150 『来訪者と誤解と釈明』
「はぁ、まさかこのお家からジェーンさんみたいな存在が生まれるなんて」
「あー、そういえばママが言ってたわね、魔族なってるって。けど、こんな風に化身なんて出すほどの力は無かったと思うんだけど……」
「そこはほら、空亡が」
「「あぁ……」」
理屈が通らなかったり、理不尽なことは大体空亡のせい。それで説明がついてしまうくらいには万能なのである。ただ、それ以上に性質が悪いからできれば頼りたくないわけだが。
――ピーン、ポーン。
説明を終えて、居間で一息ついたところでチャイムが響く。
「一体誰だ? とりあえず、俺が出るからお前らは大人しくしとけよ」
人外比率の高すぎるこの現状、対応は俺になるのは当然である。
「はいはい、どちらさま――って、お前は……」
玄関を開けた先。見知った、けれどまるで予想外な相手が立っていた。
「ふん、やっと帰ってきたのか! 何か魔力のざわつきが在ったからきてみれば、本当に、お前は僕をどれだけ待たせたと思っているんだ……!」
「いや、いきなりなんでそんな喧嘩腰なんだよ、白蛇……」
そう、そこには白蛇がいた。なんだかんだあって一緒に試練を乗り越えた相手だ。色々思うところもありはするが、それでも無事だったというのは良かったと思える。
……まぁ今の今まで完全に忘れていたわけだけれども。
「決まっているだろ、それは、その……」
「いや、決まっているって言われても、分からんぞ?」
正直なところ、こいつがうちに来た理由なんて全く想像がつかない。
「そうだ、報告だ、報告にきたんだ! あの後僕は無事頭首として認められたんだ。それには一応、君の功労もあることは認めざるおえないと、な」
「あー、そりゃよかった。まぁ一応付き合った甲斐はあったってことか」
「あぁ、そうだ。それで、その……お前が、望んだ……」
「ん? なんだ……?」
ごにょごにょと尻すぼみに小声になったせいで聞き取れない。
一体何をやりたいのか? 流石にもうあんな面倒なことに巻き込まれるのは勘弁して欲しい。ほんの数時間前まで、死んでたらしいのだから。
「あ、白蛇殿、今日もいらっしゃったんですね。遂に主さまが帰られたのです……!」
「あぁそうだな、霜。全く、こいつは本当に心配ばかりかけさせて……」
様子を見に来たらしい霜と話しだす白蛇。しかも、何故か親しげな感じである。二人に接点なんてなかったと思うんだが。
「よしっ、おい、彰……!」
「あっ、お前、何を!?」
いきなり白蛇に手を取られる。そして、足払いをかけられてしまう。けれど、そのまま床に叩きつけられる、ということはなかった。
「……なんだ、この状況?」
今、俺の身体は床に仰向けになっている。だが、その頭は床には無い。しかも、本来硬いはずの床はいつの間にか柔らかなマットが敷かれていた。
「ふん、お前が言ったんだろう、礼の代わりに膝枕をしろ、と。これはそう、だkら、その報酬だ。口約束とはいえ、約束は約束、それを守らないのは僕としても気分が悪いからな。だから、それ以外に他意なんてないぞ」
「なんて言ってますけど、あれから今日まで毎日通ってくれてたのですよ、白蛇殿は。そしてうちと一緒に、それはそれは主さまのことを心配して――」
「他意はないんだからな! 霜も、余計なことは言わなくていい……!」
「ふふっ、そういうことにしておきます。ちなみに、床に直接寝るのはいささか辛そうなので、マットの方を出させていただきました。それではうちは戻りますので、お二人とも、ごゆっくり」
そう言って、霜は満足したように床の中に引っ込んでいく。
「えーと、礼、なんだよな?」
「あぁ、そうだ。僕が当主になれたのは、君のお陰であるのは事実だからな。変態の君には、こういうのが一番いいんだろう。ふっ、まぁこの僕の脚が魅力的なのは当然だから、仕方ないんだろうがな」
「う、うぅむ、なんというか……」
なんて全然気にしてない風に白蛇は言うが、その顔は赤くなっている。
それにしても、なかなか予想外な展開だ。が、折角の機会なのだし、彼女の言うとおりその脚は中々に魅力的だ。依織やレイアのものとはまた別の趣のある、柔らかさの素敵な太股だ。
――今はただ、それを堪能させてもらおう。
そう思い、瞳をつぶって心地よさに身を任せていると。
「あっ、あんた達、なにやってんのよ!?」
「ちょっと、これは予想外です!? まさか、男性の方の膝枕であんなに心地良さそうに!?」
遅くなった俺の様子を見に来た二人への釈明は、先程の霜のときよりも更に長い時間がかかるのだった。
なんとか年内に更新。
ですが終われませんでした。orz
ちょっと予想外に忙しい出来事が重なってしまい。。。。
もうちょっとだけつづきます。
それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。
次回も来週中には更新いたしますので、どうか宜しくお願いいたします。