほどの動き見事であった。気を抜いておったとはいえ、我がこうも完全に見失うとはの。全くもって、してやられた気分であるぞ』


 先ほどまで戦っていた空亡の声が、頭に直接響くようにして聞こえてくる。

 けれど、その声はその内容とは裏腹に、悔しそうな雰囲気は無い。寧ろ、面白がっているような、喜悦が滲んでいる気がする。


『そこで我をこうも出し抜いたお主らに褒美をやろうと思う』


「褒美?」


 なんでそうなるんだ? そもそも、一体何をくれるというのか。

そう思いながらも、俺たちは空亡の声に耳を傾ける。


『褒美としてお主らに、時を与える。ここらを全て潰せばお主らを見つけるのはたやすいが、それではつまらぬからの。今からしばらく我はここの場を動かぬことを約束しよう。そのうちに我への策などを考えるなりするがよい。勿論、逃げるのも構わぬぞ』


「完全に、舐められてるわね……」


 不愉快そうにレイアが漏らす。

気位の高い彼女が、こんな風に下に見られて怒るのは当然だ。しかし、そのまま激昂して動かれるわけにもいかない。


「気持ちは分かるが抑えてくれ。ムカつきはするが、おかげで作戦が練れるんだからな。あいつの望みどおりに策を練って、後で倍返しにしてやろうぜ?」


 この空亡の言葉は俺達にとって渡りに船、何よりもありがたいものだ。俺達をいつでも見つけられる空亡が、わざわざ動かないことを明言してくれたのだから。


「はい、気持ち的にはどうあれ、落ち着いて話せるのは大きいです。それにあそこを動かないということは、こちらから仕掛けることもやりやすいということですから」


「分かってはいるわよ、あたしだってそのぐらい。けど、気に入らないわ。あたしを甘く見たこと、絶対後悔させてやるんだから……!」


「えぇ彰さんに手を出したこと、しっかりと償ってもらいましょう!」


 やる気十分な二人が頼もしく思える。俺一人では無理だったが、彼女達となら空亡を倒すことも出来るかもしれない。


「それじゃあ、これからどうするか考えるか」


勿論、逃げるためではなく、空亡と戦うために。


月曜以外の不定期更新。

まぁ不定期更新と言っておきながら、大体木曜か水曜あたりに更新してる気もしますが気にしない方向で……。

寧ろ、お気に入り登録10件ごとの御礼更新の方がよっぽど不定期という。


しかし、読んでくれている人がいるというのはそれだけでありがたい限りです。


今回も読んでいただきありがとうございました。

次回は月曜例示の定期更新予定です。

その前に御礼更新はいるかもですが。


それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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